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コロナ拡大も重なり深刻。マンションの管理人不足は解消するのか

人手不足の上に新型コロナウイルス感染症の流行が重なり、マンションの管理人不足が問題となっています。エッセンシャルワーカーである管理人さん無くして集合住宅の生活が立ち行かないのは明白ですが、人材確保のために打てる手はないのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、行政が関与する新しい取り組みを提案しています。

新たな時代の新しい発想の管理員さん確保の方策は…

こんにちは!廣田信子です。

コロナ禍が収まらす、管理員さん不足が深刻です。特に都心部の小規模マンションで、ゴミ出しのある日を中心に、午前中の3時間ほど週3、4日勤務し、ゴミ出しと日常清掃を中心に業務を行うというような勤務形態の管理員さんが見つかりません。

もともと、ここ2、3年、人の確保ができずに管理会社は苦労していましたが、コロナ禍でより厳しい状況になっています。人手不足が深刻だった状況から一転、コロナ禍で失業者が増える状況になっても、一向に求人状況が改善する気配はありません。

この勤務形態に人の応募が少ないのはある意味当然です。この勤務形態だと、勤務時間が少ないので、収入も多くありません。ところが、ゴミ出しという外せない役割を一人で担うので、出勤の責任も重いのです。

しかも、コロナ禍の今、ゴミ出しは、安全確保に注意が必要な神経を使う仕事でもあり、心理的な負担もあります。重症化が心配される高齢の方にとっては、避けたい仕事です。

都心部のマンションでは、ご近所で人を探すのが難しく、時間を掛けて電車通勤してもらうことにもなります。コロナ禍で、管理会社がギブアップで、居住者である理事の方が、ゴミ出し対応をしたケースもありました。

緊急事態宣言が解除され、社会が動き出し、少しは状況が改善されるかと思いきや、また、感染拡大が止まらす、新たに人が確保できないどころか、もう限界だと、やめる人も増えてきます。

そこで出てくるのが、マンション居住者の誰かに、管理員さんの仕事を、業務委託契約を結んでやって頂くことはできないか…という話です。居住者に、清掃員、管理員として働いて頂くことが可能であれば、それに越したことがないように思います。

この発想は、前々から、人の確保に苦労している管理会社から出ていましたが、自分のマンションでお金をもらって働くということには、抵抗があってなかなか実現していません。

私の周りにも、定年退職後の仕事として、管理員をされている方がけっこういますが、やはり、自分が暮らすマンションでの住民との関係が、フラットなご近所付き合いか仕事を受けて金銭を受け取る関係かうまく使い分けできないから、自分のマンションでは絶対にやらないと言います。自分のマンションで、管理員さんの確保に苦労していても、あえて、少し離れたところで管理員の仕事をしているのです。

コロナ禍で、この心理的な壁が、取り払われるチャンスかもしれません。まず、社会を支えるエッセンシャルワーカーの重要性に、人々の意識が向くようになりました。管理員さん、清掃員さんのおかげで、日々のマンション生活が維持されていることを再認識した方も多かったと思います。そして、人の確保ができなくなったら、自分たちでやるしかないということも、コロナ禍で思い知らされました。

同時に、この仕事を、緊急事態とはいえ、たまたま理事だった人に、何の見返りも保証もなくやらせることはおかしい。もし、住民の中に、引き受けてくれる方がいたら、感謝して有償でお願いしたい…という住民側の意識も生まれています。そして、自分のマンションが困っている状況なら、その役割を引き受けてもいい…と思っている方も潜在的にいるはずです。

ただ、業務委託契約を結んで、保険対応もして、管理組合から住民に直接委託するのは、なかなかハードルが高いことだと思います。管理員の仕事も、清掃の仕事も、素人がだれでもできるほど簡単ではありません。それなりの訓練が必要です。

コロナ禍の中での感染防止の徹底も必要です。個人情報の取り扱い、鍵の管理等のルールを学ぶことも必要です。本人が、業務中にケガをしたり、万一死亡された場合の保険も、管理組合のものを破損してしまったりして賠償責任を負う場合の保険も必要です。業務委託契約を結ぶには、法的な裏づけも、業務の内容を明確にすることも必要になります。

やはり、直接、管理組合が居住者と業務委託契約を結ぶということは、自主管理の経験が豊富な大規模なマンションでないと、なかなか難しいのではないかと感じます。

では、どうしたらいいのか…です。

私は、行政が関与して、地域の中で、きちんとしたプロブラムの元で管理員候補を育て、保険等もきちんとした上で、必要に応じてマンションに派遣する…という仕組みができないかと考えています。例えば、シルバー人材センターの中に、そういった仕組みを取り入れられないかと思うのです。

自分の地域の中で、役立ちながら、それなりの収入を確保したいという高齢者のニーズにこたえることにもなります。地域の中で、管理員候補を育てることは、人を確保できないマンションを直接助けるだけでなく、マンションの適正管理にも、住民福祉の向上にも寄与できると思うのです。

候補の方々には、自治体のマンション管理の施策や高齢者対応等の福祉施策も学んでもらい(もともと、自分も住民なので、施策に詳しいでしょうし、地域での人のつながりもあります)、マンション住民と自治体をつなぐ役割を担ってもらうことも期待できます。

高齢者の活躍の場、就労支援と、マンション管理の適正化支援と、住民福祉の向上、各部局の融合施策として、検討できないかと思うのです。管理員という名称でなく、「マンションサポーター」というような、名称でもいいと思います。管理員としての訓練を受け、登録をしている人を自分が居住しているマンションも含め、近隣のマンションに必要に応じて派遣するのです。

管理組合としては、自分のマンション、自分が暮らす地域での仕事ですから、丁寧に対応してもらえることが期待できます。派遣される方としては、通勤時間もかからず、ジムに行くのと同じ感覚で、週何日か仕事ができ、それなりの収入もあれば、ご本人の健康のためにもなると思います。

管理組合や個人に、教育とか、契約だとか、保険とかの話はハードルが高いので、その部分を第三者機関が受け持つことで、仕組みとして回していけるのではないでしょうか。手をあげる人も、管理会社と契約するよりは、自分の暮らす自治体の組織の方が参加しやすいと思います。

コロナ禍の中でも、同じ地域、徒歩や自転車で動ける範囲に、管理員さんがいてくれれば安心です。業務を2人、3人でシェアすることも可能です。

1つのマンションの中で解決しようと思うと、たいへんですが、自治体単位まで広げると新たな時代のマンション管理の在り方としての可能性が見えてくるように思います。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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