「伝えたいことがあるのだけれど、言葉がなかなか出てこない」。大人になった今となっては思い出すのも難しいことですが、幼い頃には誰もがこんな経験をしているものです。もしも我が子がそんな歯痒い思いをしているとしたら、どう接するのが正答なのでしょうか。今回の無料メルマガ『子どもが育つ“父親術”』では、親が取るべき適切な対応を具体例を上げつつレクチャーしています。
親子の会話は一方通行
自分の言いたいことをうまく伝えられる言葉が見つからない…。そんな経験は、誰にでもあるものだと思います。“ことば”や“コミュニケーション”を習得途上の子どもたちであれば尚更です。毎日のようにそんな経験をしていることは想像に難くありません。
その一方で、子どもは大人の言うことを意外と理解しているもの(知らない単語があったり、詳細の意味までは分からなくても、大まかな主旨はつかんでいることが多いです)。子どもによって個人差が大きいですが、だいたい5~7歳くらいまでの子どもには、こういった会話のギャップ、一方通行状態が常時発生しています。
しかし、子どもが安心して伸びていくためには(親の話が分かることも大切ですが、それ以上に)自分の話を聞いてもらえて、理解を示してもらえて、認めてもらうことがとても重要で、欠かすことができません。
子どもが置かれたこの状況を、まずはよく理解してあげてください。
- 親の言うことは、だいたい分かる
- 自分の思っていることも言いたい、分かってもらいたい
- でも、うまく言えない、分かってもらえない
この困難な状況そのものは、この時期の子どもには自然なことなので憂う必要はありません。もしかしたらこの状況へのフラストレーションは、子どもが言葉を身につけるための大きな原動力にさえなっているのかも知れません。
親としてやってあげるべきことは2つ。
- 子どもがそういう状況にいることを気に留めておく
- そういう状況にある子どもに、適切な対応を取る
まず1.ですが、気に留めるだけでも良いのですが、私は意識して子どもに伝えるようにしています。
「○○(←子どもの名前)は、パパの言うことはいつもよく聞いて、分かってくれているよね。パパはそのこと、よく知っているよ」
「でも、○○が言いたいことをパパが分かっていないってこと、いっぱいあるだろう?」
「パパ、できるだけ分かろうと思っているよ。パパは○○が考えていることにとても興味があるからね」
「分かってあげられない時もあると思うけど、ゆっくり教えてね」
例によって、保育園に送る自転車の上で、ふと思い出した時(月に1回あるかないか程度ですが)に伝えています。
2.でいう“適切な対応”とは、具体的には
- うまく言いたいことが言えずウズウズしている時には、急かさず、遮らず、じっと聞き続けてあげる
- 言っていることが意味不明でも、一旦受け止めてあげる
→「分からない」「ちゃんと説明してよ」など言わず、子どもの話をただ繰り返すだけで充分です。「×××××××、なんだねー」 - 何度も言い直しているうちに子どもが挫けそうになったら、励ましてあげる
→「何度も説明してもらっているのに、分からなくてごめんね。パパは、○○の話にとても興味があるんだ。きっと理解できると思うから、もう1回ゆっくり話してみてくれるかい?」
自分の考えを言える、言おうという気になれる、というスキル・性質は、この幼少期の困難な状況を乗り越えて身に付くものでは、と私は考えています。
親や周囲の大人が気長に待ってあげられなかったり、辛抱強く聞いてあげられなかったりすると、子どもは「自分の考えを人前で言うのは苦手」と思うようになってしまうのでは、とも懸念しています。
そして最も悲しいケースは、自分の考えが“浮かぶ”こと自体に封をしてしまう──自分の考えが“ない”人間になってしまうこと。それはちょっと飛躍しすぎかも知れませんが、子どもが聞いてもらうことを必要としていることは間違いありません。
普段から愛情を感じて育っている子どもなら、1日に20分(これも個人差が大きいですが)もしっかり聞き込んであげれば一旦は満足するもの。毎日20分。ぜひ、子どものために使ってあげてください。
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