米大統領選2020を10のファクターで予測。トランプ勝利の奇跡はあるか

 

2.アウトサイダー効果は?

2016年の選挙の際には、ヒラリーは「エスタブリッシュメント」であり、「ディープステート」という闇の権力を代表しているなどというイメージから、対抗するトランプは、カウンターカルチャー的なアウトサイダーというイメージがありました。

例えば、2016年の選挙戦でペンシルベニア州のバックス郡にトランプが来た際には、「ダースベイダーの仮装をした」支持者などが見られたそうですし、そのほかの集会でも、例えば10月末のハロウィンが近づくと、カウボーイ姿とか奇妙な格好で「娯楽として」選挙集会に来るみたいな現象がありました。その種の奇妙なエネルギーは、今回2020年には消滅しています。

つまり、トランプの持つスキャンダラスな話題性に関しては、この4年間の間に、アメリカ社会としては麻痺しつつ、飽きてしまった。つまり「エンタメとしても賞味期限切れ」という状況になっていると思われます

3.アンチ・ヒラリー効果は?

2016年の選挙に特徴的だったのは、アンチ・ヒラリーというエモーションでした。民主党支持者の中に、政党としては民主党を支持するが、ヒラリーは個人的に嫌いという層が確実に存在したのです。例えば、若者を中心とした左派のサンダース派の場合は、予備選の遺恨から相当に嫌っており、棄権に回るとか、中にはトランプに投票したグループもありました。

中高年の「ビル・クリントン時代」を知る世代にも、一定の「アンチ・クリントン」がいたし、特に、モニカ・スキャンダルを抱えた夫を許したのは「政治的野心による仮面夫婦隠し」だとして、ヒラリー嫌いという層は確実にありました。また、若い世代の中には、アフガン・イラク戦争などへのヒラリーのタカ派的姿勢への反発もありました。

そうした「アンチ・ヒラリー」に匹敵するような、マイナスの感情というのは、今回のバイデン候補に向けられるものとしては、ほとんどないと思われます。例えば、認知症疑惑であるとか、息子のスキャンダルというような問題はありますが、いずれも党派的な枠組みの中での議論で、そこからハミ出すものではありません。

4.決定的失言は?

ヒラリー敗北のきっかけとして、歴史的に見れば、2016年9月にヒラリーがNYで行なった「どうしようもない人々(”Basket of deplorables”)」発言の意味は極めて大きかったと思います。

この basket of deplorables なんていう言葉は本当はないわけで、口から出任せの造語ですが、要するに「トランプ支持者は、LGBTを差別し、性差別、白人至上主義などを唱える、どうしようもない連中だ」と罵倒したわけです。罵倒したのはいいんですが、その表現が強すぎました。

つまり deplorable(残念な=日本語の現在のスラングの「残念」にほぼ同じ)な人が、腐ったタマネギとか、芽の出たジャガイモのように、籠の中に投げ込まれているというわけです。一種のビジュアルイメージを醸し出す中で、これがとんでもないマイナス効果を生じてしまったのでした。

勿論、これを言ったのはNYでの支持者集会でしたから、その場ではオオウケでしたが、ヒラリーが計算できなかったのは、そう言われて「自分のことだ」と思う人がアメリカには大勢いたことです。その人たちは、この発言を聞いて「ヒラリーを憎み、そのためにトランプ支持を固めた」、それが歴史を動かしてしまったのでした。

このような破滅的な失言というのは、今回のバイデン=ハリスのコンビは、全くありません。

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