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菅・河野ならやれる。行政改革の断行に必要な内閣府への権力集中

安倍政権の継承を明言しつつも、縦割り行政を打破すべく矢継ぎ早にさまざまな指示を各方面に与え、存在感を示している菅総理。そんな新総理が進める「スガノミクス」は疲弊した日本経済を立て直すことは可能なのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、菅新政権の行改の進め方とスガノミクスを成功に導くためのカギを考察しています。

菅政権の行政改革の進め方。スガノミクスのポイント

菅首相の腕力は、強いようで、菅政権期待で株価もしっかりしている。デジタル庁を開設して、省庁横断のデジタル化を推進するというし、平井大臣もやる気満々であり、頼もしい。

武田総務大臣も携帯通信料の引き下げを推進するというが、どう進めるのかが、見物である。行政改革・規制緩和の河野大臣も面白い。

というように、この3本柱で当面、成果を出すようであるが、この3本柱は、突き詰めて考えると、日本の社会経済システムの大改革に繋がることになりそうである。

その他には、21年のオリンピックを開催する方向で、コロナ禍での開催を目指していくし、冬場を迎えてコロナ対策も必要である。

内政を短期に改革して、次の日本を目指してほしい。

一番の肝は、官庁組織の縦割りをどう改革するかでしょうね。それがないと、デジタル革命も起こせないし、規制緩和も行政改革もできない。

この官庁の縦割りを解決する方法は、中国共産党の支配体系の中心にある領導小組の組織であろうと見る。各問題を横串を通して、検討する組織であり、その領導小組の組長がその問題のトップである。

この事務局を内閣府において、各官庁からの委員と広い分野の有識者を集めて規制緩和の方向を検討する会議体(分科会)を作り、規制緩和か否かの結論を出す。その結論を実行するのが、各省庁ということになる。

分科会の結論を基に、各省庁は、各省庁主催の委員会で関係者の説得や専門家を集めて法律の修正を検討して実行をする。そして、その実行を監視するのも、この内閣府の事務局がすることである。

納得できる実行がないなら、官邸・内閣府は省庁人事も行う。強い権限がないと規制緩和はできない。

今、行っている内閣府の新型コロナ感染分科会と厚労省の新型コロナ感染専門家会議が、もっとも近いかもしれない。

その事務局のトップに内閣府の大臣、副大臣、政務官、補佐官などを割り当てる。各省庁に帰属する部分が大きい問題では、トップにその省の大臣でもいいかもしれないが、事務局は内閣府に置く。

人事体系も変更が必要であり、上級職の国家公務員は、必ず内閣府への複数回の出向を行い、国益を重視した官僚にすることが必要であり、上級職の人事権も内閣府が持つことにするべきである。

これで、官邸を中心とした行政体制が完成することになる。国益中心で首相の権限を拡大して、官僚の「省益あって国益なし」の体系と各省OBが行く団体の既得権益重視を打破して、国家の総合的な制度設計が、やっと可能になる。この仕組みを河野大臣は、作ることである。腕力が必要であり、菅首相と河野大臣ならできるかもしれない。

これで、小泉元首相が始めた日本の構造改革が完成することになる。そして、その結果の上でデジタル革命、デジタル庁も有効に機能できることになる。

ということで、菅政権は、安倍政権の延長と言うより、小泉政権の復活と見た方が良いかもしれない。

デジタル化推進のためには、各省庁のシステムとのインターフェースを確立して、中心に位置づけるマイナンバー・システムを作る必要がある。

事務局を内閣府に作り、会議体に各省庁のシスム担当者とSIerを参加させて作るしかない。これだけでも、非常に多岐にわたるはずだ。

その上、地方自治体のシステムとのインターフェースを標準化して、それに合わせて各自治体で作ってもらうことになる。このため、標準の自治体システムを複数社が手掛けているが、そのSIerにも参加いただくことである。

携帯通信料の引き下げは、1つの側面であり、この分野は産業の中心に位置付ける必要があり、そのための研究開発費や設備投資が必要である。この分野で出遅れると、デジタル分野全体での遅れにも繋がり、日本経済発展の芽がなくなる。

NTTドコモとNTTなどの株を50%以上国が持つことで国有化して、しかし、完全な国有化をすると弊害があるので、株を持つ量を50%以上80%未満にして、民営化の良いところは残すことが必要である。

その上で、税金を無税にする代わりに、研究開発をその分行い、製造メーカが、その研究成果で製品を作り、それを各社が導入することにする。

足りないなら、国家が資金援助もするが、研究開発項目には口も出すことである。日米先端技術共同研究も国家主導で出来る基盤ができる。

もう1つが、国家指導の下で、通信料の引き下げもNTTドコモがまず行い、それに合わせて、各社が行うことで通信料の引き下げを実現したらどうであろうか?

