学術会議問題で判明。菅政権が瀕死のアカデミズムを殺したい本音

 

「総合的、俯瞰的」視点に欠ける菅義偉政権

菅義偉首相や加藤勝信官房長官は6人の任命を拒否した理由として「総合的、俯瞰的」な判断を強調したが、天に唾するとはこのことで、何事によらず「部分的、近視眼的」な判断しかできないのがむしろこの内閣の特徴である。

例えば、いきなり目玉政策として打ち出された「不妊治療への保険適用」は、やらないよりやったほうがいいだろうとは思うけれども、そもそもそれで悩んでいる人がどのくらい存在し、その人たちをすべて救済したとして保険会計上、どの程度の国民的負担となり、その結果として昨年にはついに1.36まで下落した合計特殊出生率をいつまでにどれだけ2.08にまで近づけられるのかを、順序よく説明しなければ当事者以外には何ら心に響くものがない。実際、最新の社会保障に関する世論調査で、少子化対策の予算配分を増やせという人は74%に達するが、それでどのような対策を打つべきかを2つまで回答させたところ、不妊治療への負担軽減策を支持する人は14%に過ぎなかった(18日付東京新聞)。

少子化の主要な問題は、不妊治療を必要としない圧倒的多数の若い人たちが、この国の将来に希望を持てず、経済的にも追い詰められていて、そもそも結婚しないし、しても子供を設けることを躊躇わざるを得ないことにあるのであって、それは上記調査で「必要な少子化対策」への答えとして、

  1. 非正規労働者の待遇改善=44%
  2. 子育て中の人が働きやすい労働環境の整備=37%
  3. 保育所などの施設整備や人材確保=26%
  4. 児童手当などの現金給付増=24%
  5. 大学も含めた教育の完全無償化=22%

……などが上位を占めていることに表れている。

つまり「不妊治療への保険適用」は、総合的、俯瞰的な少子化対策の全体像の中でどう位置付けられるかの説明を欠いたまま、闇雲に持ち出されたもので、菅首相としては「人気取り政策」のつもりなのだろうが、まるでピントが外れているのである。

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