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菅義偉は「安倍路線」の敵か味方か?次期総理に立ちはだかる4つの課題

安倍首相の辞任表明から4日、自民党総裁選の方式が決まったことを受け、 岸田政調会長、石破元幹事長が1日、正式に出馬を表明しました。その2人に圧倒的な差をつけ、次期総理の座はほぼ決定的としている菅官房長官は、安倍政権の路線をどこまで継承し、発展させることができるのでしょうか?メルマガ『j-fashion journal』著者でファッションビジネルコンサルタントの坂口昌章さんは、今年度末頃には、世界の行方はある程度見通せると説明。その上で外交と内政面で進むべき道を提案しています。

1.米国につくか?中国につくか?

日本は、安全保障では米国と軍事同盟を結んでいます。米国がアメリカ第一主義を唱え、日本に防衛上の自立を迫っています。米国の核の傘の下に隠れているだけでは済まなくなりました。

経済面では、日本は中国との互恵関係を守ってきました。尖閣の問題もありますが、日本は日中間に領土問題は存在しないとしています。本来ならば、今年は習近平首席が国賓として来日する年でもありました。

その後、東京オリンピックで世界の人々を迎えれば、米国、中国に加えてロシアとも良好な関係を築いていたと思います。少なくとも、安倍総理はそういう外交ビジョンを考えていたでしょう。

しかし、米国と中国の対立が激化しました。最初に貿易問題が表面化し、関税の掛け合いが始まりました。

米国は、5Gにおけるファーウェイ社等を制裁対象にしました。ファーウェイの通信機器にはバックドアがついており、全てのビッグデータが中国共産党に流れているとの主張です。同時に、中国は先端技術を米国から盗んでおり、そのスパイの拠点がヒューストンの中国領事館であるとして、閉鎖を命じました。

中国も報復措置として、成都の米国領事館を閉鎖しています。

また、中共政府は、香港国安法を施行し、平和的なデモ参加者を逮捕し、過去の活動を含めて国安法違反として香港の民主活動家らを次々と逮捕しました。

香港の人権弾圧だけでなく、ウイグルやチベット、モンゴル等でも中共政府が人権弾圧を行っており、その監視システム等を支えているファーウェイ社等も制裁対象となっています。

更に、南沙諸島埋め立て工事等に参加した企業も制裁対象となりました。今後、制裁対象に追加される中国企業は増えていくでしょう。

ICTを活用した監視、洗脳システムとして、TikTokやWeChat等のアプリ及びサービスを提供している企業も制裁の対象としました。

更に、米国は「クリーンネットワーク構想」により、インターネットでも完全に中国を遮断すると宣言しました。ここまで来ると、日本の米中バランス外交は不可能です。米国につくか、中国につくか、の二者択一を迫られています。

しかし、安倍総理は日本政府の明確な姿勢を示していません。香港国安法については反対し、自衛隊はアメリカ、インド、台湾の海軍と合同演習を行っていますが、それ以外は沈黙を守り、中共政府を刺激するような発言はありません。

2.外交での「問題の先送り」は成功するか?

今回の安倍総理辞任会見のタイミングは、米大統領選の前であることに意味があると思います。安倍総理から新総理に代わることで、米国、中国の両国に対して、リセットできます。

安倍総理は、トランプ大統領、プーチン大統領、習近平首席等の大物とのコミュニケーションが得意でした。しかし、新総理は外交の経験もなく、安倍総理と比べると「小者」の印象を与えるでしょう。そして、少し距離を置かれるかもしれません。

それにより、問題を先送りするという考えが政府にはあるかもしれません。通常ならば、問題の先送りは問題を大きくすることがありますが、今回の場合は先送りした方が賢明かもしれません。

おそらく、今年度末頃には、世界の行方はある程度見通せるのではないでしょうか。米国大統領選挙も終わりますし、対中制裁の行方、中国経済の行方も見えてくると思います。5G覇権問題も結果が出ているはずです。