そうしないと、ソフトバンクやKDDIなどの民間企業では、利益水準をキープして、配当を維持したいという意識が働くので、値下げはしにくい。NTTドコモが料金を下げると、競争上、各社も下げるしかない。

勿論、国家指導の上でも、今後の設備投資をどう見るかも必要になるし、株主配当などの基準も必要であろう。日本社会での会社の標準モデルを作る必要がある。この検討にも内閣府に事務局である。

これは、日本の現状を是認した資本主義・統制経済の1つのモデルを作ることになる。新自由主義的な資本主義の問題点が欧米で出ているが、この従前の資本主義より良い資本主義ベースの社会経済システムを作ることにもなる。

しかし、中国のような統制経済から独裁的全体主義にすることも問題であり、この社会経済システムでは、首相の権限が強いので歯止め策も、今後、必要になるはずであるが、問題が出てから考えるしかない。

一部、安倍政権で法律を無視したような問題が出ていたが、問題の全体像がまだよくわからないし、首相の権限の分散をしない解決策も見えていない。

もう1つ、コロナ感染も冬場の流行期になる。その備えも十分行い、かつ経済活動も行うことが必要であり、観光地の平準化対策も必要であろうと見る。

そして、流行になり、感染拡大時の規制強化の基準も作った方が良い。それを見て、経営者が覚悟できる。大きく見て、対応策を考えてほしいものである。

米大統領選挙

11月3日の大統領選挙は、郵便投票もあり、結果が出るまでに多くの時間が必要になる。トランプ大統領は、スムーズな政権移行をしないとしている。

その理由が、ヒスパニック系のトランプ大統領支持が出てきたことで、接戦になる気配であり、共和党支持者は直接投票の確率が80%で、民主党支持者は60%が郵便投票になることで、11月3日時点では、トランプ大統領の方が優勢になる。

このため、郵便投票を無効にできれば、トランプ大統領の勝ちになる。しかし、その後の郵便投票分が合わさると、バイデン候補が勝ちになり、民主党も共和党も共に選挙結果を認めない。

郵便投票の無効を主張する共和党が提訴することになり、最高裁判所が判定を下すことになるが、共和党の提訴を通すためには、最高裁判所の判事を多数化することが必要である。

このため、後任最高裁判事に保守派バレット氏を指名する。これで、保守派6対リベラル3になる。

12月8日が、選挙結果の異議申し立ての締め切り日であるが、ここまでに最高裁判所の判決をする必要がある。

しかし、それを越えると、大統領は下院が決め、今回下院の半数の改選で、各州1票なので下院選挙で勝つであろう民主党議員数が26州で共和党を上回ればバイデンになり、逆に共和党が26州で上回ればトランプになるが、共和党の可能性は小さい。

副大統領は上院が決めるが、今回の選挙は上院議員選挙もあり、民主党が勝つとハリス氏であるが、共和党が勝つとペンス氏になるのかわからない。

両派の支持者同士が街頭でぶつかる可能性もあり、大変な状況も想定する必要がある。

しかし、1月20日までに決まらないと、下院議長であるペロシ氏が暫定大統領になる。

勿論、この間は、政策的なことがすべて決まらないことになる。もう1つが、選挙後、当分トランプ大統領がホワイトハウスでの移行作業をしないというので、ここでも問題が起きることになる。

大統領と上下院が民主党になると、最高裁判所の定数を15にして、6人のリベラル派判事を任命して、保守派7人対リベラル8人として、最高裁も民主党が占めることになる、と計画しているようである。

米国の人口動態からしても、白人優位な最後の選挙でもあり、ここで白人下層階級が負けると、以後は、共和党のトランプ的政権は二度とできないことになる。このため、トランプ大統領も白人下層階級の支援を受けて、頑張るしかないようである。

さあ、どうなりますか?

image by: Japanese Ministry of Defense / CC BY首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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