全人類の生活に大転換をもたらしたと言っても過言ではない「AI」の登場。そんなAIは、当然ながらエンタメ業界にも激震をもたらしています。今回のメルマガ『富田隆のお気楽心理学』では心理学者の富田隆さんが、「AI動画」が創作環境に及ぼす影響を分かりやすく解説。その上で、AI全盛時代であっても決して失われることのない「実写」や「人間」ならではの価値について考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:「AI動画」が世界を席巻する
「AI動画」が世界を席巻する
「AI動画の迫力」
最近、AI(人工知能)を使って制作した映像がネットを席巻しています。仮に、これらを「AI動画」と呼んでおきましょう。
「AI動画」では、遠い過去の世界やSFなどの空想世界、「ベルエポック」と呼ばれた19世紀末から20世紀初頭にかけてのヨーロッパ世界、「ロカビリー」全盛の50年代アメリカ、といった、まさに「絵に描いたような世界」を、AIの力で、まるで現実のように創り出すことができるのです。
そうした世界を闊歩する人々もまた、理想的な美男美女だったり、かつての映画スターをさらに理想化したような「この世のものとも思えない」存在ばかりです。
もちろん、怪物や妖精、天使や悪魔、宇宙人、何でもかんでも、それが「現実」に生きているかのように描いて見せることもできます。
これは、いわゆる「アニメーション」を超えて、さらに細部まで緻密に描き込まれていて、あたかも実際に動画カメラで撮影したかのように、つまり「実写」のように見せる技法がAIにより可能になったということなのです。
しかも、そうした「AI動画」の技術が以前よりも「手軽」に使えるようになったわけで、これは、急速に「普及」すると考えて良いでしょう。
「ハリウッドの廃業」
ハリウッドの俳優さんの中には、こうした「AI動画」で自分たちが「失業」する可能性があると嘆いている人もいるのだそうです。
ハリウッドスターの法外なギャラを考えれば、機材やエンジニアに相当な額をつぎ込んだとしても、「AI動画」の方が安上がりに制作できるはずです。
豪華なセットも小道具も、現物を用意する必要が無ければ、かなりの費用削減になりますし、広大なスタジオも不要になります。ロケに出かける撮影チームの数も少なくてすむでしょう。
こうなると、俳優が失業するだけではなく、ハリウッドの仕組みそのものが要らなくなり、従来型の映画産業全体が過去の遺物になってしまいます。
権利関係さえ解決すれば、「クラーク・ゲーブルAI」や「マリリン・モンローAI」といった、今は亡き大スターを出演させて、新作を創ることも可能です。
この場合でも、生きた俳優さんを使うよりは出演料を抑えることができるでしょう。
さらに、どんな大スターであっても、危険なシーンで怪我をする心配はありませんから、スタントを雇う経費も、万一に備える保険料も節約できます。
アクションも自由自在ですから、華奢で優雅な「オードリー・ヘップバーンAI」が俊敏華麗なカンフー活劇を披露するなんてことも不可能ではありません。
もちろん、「18歳指定」の作品では、「アラン・ドロンAI」と「ブリジット・バルドーAI」を絡ませて、「あんなこと」や「こんなこと」をやらせることだって可能です。
そんなわけで、いよいよ、娯楽産業の都ハリウッドは廃業です。
この記事の著者・富田隆さんのメルマガ









