香港を裏で操る米国が中国「香港国家安全法」に反対する納得の訳

 

香港国家安全法に反対する米英豪加

■共同声明の内容

 

アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダは、国家安全法を香港の司法制度を介さずに中国政府が直接導入することで「香港人の自由を狭め」、「香港の自治や、香港をこれほどまでに繁栄させた仕組みを劇的に損なう」ことになると主張している。

(同上)

なぜ、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダは、「香港国家安全法」に反対するのでしょうか?

香港はかつて、150年以上にわたってイギリスの植民地だった。

 

イギリスと中国は1984年に、「一国二制度」の下に香港が1997年に中国に返還されることで合意した。香港は中国の一部になるものの、返還から50年は「外交と国防問題以外では高い自治を維持する」ことになった。

 

国家安全法の導入は、この時に両国が署名した中英連合声明で定められた中国の国際的義務に抵触するほか、「一国二制度」の原則を損ない、「香港で政治犯罪で起訴される可能性を高める」ことになると、4カ国は声明に書いた。

 

さらに、中国大陸との関係をめぐり抗議デモや衝突が繰り返し発生している香港で、国家安全法によって分断がさらに深まることを「深く懸念している」としている。

 

「香港の人々が約束された権利と自由を享受できるようにし、香港社会全体からの信頼を回復することが、昨年1年間にわたって続いた緊張や社会不安を改善する唯一の方法だろう」

 

4カ国は中国に対し、香港政府と香港の人々と連携して「お互いが受け入れられる和解点」をみつけるよう求めている。

「国際的義務に抵触する」
「一国二制度の原則を損ない」
「分断がさらに深まることを深く懸念している」

など、美しい言葉が並んでいます。しかし、本音をいえば、「香港国家安全法」によって、米英が、「香港の反中国勢力を支援するのが難しくなるから反対」ということでしょう。

「香港戦争」の位置づけ

RPE読者の皆さんは、2015年3月のAIIB事件から「米中覇権戦争」の前哨戦がはじまったことを知っています。そして、2018年7月から、「米中覇権戦争」がはじまったことも知っています。ですが、米中共に「核超大国」。それで、大規模な戦闘は起こりにくい。戦争は、「別の形態」で進行中です。

  • 情報戦 = 敵国を悪魔化する

中国は、ウイグル人100万人を強制収容している。中国は、パンチェン・ラマを解放しろ!中国のせいで、新型コロナウイルスのパンデミックが起こった。

  • 外交戦 = 敵国を国際的に孤立させる
  • 経済戦 = 敵国経済を潰す

米中関税引き上げ戦争。ファーウェイバッシング。

  • 代理戦争

アメリカは、台湾への武器売却を激増させている。そして、アメリカにとって香港問題は、「代理戦争」なのです。米ソ冷戦の時代、

  • 朝鮮戦争
  • キューバ危機
  • ベトナム戦争
  • アフガン戦争

などは、すべて米ソ対立の延長でした。今起こっている様々なできごとは、ほとんどすべて「米中覇権戦争の結果として」起こっているのです。私たちは、「戦争が起こっていること」をはっきり自覚しておく必要があります。そうでないと、「戦争中なのに、我が国(アメリカ)の同盟国日本は、敵国のトップ習近平を国賓として招き、我が国(アメリカ)を裏切った!」となります。

日本は、アメリカの同盟国としての義務を果たさなければなりません。少なくとも【 裏切り者 】にはならないように。これ、道義的な問題だけではありません。敗北必至の中国につけば、日本も【また敗戦国】になるということです。

image by: Isaac C.P. Wong / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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