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感染爆発を招いた「悪夢のアベ・スガ政権」に殺される国民の不幸

東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県を対象に、ようやく再発出された緊急事態宣言。7日には東京都の感染者数がついに2400人を超え、一部メディアではすでに医療崩壊も起きていると報じられていますが、何がこの危機的状況を招いてしまったのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、安倍政権から菅政権に引き継がれた「道理とかけ離れた政治」に原因があるとし、そう判断せざるを得ない理由を詳述しています。

欺瞞と痴性はびこるアベ・スガ政治ではコロナに太刀打ちできない

新型コロナ感染爆発の兆しが見えながら、菅政権はほとんど無策のまま年を越し、案の定、東京、神奈川など一都三県の知事から緊急事態宣言を求める悲痛な声が上がった。

医療は崩壊寸前。とりわけコロナ患者を受け入れている公立の病院では集中治療室が満杯で、重症の救急患者さえ、受け入れがままならない。医療スタッフの心身の疲労は限界を超えている。

マスクや手洗いなどを徹底すれば、ウイルスと共存しながら経済をまわしていけるのでは。そんな、希望的観測にしがみついていた菅首相も、ここへきて観念したとみえ、一都三県に限り、7日夜にも緊急事態宣言に踏み切るようである。

首都圏の人の移動が止まると、ただでさえ落ち込んでいる経済は、さらに深刻なダメージを受ける。こうならないよう、菅首相はもっと早く手を打っておくべきだった。

政治的思惑も絡み、まだ海のものとも山のものともつかないワクチンに、ゲームチェンジャーとして過剰な期待をかけているのではないだろうか。ワクチンの深刻な副反応が続発して信頼性が揺らぐ場合も想定し、第二、第三の手を用意しておかねば、東京五輪・パラリンピックの開催はおぼつかない。

ノーベル医学賞の本庶佑京大名誉教授が言うように、構造が不安定で、変異しやすいRNA遺伝子を持つのがコロナウイルス。いまワクチンの効果があっても、いつまで持つか、はなはだ怪しい。無症状ながら感染している人が、そのうえに接種しても大丈夫なのかどうか。それも定かではない。

「Go To」キャンペーンで、いったん盛り上げてしまった人々の行動意欲。いまになって緊急事態宣言でこれを抑えようとしても、1回目ほどめざましい効果が上がるかどうかは疑問だ。

大みそかに、東京都では新規感染者が900人台から1,337人に跳ね上がり、正月休み明けの1月5日の数字も1,278人、6日には1,591人を数えた。いまのところ、勢いが衰える気配がない。

英国ではこれまでよりはるかに感染しやすい変異種のウイルスに入れ替わったという。日本にもすでに入り込んでおり、東京の急拡大はそのせいもあるのかもしれない。

計画を前倒ししてまで「Go To」に走った昨年の夏場。もし、政府が景気刺激を焦らず、秋にかけて徹底的にコロナウイルスを叩く作戦をとっておけば、おそらく今のようにはならなかっただろう。火種が残ったまま「Go To」の油を注ぎこんで煽り立てれば、再び燃え上がるのは当たり前のことだ。

チグハグというか、支離滅裂というか。アベ・スガ政権のこの約8年、不合理な政策と欺瞞的な説明が、まかり通ってきた。実に不思議なことである。その底流に何があるのか。識者のなかには、太平洋戦争において、人間関係に流され、精神論と希望的観測に迷い込んで、合理的作戦を立てられなかった日本人のメンタリティーに「解」を求める向きがある。

それも一面の真理に違いない。だが、それほど上等な分析をしなくても、答えはしごく簡単なのではないか。

要するに、そろいもそろって合理的思考ができない人たちだということだ。多角的にものを見て、最悪の事態まで想定し手を打つなどという観念はゼロ。偏狭なイデオロギーや経験則に基づき、自分たちに都合のいいよう策を立てたり、発言したりする。だから、あちこちに綻びや歪みが出て、どうにもならなくなる。

それを取り繕おうとして、ありとあらゆるウソをつくのである。

「桜を見る会」前夜パーティーで、後援会の収支はなかった、参加者が個別にホテルと契約して会費を支払ったという、荒唐無稽な安倍前首相の国会答弁などはその最たるものだ。

誰が考えてもありえないことを、100回以上国会で繰り返して、なんら良心が疼くこともなく、毎夜のように高級料理店のディナーに繰り出せるなんぞは、知性も品格もない“暗愚の宰相”の典型というべきであろう。

安倍前首相は昨年2月17日の衆議院予算委員会で、こう言っていたのだ。

辻元清美議員 「明細書はホテルからもらっていない、宛名のない領収書をホテルが発行したというように、何回も何回も繰り返し答弁されています…事実と違ったらきちんと責任をとられるということですね」

 

安倍首相 「私がここで総理大臣として答弁するということについては、全ての発言が責任を伴うわけであります」

前夜祭パーティーの代金は参加者が個別にホテルと契約して支払い、それぞれに領収書をホテルからもらっているので、安倍晋三後援会に収入、支出は発生していない。そういう主張が事実と違っていたら、安倍前首相は責任をとると明言している。少なくともこの答弁からはそう受け取れる。

