4.スローなリタイア生活
時間と仕事に追われて、ストレスを溜めていた生活を卒業し、ようやく人はゆったりとした生活が可能になる。そういう意味では、リタイアは幸せへの入口のはずだ。
しかし、リタイア後の男性は家に閉じ籠もり、人生への意欲さえ失ってしまう人が多い。会社組織から離れた途端に、人間関係を失い、社会との関係も失う。そして、仕事を失うことで、アイデンティティさえ失ってしまうのである。
まず、ゆったりとした時間に慣れなくてはならない。焦らず急がず、今まで落ち着いて見たことの景色を眺め、雲や星を見る。植物にも目を向ける。もちろん、道行く人にも目を向ける。
生活のために仕事をしていたはずが、仕事が生活になっていた人が多いだろう。だから、仕事がなくなると生活もなくなってしまうのだ。
人生を楽しむ、生活を楽しむとは何か。たとえば、食事に向き合ってみる。そして、ゆっくりと時間をかけて、味わって食べる。そして、食材に対して思いを巡らせる。
そして野菜を育ててみる。食材を調達することも立派な仕事だ。金のためではなく、生活のための仕事。充実した毎日が過ごせれば、お金が稼げなくても仕事である。
同様に、服について考えてみる。身体について考えてみる。靴や時計について考えてみる。お酒についても考えてみる。
そして、考えたことをツイッターでつぶやいてみる。フェイスブックに短い文章を書き込んでみる。ユーチューブに動画をアップしてみる。これも仕事になる。
生活に積極的に取り組めるようになれば、次は社会貢献や社会的使命についても思いが至るだろう。そんな人が増えれば、世の中も楽しくなるはずだ。
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■編集後記「締めの都々逸」
「嘘をつく人 なぜだか急ぐ 焦る つまずく うろたえる」
嘘をつくのは、面倒なものです。辻褄を合わせるために、嘘が嘘を呼び、最後は何が嘘だか分からなくなる。時間が経てば経つほどばれるので、なるべく早く話をつけようとするし、その場から逃げようとします。
逆に嘘をつかずに正直な人は急ぐ必要がありません。じっくりゆっくり生きていけばいいんですね。
現代のビジネスは常に急いでいます。じっくりと取り組めない。どこかに嘘があるんじゃないでしょうか。
というより、真実ってあるんですかね。むしろ、全部嘘なんじゃないか、と思う今日この頃です。(坂口昌章)
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