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「結果責任」の意味を都合よく履き違えるこの国の政治家の無責任

1都3県の知事からの要請に急かされるように、否定していた「緊急事態宣言」の発出を決めた菅政権。コロナ対応では後手後手のうえに朝令暮改を繰り返してきたこの国のリーダーたちが口にする「政治は結果責任」という言葉の免罪符的な使い回しに呆れ、「正しい意味」を説くのは、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんです。山崎さんは昨夏も「最も高額な有給休暇。国会はなぜこの非常時に閉じているのか?」で指摘したように、今回も臨時国会を開催しない国会議員の税金泥棒状態を批判。「『今』こそが結果なのだ」と釘を刺しています。

誰かのこと

雨が降るのは、誰のせいでもない。
風が吹くのも、誰のせいでもない。
地が震えるのも、天が鳴るのも、誰のせいでもない。
病が流行るのも、やはり誰のせいでもない。

災厄のほとんどは誰のせいでもなく起こるものである。故に、誰かを責めてみたところで詮無いことである。しかし、その前後は違う。事が起こる前の準備、事が起こった後の始末、全て誰かの責任である。誰かとは即ち、これらの準備や始末をするために国民から選ばれた人たちのことである。例えば、地震が起こることは誰のせいでもないが、それにより住む家がないという状態がいつまでも続けば、それはもう政治のせいと言っていい。

それでも大雨、大風、大地震に関しては前内閣の頃から「国土強靱化」という文言をもって強調されてはいた。しかし疾病対策においては事実上無策であった。2011年の東日本大震災を受けての国土強靱化というなら、2009年の新型インフルエンザを受けての感染症対策も同様にあってよかった道理である。両者が違うのは国土強靱化が直接的に建設・土木関係業者を潤すのに対し、感染症対策は直接的には誰をも喜ばせないというところである。

誰も喜ばないかもしれないけど、誰も儲からないかもしれないけど、それでも猶必要なことはこの世にたくさんある。それが分かっているから我々は黙って税金を納めているのである。政治家としての禄を食む以上、この辺のところは忘れては困る。

「政治は結果責任」。最近、この言葉をやたらに聞く。「まったくもってその通り」と言う他ないこの言葉だが、どうも勘違いしている政治家が多いような気がするのである。政治における「結果責任」とは通時的概念ではなく、共時的概念である。その人が死んだ後の伝記や歴史記述の問題ではなく、日々更新されていく「今」に対しての責任のことなのである。

ところが、今の政治家を見ると「結果責任なんだから、その結果が出るまで待て」とでも言わんばかりの態度である。こんなバカな話はない。これではただの責任の先送りである。当然、次の人、その次の人も、この責任を先送りするだろうから、終には誰も何も責任を取らない、今のような状態に成り下がってしまうのである。

改めて振り返ってみても、このひと月余りの政治のあり様はひどい。「我々は今や無知ではない」と押しに押したと思ったら、ある日突然「我々にとっては未知のウイルス」と引く。振り回される方は堪ったものではない。発出間近であろう緊急事態宣言も1都3県の知事に散々につつかれて、結局出さざるを得なくなったといった感じである。

また、それについて語るに「早急に根拠法である特措法の改正を18日からの通常国会で…」である。18日まで2週間、ウイルスが正月休みでも取ってくれるとでも言うのか。国会議員は、夏に続いてこの冬もまたボーナス付きの超高額有給休暇である。一応言っておくが、この国には臨時国会というものがある。非常時に開かないでどうする。

「政治は結果責任」。今ではすっかり揮発性の言葉になってしまった。政治家がそうしてしまったのだ。この言葉を口にするなら、まず自分自身に「『今』こそが結果なのだ」と言い聞かせることから始めてもらいたい。それなくして、この言葉に実が伴うことはないからだ。

言葉に実が伴えば、そこに説得力が生じる。言説に迫力が出る。政治家への信頼はこうして生まれるのである。そんなふうに考えれば考えるほど、どうにも暗い気持ちになってしまう。これは自分だけであろうか。

image by: Shutterstock.com

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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