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「4月に頓死」説浮上。菅政権のコロナ対策を失敗へと導いた4つの大間違い

発出時の「1カ月後に必ず事態を改善させる」との菅首相の言葉も虚しく、延長される見通しとなった緊急事態宣言。支持率の低下が著しい菅政権にとって新たな痛手となるのは確実ですが、その命運はこのまま尽きてしまうのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、「4月頓死説が強まった」とし、その理由として新型コロナ対策の失敗と選挙の弱さが確実に誘発する「菅降ろし」を挙げています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年2月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

「4月頓死」説が強まる菅義偉政権のヨレヨレ――「緊急事態宣言」延長で堤防に穴が空く

菅義偉首相の屁っ放り腰の「緊急事態宣言」は大方の予想通り失敗に終わり、2月7日までの期限を月末の28日もしくは1カ月後の3月7日まで延期せざるを得ないだろう。同宣言を発布した1月7日の記者会見で「1カ月後に必ず事態を改善させる」と見栄を切っていたのだから、それだけでもすでに、落ちっぱなしの内閣支持率をもう一段押し下げて、30%ライン割れ、20%台突入という危機的な状況を招くに十分である。とはいえ、屁っ放り腰そのものが癒らなければいくら期限を先延ばししても同じで、2月末か3月初に期限の再延期を迫られるだけのことである。

昨年11月25日からの「勝負の3週間」が掛け声だけで、何の勝負手も打てずに無為に過ごしてしまったのに続いて、「緊急事態宣言」がまた空振りでだらしなく延長というのでは、政権を守る堤防には大きな穴が空いて崩れ始めるのは当然だろう。そして再延長となれば、もちろん決壊である。

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そもそもからのボタンの掛け違え

こんなことになってしまう根本原因は、昨年1月の安倍晋三政権下でのコロナ対策が初めからボタンを掛け違え、間違った基礎の上に築かれてきたことによる。

第1に、日本の対応の初歩的なお粗末ぶりは、ダイヤモンド・プリンセス号への対処の時から始まったことで、それを厳しく批判した岩田健太郎=神戸大学医学部医師によれば「レッドゾーンとグリーンゾーンと言って、ウイルスがまったくない安全なゾーンと、ウイルスがいるかもしれない危ないゾーンをキチッと分けて、レッドゾーンではPPEという防護服をつけ、グリーンゾーンでは何もしなくていい。こういう風にキチッと区別することによって、ウイルスから身を守るのが我々の世界の鉄則。ところが、ダイヤモンド・プリンセスの中はグリーンもレッドもぐちゃぐちゃで、どこが危なくてどこが危なくないのか、もう、どこの手すり、どこのじゅうたん、どこにウイルスがいるのか、さっぱりわからない」という状態にあった(INSIDER No.1035 20/02/24)。

第2に、これがさらにまずかったのは、無症状感染者も感染を広げてしまうという新型コロナウイルスの最大特徴を無視したことにある。上昌弘=NPO医療ガバナンス研究所理事長によれば「2020年1月24日の英医学誌『ランセット』で香港大学の研究者たちが報告し世界中が注目したのだが、日本ではこの情報を見落としていた」のだという(INSIDER No.1076 20/12/07)。信じられないような話だが、結局、日本の対策はすべて、この誤った認識の上に、クラスター追跡を最重視してそこに保健所などの人員・資源を集中し、従ってPCR検査もそれ以上に広げないことを旨として進められてきた。それが破綻を招いている。

第3に、にもかかわらず菅政権がそれを抜本的に方向転換できないのは、安倍政権以来のその大間違いを犯してきた責任が、安倍~今井直哉補佐官だけでなく、それを実務面で支え実行した菅官房長官~和泉洋人補佐官~(不倫相手の)大坪寛子=厚労省官房審議官のラインにもあって、菅はそれをそのまま引き継いでいるからである。大坪は、ダイヤモンド・プリンセス号の時に真っ先に乗り込んで陣頭指揮をとった現場責任者で、岩田医師の告発の直接対象であるけれども、今なお和泉補佐官とベタベタの関係で官邸に頻繁に出入りしている。週刊誌でこれほどあからさまに薄汚い関係が暴かれたカップルが依然としてコロナ対策の実権中枢にあり、それを首相がどうすることも出来ずに頼っているということが政権を覆う「気の緩み」の象徴である。

