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追い詰められた安倍前首相。「桜」前夜祭にまつわる嘘八百を暴く

安倍晋三前首相が主催した「桜を見る会」前夜に、安倍氏の後援会が開いた「夕食会」の費用の不足分5年間総額900万円以上を後援会側が負担していたことを関係者が認めたと報じられています。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんは、「夕食会」に関わる記事を1年前から検証し、ウソだらけだった安倍前首相の弁明をあぶり出します。そして検察との取引の可能性にも言及しつつ、追い詰められた前首相の動向に注目しています。

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「桜を見る会」前夜祭の疑惑を新聞はどう報じてきたか?

きょうは《毎日》の順番ですが、めぼしい独自記事も見当たらないので、《東京》の検索機能を使って「桜を見る会」をテーマにしましょう。とりわけ、まず「発火」した「前夜祭」あるいは「夕食会」の費用補填について。検索ワードを「夕食会and桜」としてやってみると、36件ヒット。無関係のものもありそうですが、とりあえず、これらを対象に。

まずは《東京》の1面トップ記事と2面の解説記事「核心」について見出しから。

(1面)
安倍氏側 800万円補填か
「桜」前日夕食会
会費不足 5年分領収書
周辺が事実認める

(2面)
安倍前首相 説明果たさず
「前首相がうそ」国会招致要求
「桜」夕食会 費用補填
政治推薦、名簿廃棄…問題山積
安倍前首相 主なやりとり
事務所として捜査に全面協力

安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」の前日に都内のホテルで開いた夕食会を巡り、2019年までの5年間に費用の不足分として総額約916万円を負担していたことを後援会関係者が認めたと、朝日新聞。ホテルの領収書は安倍氏の資金監理団体宛だった。

いくつか重要な事実がある。安倍氏は首相在任中、一貫して補填を否定し、違法行為はないと断言してきたが、それらはすべてウソだったことになる。政治資金規正法と公職選挙法違反に問われることは間違いない。

また、野党は安倍氏の国会招致を要求しているが、自民党は「司法がやっていることに立法府が対応するのは慎むべきだ」と主張して拒否。しかし安倍氏は閣僚の不祥事などの際には、再三「政治家として自ら説明責任を果たすべきだ」と公言していた。自分だけは例外にしたいのだろうか。

●uttiiの眼

今回、捜査当局は、ホテル側が出した領収書の控えを手にしていると思われ、もはや、安倍後援会は逃げ道を塞がれた形。少なくとも会計責任者は法的責任を何らかの形で問われることになるだろう。安倍氏は「知らなかった」と自己の責任を回避しようとするだろうが、その点で何らかの捜査の進展があれば、責任追及は安倍氏本人に及ぶことになる。さて、どうだろうか…。

冒頭に記した見立てが当たっていれば、検察は既に安倍氏サイドと取引していて、ある種の「合意」があるかもしれないので、あまりビックリするようなことは起こらないかもしれないが…。

ただ、「桜を見る会」疑惑は、この前夜祭問題に止まらない。公費で行われる催しを私物化した疑惑。第2次安倍内閣成立以降、年々増大してきた費用の問題、後援会関係者接待疑惑、政治枠の問題、そして、安倍氏がジャパンライフ会長を自らの政治枠で招待していた疑惑、名簿の廃棄…など、論点は数多ある。「政治枠」については菅義偉氏にも降りかかってくる可能性がある。

【サーチ&リサーチ】

「桜を見る会」問題が発覚したのは昨年の5月。「夕食会」と「桜」で検索した場合、最初の記事は19年の11月。ザッと1年前の記事からになった。

2019年11月14日付
「公費で首相が主催する「桜を見る会」を巡り、安倍晋三首相の事務所名が記載され、地元・山口県の後援会関係者に届いた案内文の内容が判明した。参加者を募った上で、申し込んだ人に観光コースとの組み合わせや、航空券手配などの希望をアンケートで確認する形式となっている」

*次第に材料が揃ってきていた。

2019年11月16日付
「「桜を見る会」を巡る15日夜の安倍晋三首相の記者団への説明は21分に及んだ。昼にもこの問題で記者団の取材に短時間応じた。首相が一日に同じテーマで2回取材に応じたり、長時間説明したりするのは異例だ。批判が強まり、釈明せざるを得ないと判断したとみられる」

*臨時国会の最中、安倍氏がこの問題に神経質になっている様子が分かる。

2019年11月19日付
「菅義偉官房長官は19日の記者会見で、首相主催の「桜を見る会」を巡って、国会議員が推薦できる招待枠について今後、撤廃も含めて見直しを検討する考えを示した」

*夕食会については翌日に次のような記事が出ている。

2019年11月20日付
「安倍晋三首相主催の「桜を見る会」前日の夕食会を巡り、2015年に首相事務所名でツアー参加者に配られた文書の記載では、会場と宿泊先のホテルが異なることが分かった。5000円という夕食会の会費が安過ぎるとの指摘に首相は「参加者の大多数が宿泊者という事情などを総合的に勘案してホテル側が設定した」などとしており、疑問や詳細な説明を求める声が強まりそうだ」

*上記は、夕食会を巡る最初のウソと見られる。食事代が安すぎることについての辻褄合わせをしたつもりが、現実と明確に違っていた。その場しのぎのウソは、名簿廃棄を巡っても繰り返された。

2019年12月5日付
記事は、郷原信郎氏の指摘を紹介。「後援会側とホテルとの間で収入と支出を決め、総額を事前にホテルが受け取っていたと考えるのが自然。明細書が明らかになり、ホテルへの支出と参加費収入との間に差があり、後援会側が補填していれば、公職選挙法違反の(後援会から参加者への)寄付に当たる部分が出てくる疑いがある」と。

また、ニューオータニの宴会は通常1人1万1千円から。参加費との差額6千円をホテルが値引きしていれば、政治資金規正法上、ホテルから後援会側への「財産上の利益供与」に当たり、しかも、それは同法が禁じる企業献金にも当たる。ホテル側が商取引として値引きしたとしても、「収支報告書に記載する必要がある」(郷原氏)ということになる。

*上の記事では、「値引き」でも「補填」でも法的な問題が生じることが指摘されている。

*今年の8月までには、全国の合計941人にのぼる弁護士や法学者が、公選法違反と政治資金規正法違反の疑いで、安倍氏と後援会幹部2人に対する告発状を東京地検に提出している。

●uttiiの眼

首相を退いてまだ2カ月。おそらくは検察がリークしてマスコミが動き、安倍サイドが領収書の存在を認めた(廃棄したと言っているようだが…)という流れは何を意味するのだろうか。検察との闘いでは、安倍氏は完全に追い詰められたと言えるかもしれない。

政権が総選挙のタイミングをどのように図るかという意味では、桜を見る会」の問題が菅氏にどのように関わってくるのかも重要な要素になるのだろう。

image by:Sasa Dzambic Photography / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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