米大統領選2020を10のファクターで予測。トランプ勝利の奇跡はあるか

 

5.経済や雇用は?

2016年の場合は、オバマ政権の8年間を通じて「リーマンショック後のアメリカ経済の回復がスロー過ぎる」だけでなく、「同時にIT化による激しいリストラ」を伴っていたので、知的産業以外は雇用が回復しないという、恨みのような感情が全米に満ちていました。そして従来からの民主党支持者も、そのために、一部がオバマの後継であるヒラリーを見捨てたのです。

今回の2020年の場合は、その点でバイデンは「今のコロナ不況」をタテにして、トランプを批判する立場であり、現状への恨みをストレートにぶつけられる存在ではありません。

6.党内左派との関係は?

2016年のヒラリーは、熾烈な予備選を戦ったバーニー・サンダースの支持者には、明らかに「怨念」を残していました。今回、2020年のバイデンも予備選ではサンダース派との厳しい戦いをしていますが、コロナ禍の中で、サンダースは早々に撤退しましたし、例えば最左派のAOC(アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員)なども、バイデン支持を明確にしています。

しかも、バイデン=サンダースの政策協定というのも成立させていますし、何よりも、「トランプ打倒」という目標を、党内抗争の論理よりも優先させることはできていると思われます。

しかも、トランプは、こともあろうに「ハリスは危険な左派(実際は中道)だから、バイデンも危険」という、トンチンカンな批判を繰り返していたわけです。もちろん、ニュースなど全く読んでいない人を誘導するのが目的ですが、こうした言い方では、民主党内を分断することはできないわけです。そんな敵失もあって、今回の選挙に関しては、民主党側の結束は固いと見ていいでしょう。

7.副大統領候補の違い

2016年のヒラリーが副大統領候補に選んだのは、ヴァージニア州選出の上院議員(今もそうです)のティム・ケインでした。悪い人ではないですが、非常に地味であり、「女性候補のヒラリーのアクの強さ」を緩和するという以上の効果はなかったわけです。

ですが、今回のカマラ・ハリスという人選は結果的に成功だったし、彼女の存在により献金の勢いが加速する中で資金力にもダイレクトに反映しています。

8.ネガキャンをストップ

タイミングとしては、10月1日のトランプ感染を受けてということだったのですが、バイデン陣営は「アンチ・トランプ的なネガキャン」を停止しました。そうではあるのですが、資金はジャンジャン来るので、激戦州では「そのためにCM枠が拡大されている?」と思われるほど、バイデン派の広告が投下されています。

ですが、その広告は「ポジティブ」にバイデンを売り込むものがほとんどで、ネガキャンはないという「現在のアメリカ政治の中では異常な事態」になっています。トランプは回復したと自称しているので、別にネガキャンを再開してもいいはずなのですが、御大本人か奥さんの意向かはわかりませんが、とにかく(少なくともペンシルベニアでは、)今日現在やってません。これがどのような効果をもたらすかは分かりませんが、興味深い現象だと思います。

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