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女子中学生を自殺まで追い詰めた、沖縄わいせつ教師の呆れた手紙

以前掲載の「『わいせつ教師再任用反対』を阻む勢力の正体とは?現役探偵が怒りの告発」等の記事でもお伝えしているとおり、教師によるわいせつ事件が後を絶ちません。2013年には沖縄県那覇市で、前年に中学校の部活顧問教師からわいせつ行為を受けた女生徒が自殺するという、痛ましい事件も起きてしまっています。こうした悲劇を防ぐ手立てはないのでしょうか。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、那覇市の事案を詳細に取り上げるとともに、こうした事件に対する全国の学校や教育委員会の対応を厳しく批判しています。

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沖縄わいせつ教師、被害による生徒の自死

2020年12月23日、文科省によれば、2019年度わいせつ行為やセクハラで懲戒処分などを受けた公立小中高の教員は273人で過去2番目の多さであった。最も多い被害は「体を触る」(84人)「性交」(49人)「盗撮やのぞき」(33人)であった。

さて、今回の「伝説の探偵」は下記の事案を取り上げたい。

2013年、沖縄県那覇市の中学校で、当時中学3年生の女子生徒が男性教員からわいせつ行為を受けた。その後、2014年、被害生徒は高校生となっていたが、12月29日、自宅のベランダから飛び降りて亡くなった、16歳であった。

ご遺族から当時の報告書などを送ってもらったので、この事件までの経緯をみてみよう。

事件の概要

平成25年11月18日付、那覇市の教育長に中学校の校長があてた第一報では、こうある。

(冒頭要約)

 

わいせつ行為を行った教員は被害生徒が所属する部活の副顧問であった。その部活内での補講の意味合いで朝の勉強会が行われていたが、表面化するきっかけとなった同年11月14日の事件では、被害生徒が当日遅刻し、わいせつ教師から理科準備室に呼ばれ、そこでいきなり唇にキスをされたという。

 

被害生徒はパニック状態に陥り、トイレで泣きじゃくった。トイレから出たところで友人と会い、廊下で過呼吸を起こした。

 

続いて、平成25年11月20日に作成された事情聴取書では、11月14日の3校時頃、保健室に来た女子生徒の様子がおかしいと感じた養護教諭が粘り強く聞いて、この事件のことを知り、すぐに校長に報告したとある。

しかし、これだけではなかったのだ。

当然、学校長らは大事件が起きてしまったとして、その経緯や状況の聞き取りを進めるものだ。

ご遺族に送ってもらった資料を読むと、次々とわいせつ教師が被害生徒にしていたことが出てくるのだ。

すでに公開されている内容だけでも、「キスをしたのは1度ではなく2度」「スカートの中に手を入れておしりを叩いた」「膝の上にのせて抱きしめる」「休日にドライブに誘い出し、抱きしめる」などの行為をそれ以前に行っていたことが明らかになっている。

被害を調べたのは被害者側

私が着目したのは、当初のわいせつ行為で問題が発覚した後に次々と他のわいせつ行為が出てきたことのみならず、これは学校の調査によるものではなく、被害生徒の家族が動いて調べ、これを学校に報告したのが事実なのである。

例えば、11月14日の件では、「急に抱きしめてキスをした。(1度目)その後、いろいろ話をして、途中で急にキスをした。(2度目)」となっている。

つまり、被害側が学校などの協力を得て調べたのではなく、自らが動き聞き出したり、調べたりしてわかったことを、学校に報告し、わいせつ教師に確認して認めたことが被害とされているということだ。

また、被害生徒の気持ちが不安定になったのは、わいせつ行為を受け始めてからということもわかる。ご遺族によれば、穏やかな性格であったが、声を荒げたり物を投げるということもこのころからあったそうだ。

新聞報道などを比較していくと、被害生徒がわいせつ教師をそれまで信頼していたということもわかる。信頼していたからこそ、多感な時期の悩みや将来のことを話していたのだろうが、このわいせつ教師は、そうした生徒の信頼を利用しわいせつ行為をしていたのだ。

わいせつ教師はいつも卑怯だ

様々な報告書を読み返してみたが、このわいせつ教師は、なぜこのような卑怯で悪質な行為に及んだのかという問いには、「なぜだか自分でもわからない」としか答えていない。

つまりは咄嗟にしてしまったと言いたいのだろうが、それまでしてきたわいせつ行為からすれば、狙ってやった、恋愛感情関係があったと装いたかった、歯止めがきかなくなっていたと考えるのが妥当だろう。

