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「菅総理、クルーズ客船をコロナ専用病院にしませんか」専門家が提言

新型コロナウイルスの第3波により医療崩壊の危機が叫ばれ、東京都では新たな病床確保が喫緊の課題となっています。以前から次なる感染拡大に備え、さまざまな「病院船」のプランを提示し、昨年夏には「復活のダイヤモンド・プリンセス。病院船改造プランに注目」として、クルーズ船の改造活用案も検証した軍事アナリストで危機管理の専門家でもある小川和久さん。今回のメルマガ『NEWSを疑え!』では、医療スタッフの活かし方にまでブラッシュアップしたクルーズ船の活用プランについて、政治家と官僚の耳に入ることを願いながら提示しています。

クルーズ客船をコロナ専用病院に活用

医療崩壊の危機に対して、東京都はコロナ専用病院を確保するようです。

「新型コロナウイルスの入院患者が増えて病床がひっ迫するなか、東京都は、都立広尾病院など3つの病院で新型コロナの患者を重点的に受け入れて実質的に専門病院とする方針です。

 

東京都が新型コロナウイルスの患者を受け入れるため確保している都内4000床の使用率は、12日時点で85.7%となり病床がひっ迫していて、さらなる確保が喫緊の課題です。

 

こうした中、都は、『都立病院』と、都の政策連携団体の公社が設置する『公社病院』のあわせて14の病院で今より600床増やして1700床とする方針を決めています。

 

さらに、関係者によりますと、14の病院のうち、渋谷区の広尾病院と、大田区の荏原病院、それに板橋区の豊島病院で、新型コロナの患者を重点的に受け入れて実質的に専門病院とする方針です。

 

このうち、広尾病院では新型コロナ以外の入院や診療はすべて休止し、240床を確保して受け入れを目指します。

 

また、豊島病院と荏原病院では周産期や精神科の救急以外の入院と診療を止めて、それぞれ240床を確保して受け入れを目指します。(後略)」(1月13日のNHKニュース)

そこで提案です。世界的に運航がストップし、各社が経営難に陥っているクルーズ客船を専用病院として活用とする構想です。クルーズ客船については、日本は昨年初め、現実にダイヤモンド・プリンセスでコロナ対応の経験があり、その経験と教訓を活かさない手はないと思います。

この提案は、電通総研で研究主幹を務めた西山邦彦さんから寄せられたもので、昨年8月27日号でご紹介しました。西山さんは、私が中古貨物船などに高度医療システムを載せた病院船を保有し、発展途上地域での無償医療活動による国際貢献の重要な柱とし、同時に発展途上国からの人材を中心に医療スタッフと操船技術者の育成を兼ねて日本列島を巡回して医療活動することを提案して来たことを受けて、クルーズ客船の活用を構想されました。

ダイヤモンド・プリンセスを例に眺めてみましょう。排水量11万5875トン。乗客2706人、乗員1238人。客室総数1337室。建造費5億ドル(528億円)。三菱重工長崎造船所で建造され、2004年に就航しました。部屋数だけでも大病院の規模です。個室なので感染症の隔離にも対応できます。医療スタッフの居住区も乗員用の簡単な改造で確保できますし、交代要員は埠頭からバスで急行できるホテルを使えばよいでしょう。2隻なら2500床ほどが確保できます。

世界で運航されてきたクルーズ客船は約350隻。2018年には2600万人が利用し、総売上は466億ドル(4兆9000億円)でした。それが、コロナの影響でビジネスの展望が見えないことで、投げ売りが出てもおかしくない苦境にあります。ダイヤモンド・プリンセス級でも、建造費の半値以下の200億円ほどで入手できるでしょう。取り回しが容易な5~6万トンクラスなら、さらに安値が期待できるはずです。チャーター料もそれなりの価格に設定する交渉は可能だと思います。

これは中国が昨年2月に10日間の突貫工事を行い、武漢にコロナ専用病院を建設したのと比べても、スピードと経費の点で勝るとも劣らないものです。

医療スタッフについては、政府と日本医師会が協議して「プッシュ型」を考えてみてはどうかと思っています。日本全体の医療スタッフを、

1)コロナ対応ができる医師、スタッフ、

2)簡単な訓練でコロナに対応できる医師、スタッフ、

3)通常の医療活動に投入できる医師、スタッフ、

などに分類し、医療の人的資源をコロナ対応と通常医療対応に適正に配分していくのです。看護師1人の派遣がやっとという開業医もあるでしょうし、医師、看護師、技師などを派遣できる病院もあるでしょう。とにかく、日本の医療の人的資源を適正配分して医療崩壊を防ぐのです。

このような「プッシュ型」のプロセスに、コロナ対応など高度の能力を育成するOJT(オンザジョブトレーニング)のプログラムを併設することも必要かも知れません。

メルマガを購読してくださっている政治家と官僚機構の皆さん、これくらいを素早く実行すれば国民の政治不信を少しは払拭できるのではないかと思いますよ。(小川和久)

image by: Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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