賭け麻雀疑惑も飛び出した検事長問題、「法改正」見送りの大誤算

 

秋になっても世論は許さない

【読売】は1面の定番コラム「編集手帳」を取り上げる。

uttiiの眼

今朝の《読売》は、相変わらずこの問題を「国家公務員の定年を65才に引き上げる国家公務員法改正案に合わせて、検察官の定年を63才から65才に引き上げる内容」などとし、今国会での成立断念についても「改正案に野党が徹底抗戦することで、第2次補正予算案の審議日程に影響するのを回避する狙い」などと、飽くまで「政局的な判断」とみなすことで、検察庁法改正案が持つ真の意味を隠そうとしているように見える。ただ、編集手帳だけは少し様子が違っていて、記者らしい気骨を見せているところがあるので、ここで取り上げることにする。

手帳子は、ロッキード事件などの捜査を指揮したことで有名な吉永祐介さん(故人)が検事総長に就任した時の記者会見の思い出を語っている。

意外なことに、吉永氏は、組織の説明から始め、「検事は準司法官です」と言ったらしい。行政の一部でありながら、司法に準ずる権限を持つという微妙な立ち位置であり、「政府からの独立性」を国民に理解してもらいたかったのだろうと手帳子は推測している。当時は、ゼネコン汚職の捜査の中で取調中に検事が暴行事件を起こし、「検察権力への国民の信頼が揺らいでいた」という。

手帳子は、検察の独立性が揺らぐのは、ゼネコン汚職の取り調べで検事が暴力を振るったときような、「暴走」が起きた場合だと思っていたという。不祥事をきっかけに、政治が検察に介入を目論むというケースだ。ところが今回、そのような「必然」が見当たらないことに、「疑問を禁じ得ない」という。

今回の法案を「政府と準司法官の関係を変えかねない検察庁法改正案」と性格付ける手帳子は、「幹部の定年を内閣が延長できるとした特例規定に、政治家の顔色をうかがうようになっては困ると世論の反発は強い」とし、それは「涼しい季節が来ても、世論は冷えてはいまい」とまとめている。

よく見れば、手帳子は自身の見解を明確には口にしていない。「世論」は許してくれないだろうという言っているだけだから、この言い方は、狡いとも言える。それでも《読売》の1面にこのような記事が載るのは珍しい。

庶民のシンプルな正義感の勝利

【毎日】からも、1面の定番コラム「余録」を取り上げる。《読売》の手帳子は吉永祐介検事総長の話だったが、余録子はその4代ほど前の検事総長だった伊藤栄樹氏(故人)についての逸話。

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「その昔、司法研修所で昼食後の眠たくなる時間なのに居眠りする修習生がいないので評判の講演があった」という書き出し。それがミスター検察こと、伊藤栄樹・元検事総長の講演だったという。「巨悪を眠らせない」のフレーズで有名な伊藤さん、のっけから「悪いヤツほどよく眠る」と切り出されては、修習生も眠るわけにはいかなかったという、ここは「笑い話」。

その伊藤栄樹さんが、悪の大小の順番をつける方法はただ1つで、「検事がいつも庶民の心を失わないことだ」と言っていたらしい。そのことが、戦後、検察の公正さに対する国民の信頼をつなぎとめてきたのだとする。今、コロナ禍の中で暮らしと生業を脅かされている庶民が、内閣が検察官の定年を特例延長できるようにする検察庁法改正案という「見当違い」を許すはずもないと。

最後に「過去の疑獄では検察の士気の源泉となってきた庶民のシンプルな正義が、検察の独立と中立を救った一幕である」と結んでいる。

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