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「離婚したら元配偶者から年金が半分貰える」を決して信じてはいけない

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ことしはいわゆる「コロナ離婚」が増えたと言われています。紙切れ一枚で婚姻関係は終わるとはいえ、生活にさまざまな影響を及ぼします。年金もそのひとつ。離婚をする際、今まで支払ってきた年金額はどのように分割されるかご存知でしょうか。「元配偶者から半分貰える」という話を信じている人も多いようですが、実は間違いなのだとか。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、離婚の際の年金分割について詳しく解説しています。

元配偶者から半分の年金を分けてもらうという誤解と考え方のコツ(年金の離婚時分割)

来月の話なんですが11月4日の第162号での有料メルマガで、「離婚した時は女子は年金額が不利になる事が多い理由と、離婚時年金分割で年金を増やす」のテーマの事例を書くんですが、それに関連して今回は考え方を覚えてほしいと思います。

すごく簡潔にしてみます。

女子の年金は男子の貰う年金よりも明らかに低い事が多いです。老齢の年金に関しては。個人的な感覚としては、全体の70%くらいは男子の年金のほうが高いという感触です。女子より男子の年金が高い事が多いなんてちょっと許せない!と思われるかもしれませんが、年金計算自体に男女差はありません。

ただ、この差異は時代の違いや、雇用の面での女子の給与がどうしてもまだ男女差が生じてしまう事から、年金額に差が生じてしまいます。特に昭和時代が長かった人は、年金の男女差は顕著です。なので熟年離婚がよく行われる現代ですが、熟年離婚はそのまま女子の貧困に直結して危険な面を孕んでいます。

このような危険もあるので平成19年4月からの年金改正からは、離婚した時に年金が多いほうの配偶者から年金が低いほうの配偶者に年金を最大50%(半分)分けてもらう年金の離婚分割制度が誕生しました。その年金の離婚分割の考え方をザックリと復習します。

さっき年金が多いほうの配偶者から、低いほうの配偶者に最大で50%の年金を分割すると言いました。年金は最大で半分分けてもらいますけど、貰ってる年金の半分を単純に分けてもらうのではなくて分けるのは厚生年金のみです。

たとえば老齢基礎年金を60万円、老齢厚生年金を100万円もらえてる夫から年金を50%貰うっていうと80万円貰うっていう感覚になりますよね。もし、元妻が老齢基礎年金50万円+老齢厚生年金20万円を貰っていたなら、80万分けてもらうと150万円になるという感じでしょうか。まあ…年金の離婚分割をやると考えてる相談者様の多くはこの考え方で期待されてます(笑)。

でも分ける場合は夫の老齢厚生年金のみの100万円の部分だから、最高で50万円を分けてもらえるって事ですね。だから、妻には50万円の年金が増えるって事か…と考えてるかもしれませんがちょっと待った。

夫の老齢厚生年金が多いですが、夫100万円で妻が20万円の年金の状態で夫から半分の50万円を貰ったら、夫の年金は50万円になって、妻は70万円になってしまいますよね。年金が低かった方が、分割した事で金額が逆転してしまいましたよね。

果たしてそんな事が公平でしょうか?いくら何でもそういうアンフェアな事はしません。

年金を分割する場合はまず夫婦両者の老齢厚生年金を足します。そうすると夫は100万円+妻20万円=120万円になりますよね。この夫婦合わせた老齢厚生年金120万円を半分こして貰えるようにしましょうというのが、そもそもの年金分割の考え方です。

両者の年金を足したものの半分に両者で分けれるようにしましょうという事ですね。相手から年金を半分貰うっていうのはなんとなく語弊がある。

夫婦の老齢厚生年金の総額である120万円を半分(50%)になるように分割しましょうという事でやると、どうなるかというと夫は60万円で妻も60万円になりますよね。年金が低いほうが離婚でオトクになってしまうようにならないようにするのです。

そうすると最初に考えていた、夫の老齢厚生年金100万円の半分の50万円を貰うって思ってたけど、夫の年金は40万円減って60万円になり、夫から貰った40万円で妻の年金が60万円になった形になります。

夫の年金100万円の半分(50%)を貰えるって聞いてたのに、40万円(100万円のうちの40万円だから40%)しか貰ってないじゃないか!計算ミスなのではないか!o(`ω´ )oと訝しく思われる事もありますが、計算自体はこれで問題なく終了しています。

ちなみに最初に夫婦が決めるこの年金を50%にするようにするのが按分割合といい、ちゃんと両者で半分になるように導き出された40%というのが改定割合といいます。この辺の正式な計算と女子の年金が低額の事が多い時代背景の詳細は11月4日の有料メルマガで書きますが、この無料メルマガでは簡易に制度面を説明してみました。

両者の年金を平等に半分(50%)ずつにするためには、夫からは40%の年金を貰うと夫婦の年金は同じ金額になるという事ですね^^

おさらいすると、夫は100万円妻は20万円で、両者の年金を足すと120万円になる。120万円を50%の60万円ずつに元夫婦で平等になるようにしたい。じゃあ、夫の年金を40万円減らして妻の年金を40万円増やせば、両者はその半分の60万円ずつになって平等に分けれたねって事ですね。

あくまで夫婦の老齢厚生年金を足して、その金額が両者で半分になるようにするのが年金の分割って事であります。この考え方は離婚分割を考えてる方はぜひ押さえておいてください。ちなみにこの例では妻に婚姻期間中の厚生年金が無かったら、そのまま夫の厚生年金100万円を半分の50万円分けてもらう形になる。

※ 注意
年金を分割する場合は、あくまで婚姻期間の厚生年金記録のみで分割する。独身の時に作った年金記録は元配偶者には与えない。

また、半分の50%で分けるのではなく、45%とか30%とかそういう任意で決めた割合で分ける事もできる。しかしほとんどの夫婦は50%(お互い半分)を選択している。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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