第4に、以上に加えて、菅が二階俊博幹事長に頭が上がらず、GoToトラベル、国土強靭化など二階好みの景気振興策を優先せざるを得ないという政権内の決定的な力関係がある。コロナ対策と経済対策の両輪というのはほとんど冗談で、コロナはイノチの問題で経済はカネの問題。イノチがなければカネを溜めても意味はないのだから、何より肝心なのはイノチを守ることである。ところが菅は、このイノチとカネを「両立」させるとか言って結果的にカネ優先に走っている。そうならざるを得ないのは、政権プロモーターの二階俊博幹事長が旅行業協会会長であるからである。

このような政策ベースを根本的に転換するのでなければ、緊急事態宣言を何度延長しても、事態は改善しない。

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迫りくるいくつもの期限

《2月28日》

2月28日もしくは3月7日の「緊急事態宣言」再延長。2月7日の延長の際にどれほどの追加措置を発動し、それがどれほどの効果を上げたかによるけれども、再延長となると支持率急落は免れない。

《3月11日》

3.11東日本大震災/福島第一原発事故から10周年。安倍は原発事故は「アンダー・コントロール」と世紀の嘘をついて東京五輪を誘致した。ところが汚染水はどんどん増え続けていて、もはやタンク貯蔵も限界に達しつつある。トリチウム混じりの汚染水を海に放出するというのが政府方針だが、それは福島漁民の許容するところではなく、これには出口がない。これに加えて、1月31日、4号機のすぐ横の作業用建屋2棟の地下に投入されたゼオライト土嚢が劣化して超高濃度の放射線量を持つ物質が流れ出しているという新たな困難が明るみに出た。これを取り除く方法は見つかっていない。福島原発が「アウト・オブ・コントロール」に陥っていることを示すこれらの問題は、五輪を控えて内外のメディアで改めて取り上げられ、安倍と菅の嘘が改めて浮き彫りとなる。

《3月25日》

聖火リレーが福島からスタートする。菅政権としては、東京五輪は必ず行われるという“希望的観測”を掲げ続けなければならないので、何が何でも聖火リレーを出発させるだろうが、おそらくそれまでに緊急事態宣言は解除されておらず、派手なイベントや沿道での応援もなしの無観客で行われる公算が大きい。7月23日開会式までの121日間、テレビはひたすら中継を続け、それを観て国民はますます意気消沈していくのではないか。かといってリレーを中止すれば、その時点で政権は命脈が尽きる。

《4月25日》

参院長野選挙区補欠選挙。コロナで亡くなった羽田雄一郎=元国土交通相の後を弟の羽田次郎が襲う。羽田孜=元首相以来「羽田王国」と呼ばれる長野であるし、前回19年の選挙では雄一郎は共産・社民の支持も得て51.2万票を得て自民党の小松裕に14.5万票差をつけて当選しているので、同じ小松を相手に次郎が負けることはまずない。同時に行われるはずだった衆院北海道2区補選は、タマゴ汚職の吉川貴盛=元農相の辞職によるもので、自民党は負けるに決まっているので立候補を見送り不戦敗に逃げた。もう1つ、巨額買収事件で1月21日に東京地裁で有罪判決を受けた河合案里=参議院議員が3月15日までに辞職した場合は、やはり4月25日に補選となる。広島県は7つの衆院選挙区のうち6つを自民党が抑える圧倒的保守地盤なので負けることはないだろうが、河井夫妻の無茶苦茶の後では何が起きるか分からない。

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選挙は負け続け

菅は今年に入って選挙に負け続けで、大きな選挙では1つとして勝てていない。

  1. 1月17日の沖縄県宮古島市長選では、現職の下地敏彦を自公で担いで「オール沖縄」の座喜味一幸に破れた。下地は玉城デニー知事に逆らう県下7人の保守市長が作る「チーム沖縄」のリーダーであっただけに自民に痛手である。
  2. 1月24日の山形県知事選でも、自公が推した大内理加=元県議がオール野党の現職=吉村美栄子に40万票vs17万票とう大差で敗れた。
  3. この後、3月21日には千葉県知事選があり、千葉市長を3期務めて実績も人気もある熊谷俊人が立憲民主などの支持で出馬するのに対し、自民は関政幸=県議を立てるが、まず勝ち目はない。

そうすると、1月以来負け続けた挙句、4月25日に長野と北海道2区の2つの負けがダメ押し的に重なることになり、「菅では選挙は戦えない」という評価が確定、菅降ろしが露骨に始まることになろう。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年2月1日号より一部抜粋・文中敬称略)

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