死因に関するショッキングなデータ
暴動を起こしている集団も、暴力を振るう警察も、どちらも社会から許されるべきではないし、どちらの肩を持つ気も全くありません。その立場を明確にした上で、僕自身もアメリカの警察の暴力には辟易しており、平和的デモを起こす人たちの気持ちは良くわかります。
渡米してから20年、アメリカの警察が殺人をするニュースを頻繁に目にします。特に黒人の若者がよく殺されます。PNAS(米国科学アカデミー紀要)に昨年発表された研究によれば、アメリカの25~29歳の死因に関してショッキングなデータを載せています。警察による暴力は、なんと死因の6位です。
● Risk of being killed by police use of force in the United States by age, race–ethnicity, and sex | PNAS
「25~29歳の死因ランキング」 1位:交通事故
2位:自殺
3位:他殺
4位:心臓病
5位:がん
6位:警察による暴力
2009年の元旦にもサンフランシスコ地下鉄構内でオスカー・グラント(22歳の黒人男性)が警官に押さえつけられて射殺された事件があり、当時すごくショックを受けたのを今も覚えています。オスカーは構内でケンカをしていると通報されたのが発端でした。1人の警官がオスカーの首に膝を当てて押さえつけ、もうひとりの警官が拳銃で押さえつけられたオスカーを射殺しました。
日本とアメリカでは警察官の権限にかなりの差があります。日本では警察がその場で致命傷を与えるような銃撃を被疑者に与えることはまずありませんが、アメリカでは普通にそういった事件が起きます。確かに銃社会なので、警察側も「やられる前にやる」なのかもしれませんが、その与えられた権力を濫用する警官があまりに多いので社会問題になっています。特に黒人の若者はターゲットにされやすく、人種差別を生んでいます。
今回のジョージ・フロイドの件に立ち戻ると、ジョージが偽札を使ったのかどうかはまだ疑いの段階でした。そして仮に偽札だったとしても、本人はそれを分かって使っていたのかどうかも未知の段階です。もし仮に悪意があって偽札を使ってコンビニで買い物をしたとしたら、犯罪には違いなく許されることではありませんが、死刑になるような話ではありません。
しかし、この警官1人の判断で、ジョージの命がものの数分で絶たれたことは、法治国家にあってはならないことです。一方のジョージは武器を持ってデレクの命を脅かしたわけではないのですから。ジョージは元々スポーツマンで、ヒップホップのDJや警備員の仕事をしていたそうです。6歳と22歳と2人の娘の父親で、現在コロナの影響で失職中だったそうです。知人たちの話では、寛容な男性だったそうです。
皆さんはどう思いますか?警察はやりすぎだと思いますか?それとも犯罪の疑いをかけられたんだから仕方ないと思いますか?
image by: Robert V Schwemmer / Shutterstock.com