志村にもすごくウケない時代があった。一生懸命やっている姿って、お客さんは見たくないのだ。いかにも遊んで、楽しんでやってるふうに見せると、お客のほうも楽しくなる。そのことが、やって1年か2年のときに分かったという。
一生懸命やっているっていうのは腹の中に置いときゃいいだけで、お客には「いいなあ、おまえ、好きなことやってて」って思わせなきゃいけないんですよね。
よく“ベタ”な笑いって言われるんだけど、それは“腕”がないとできないんだよね。ここでこうなるって分かってて笑わせるんだから、飽きられないために手法を変えたりするんだけど、それもベタができていないとできない。舞台なら内容の6割が、こうなってこうなるという予測どおりに運んで笑えるっていうくらいがいい。6割方予測通りに進んで、あとの4割は予測がつかないってのが、お客さんが一番たのしめて、気分よく帰れるんだよ。
「本書は志村けんさんのインタビュー、対談などにおける発言を再構成したものです。尚、本書で掲載された記事について、著作権者等からの権利申し立てがあった時は、すべて弊社で責任をもって対応致しますので、当社編集部までお申し出下さい」と編集部が巻末に記す。ここまできちんと記す出版人も珍しいと思う。普通の寄せ集め再編集本ではない。じつによく仕上がった一冊である。
編集長 柴田忠男
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