日本もコロナ禍の経済への影響が表面化し、大変な状況になっているでしょう。オリンピックの結果も出ています。コロナのワクチン開発についても目処は立っていると思います。

ある程度の見通しがたった段階で、日本は新たな政策を発表するべきです。しかし、次期総理は一年間の任期ですので、選挙管理で終わると思います。本番は次の次の総理ということになります。

次の総理は時間稼ぎ、その次の総理選出の準備が主な業務となります。本当に大切なのは来年の秋からです。それまでに、コロナ禍が終息していることを願うしかありません。

3.政府通貨発行の仕組みをつくれるか?

安倍首相のデフレ脱却は失敗しました。その原因は、プライマリーバランス重視と金利だけで通貨流通量を調整しようとしたことです。金利を下げても、需要がなければ、企業は投資しません。

実は需要は多いのですが、企業の経済活動と直結する需要は少ないのです。そして、海外では国家が負担している事業を自己負担にしているケースも少なくありません。

例えば、介護問題です。現在の介護保険だけでは足りませんし、消費税は社会福祉に使うと言っていたのが、なし崩しになっています。

教育費も家計を苦しめています。世界には、国が教育費を全面的に負担するケースもあります。教育は国の事業であり、個人に負担させるべきではない、という考え方があってもいいと思います。

災害に対するインフラ整備も不十分です。バラマキといって、公共工事が批判されましたが、これも行き過ぎでした。

防衛費もGDP1%の枠を撤廃し、周囲の情勢を見ながら、柔軟に対応すべきでしょう。

これらの需要に対して、通貨供給量をコントロールするという発想が必要になります。そして、適度なインフレ率を保つ。

また、本気で格差是正を目指すならば、累進課税や貯蓄に対する課税も必要です。通貨の供給については、デジタル通貨を含め、政府発行通貨の検討が必要になります。

この問題を解決しないと、日本人は幸せになれません。

財務省任せではなく、政治の力と世論の力を最大限に活かすべきです。既存メディアが財務省寄りならば、ネット上のメディアを駆使する運動を起こしましょう。

これは、次の次の総理に期待したいと思います。

4.対立と浸透に対抗できるか?

米国は常に敵国を必要としています。まず、敵国を設定し、それを宣言し、法的根拠を整えてから、論理的に相手を追い詰める。

中国は、友好国の顔で近づき、目標とする国、企業、国際機関等に静かに浸透します。そして、企業を買収し、要人を買収し、最終的には経済で縛り上げていく。

この二つの大国に共通しているのは、最終的には国としてまとまって対抗するということです。

日本が、米中両国に対抗するには、やはり、国全体としての体制作りが必要です。浸透させないためのスパイ防止法制定とインテリジェンス機関の強化。これには、ファイブアイズへの加入が有効でしょう。

更に、対立に関しては、外交戦略と防衛戦略が重要をなります。

その上で、日本が優位を保てる独自技術、独自製品の開発と、それを支えるマーケティング戦略が必要です。

これらの方策は民間企業だけでは対応できません。国との密接な連携が必要になります。

競争に勝つことは、企業だけの課題ではありません。行政や政治家も他国との競争をしているという意識を持ち、どのように勝つのかという戦略が必要です。

国のリーダーには、以上のようなビジョンを明確に示し、各省庁が連携して、強く豊かな日本を実現していただきたいと思います。

締めの都々逸

「一人一人が 総理になって 国のビジョンを考える」

安倍総理、お疲れさまでした。でも、本音を言うと、もう少し頑張ってほしかった。でも、できない人が総理の椅子にしがみつくよりは、はるかに良い選択です。

この激動の行く末は誰にも分かりません。どうしようもないとも言えるし、とてつもないチャンスとも言えます。

一人一人が考え続ければ、少しずつでも先が見えてきます。それが将来を決定します。

image by : 菅 義偉Instagram

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