この答弁にウソがないのなら、今ごろ、安倍前首相は責任をとって国会議員を辞職していなければならない。東京地検特捜部の捜査を受け、パーティー代金を安倍事務所が徴収したこと、ホテルの請求総額に足りない金額を補てんしていたことを認めたのだから。

検察人事に手を突っ込み、お気に入りの前東京高検検事長、黒川弘務氏を検事総長にすべく画策したのも、東京地検特捜部の「桜を見る会」捜査を封じ込めようとしたゆえである。

だが、黒川氏の賭けマージャン事件で思惑が外れ、捜査は着々と進められた。そして、東京地検特捜部は、2016~19年の4年分の収支報告書に、計約3,022万円の収支を記載しなかったとして、政治団体「安倍晋三後援会」代表の公設第一秘書を略式起訴した。

安倍晋三後援会は、山口県選挙管理委員会に保管されていた17~19年の政治資金収支報告書を訂正した。うち、19年分の報告書を見ると、前夜祭参加者767人から集めた383万5,000円が後援会の収入として訂正記載され、それに260万4,908円を加えた計約644万円がホテルニューオータニに支出されている。やっぱり一人当たり8,400円ほどはかかっていたのだ。そして、ニューオータニから出ているはずの領収書は無くなったとして「亡失一覧」が添付されている。

これだけの事実があっても、安倍前首相は、議員辞職をすべきという声を拒んでいる。民主主義国家の国会で首相たるものがウソをつき続けた深刻な罪と責任を負おうとはしない。その理由について、秘書が事実を隠していたから自分は知らなかったとか、検察が自分を不起訴にしたから問題はないとか言っている。誰がみても、ウソの上塗りであり、ごまかしである。

不起訴処分が決まり、12月24日に弁明会見を開いた安倍氏は、相も変らぬ不明朗な話を繰り返した。参加者が直接ホテルに支払う契約だったという無理のある秘書の説明を受け入れた理由について。

「まず5,000円で全て賄っていたという認識で、かつ、秘書にもそれを再度確認をしております。…5,000円で賄われていればですね、5,000円の領収書を個々の参加者に発行してるわけでありますから。そこでですね、いわば、この主体として参加した人とホテルとの関係で、それがいわば完結をしてるということで、私はそう理解をしていたわけであります」

あくまで、秘書の言うことに納得し、信じていたという。そこがまず、ありえない。ずいぶん前から同じやり方で高級ホテルのパーティーを支援者に提供してきた安倍氏がカラクリを知らないはずはないのだ。

知り合いのホテル関係者は言う。政治家の後援会とホテルの取引であっても、後援会の領収書を参加者に出せば収支報告書に記載する必要があるので、ホテル側が後援会の求めに応じてホテル名義の領収書を参加人数分用意したのだろう、と。「ホテル側からすると、請求総額に含まれる一部入金分に該当するので何ら問題はありません」。

つまり、有力政治家の求めに応じて、ホテル側がこうした便宜をはかることはなきにしもあらずということらしい。

しかし、事実はあくまで、ホテルと後援会がかわした契約である。安倍前首相がなぜか国会への提出を渋っている請求明細書をみれば、すべて判明するはずなのだ。もはや、参加者とホテルとの個別契約というのはウソとバレているのだから、これ以上ハラを探られないためにも、明細書を出せばいいのである。

ところが、営業の秘密を理由にホテル側が公開を前提とした明細書の発行を拒んでいる、と言い続けてきたため、野党議員から「ホテルに再発行させればいいではないか」と迫られても、はいそうですね、と言うわけにはいかないのが現在の安倍氏の事情なのであろう。

森友、加計疑惑は、もとをただせば、安倍氏の個人的イデオロギーや心情に端を発している。教育勅語の復活をめざす小学校をつくりたいという願いが森友学園と昭恵夫人との関係を生み、親友の長年の夢であった大学獣医学部新設をかなえてやりたいという思いが、国家戦略特区を利用した権力乱用につながった。

国家戦略とはほど遠い前首相の発想と、それを忖度する側近や官僚の虚偽答弁によって、公文書が改ざんされ、真面目な公務員を自殺に追い込み、この国の民主主義は深刻なダメージを被った。

道理とかけ離れた政治は、安倍政権から菅政権に移り、“総合的・俯瞰的”に物ごとを見るのではなく、高級料理店で食卓を共にし、たまさか首相の共鳴板を震わした著名人や団体代表の意見を偏重する傾向はより強くなった。

そこにはもちろん政策の一貫性などあるはずがない。端的に言うなら、思いつき、場当たり、対症療法的なところに向かわざるを得ず、小出しとか逐次投入とか評される新型コロナ対策につながっていく。

菅首相は暗夜をさまよっている。学者を黙らし、一部の業界にすり寄り、強権人事を政治手段としてきた男が、いまや側近の無能に手を焼いている。こういう状況で、誰が助けてくれるというのか。自らの不明を恥じ、孤独をかみしめ、身を捨てて難局に立ち向かうしかない。

image by: 首相官邸

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