わいせつ教師の当初の処分は、訓告処分であったが、平成26年3月には懲戒免職が発令されている。ただし、教員免許の失効情報が官報掲載されなかったことが2020年読売新聞の報道で明らかになっているのだ。

わいせつ教師問題は萩生田文科大臣が記者会見で、二度と教壇に立ってもらいたくない旨の発言をしたり、以前、伝説の探偵で取り上げた全国学校ハラスメント被害者連絡会の署名活動などで注目され、以降40年間の記録が閲覧できるようにすることでわいせつ教師の採用に影響を持たせるような対応をすると報道されているが、未だに教員免許失効後、原則3年で再所得できる状態である。40年間閲覧できるというのも、まだ先の話であるのだ。

報道されたことで、世間では40年間閲覧はもう出来上がっているようなマインドに感じるが、そもそもこの40年間閲覧も、閲覧ができるというだけで、再所得できないわけではないし、再任用されないわけではない。

いつの間にか、官報の処分記録が40年間閲覧できるということにすり替わっただけであり、当初は「採用されることはない」から「40年間採用されない」となって、「処分履歴を40年間見ることができるようにするから、たぶん採用しないだろう」ということになっているのだ。

学校などの対応は不十分

この問題では、学校や那覇市教育委員会などの対応も十分であったとは言えない。

例えば、わいせつ教師は行為発覚後、少なからず2日間は出勤していたと記録にはあるし、学校は被害側に口止めを行っていた。さらに、那覇市教育委員会や学校は、これほど重大な事態が起きているにもかかわらず、高校は事態を把握していなかったと証言が出ているのだ。

被害生徒は高校に上がってからも、わいせつ行為のトラウマに悩まされ続け、その結果として自死の道を選んでしまったわけだが、高校は、わいせつ行為の被害は把握せず、この事件を「原因不明」としたというのだ。

これは調査が不十分であったことの結果と言えよう。学校は生徒がどのような状態であり、何が起きてしまったのかということをかなり簡単に把握できた状態であったのに、それすら把握できていなかったのである。

しかも、ご遺族によれば、高校に資料を持参して、こういう被害を受けた事があるので、不必要なスキンシップは避けてほしいとお願いしていたという。

いったい、何をしていたのだと思うのは私だけであろうか。

命が粗末に扱われているというのが私の第一印象だ。

わいせつ教師は反省しない

ご遺族は、わいせつ教師が処分されたことも知らぬまま、信頼していた教師によるわいせつ行為によって大事な我が子の命が断たれた後も苦悩し続けた。

こんなことがあってはならない、誰もがそう言うだろうが、現実問題として、教師によるわいせつ事件は後を絶たないのだ。

神奈川では敢えて満員電車に乗り体液をばらまいたり、静岡では教頭がわいせつ目的で誘拐事件を起こしたりしている。

ご遺族はこうした現状を受け、声を上げたのだろう。この声を我々は真摯に受け止めなければならないし、変わらない現状を憂うのではなく、学校は治外法権ではなく、わいせつ教師はすべて排除すべきだと声を上げなければならない。

最後に、このわいせつ教師が書いた手紙の中の一節をみてもらいたい。

教師にとっても教え子を亡くすことは大きな悲しみです。

ハッキリ言う、わいせつ教師は反省などはしない。自らに教師としての資格がないことも理解していないのだ。言葉では、何とでも「謝罪」していると言えるだろう。

しかし、その内心は、自分は教師であり続けているし、生徒に行ったわいせつ行為は「そのつもりはなかった」のだ。

編集後記

この件は様々な報道機関で取り上げられましたが、次々と関連問題が噴出しています。私は被害生徒の動画や写真をご遺族から送ってもらいました。

お母さんが撮影しているからでしょうか、とても楽しそうにしている様子は微笑ましいと同時に、画面の先の子が自ら命を絶つところまで悩まされ、追い詰められてしまったのだと思うとすごく辛い気持ちでいっぱいになってしまいました。

本件にもう1つ付け加えるとすれば、学校や教育委員会はこういう事件が起きるたびに、頭を下げつつも、やれ「研修はしていた」「注意喚起は行っていた」という書面を発行します。本件も同様で、一部資料は研修をしていたという内容が出てきます。

では問いたい。その研修はどの程度の効果があり、どの程度の抑止につながっていたのか。なぜ未だに全国的に被害が起きているのか?そして、こうした被害は氷山の一角であり、事実隠ぺいされている件がそれ以上にあるということをどのように考えているのか。

わいせつ教師は二度と教壇に立てないようにするのみならず、子どもたちに関わらないでほしいという実効性のあるものが、しっかりと定着させなければと思い、微力ながらもこうした問題は積極的に取り上げていきたいと思います。

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image by: Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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