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日本の学校がつまらない「2つの理由」に潜む新しいビジネスチャンス

何の役に立つのかわからずに受けている学校の授業がつまらなく感じるのは無理もありませんが、もっと学びたいと進んだはずの大学でも講義がつまらないと感じる人は多くいます。その理由を受け身であり、具体的な課題が提示されないためと説明するのは、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さん。今回のメルマガ『j-fashion journal』では、人生において押し寄せてくる具体的な問題を解く力を育む「新しい教育」の可能性を探っています。

書籍と検定と教材と

1.学校の授業と読書会

読書会とは、集団で読書または読書に関するコミュニケーションを行うイベントである。読書会にはその進め方により、いくつかに分類される。

「輪読会式」は、特定のテキストを一区切りずつ読んでいく方式。「研究会式」は、特定のテキストを事前に読んだ上で指導者を中心に報告や講義を行う方式。「発表会式」は、参加者が各自自由なテキストとテーマで発表を行う方式である。

アメリカでは、ブッククラブと呼ばれる形式が多い。ブッククラブは、ある程度固定されたメンバーにより不定期にイベントが開催される。イベントの内容は、テーマとなる特定の本をメンバーが事前に読み、イベント当日にメンバー同士で自由にディスカッションするというものだ。

これらの読書会は、どれも学校の授業に似ている。授業にもいくつかの進め方がある。生徒に教科書を輪読させたり、教科書をもとに指導者が講義を行ったり、自由研究のような課題を学生が順番に発表したりする。アメリカのブッククラブは大学のゼミのような印象だ。違いは、学校の場合、授業のほかに試験があることだ。逆に言えば、読書会で試験を行えば、ほぼ授業に等しくなる。

2.インプット、考察、アウトプット

検定試験は、その試験が独立したものだ。通常の検定試験は、最初に指定された教科書を勉強し、受講生が集合し、検定試験を受ける。最近のデジタルな検定試験では、いきなり演習問題を解いて、解答と解説を読み、何度も演習を繰り返し、その後、検定試験を受けるという形式もある。

この場合は、解説が教科書になる。先に教科書を読むのか、問題を解いてから教科書を読むか、という順番の違いはあっても、勉強する→試験を受ける→分からなかった問題を再度解いてみる、という繰り返しが基本になる。

世の中には書籍は沢山ある。どんな書籍でも読書会はできる。ということは、どんな書籍でも検定試験が成立するということだ。そして、教科書と試験があれば、教育ができるということでもある。教科書は印刷媒体でなくてもいい。電子書籍でもいいし、動画でもいい。動画で出題し、それに答える。回答後、解説動画を見る。その後、再び出題し、正解するまでこれを繰り返す。

これは実技にも使える。例えば、チャーハンの作り方を動画で見る。そして、自分でチャーハンを作る。その様子を撮影し、自分でその動画を確認する。チェックシートを与え、自分で採点してもいいだろう。そして、再び、手本となる動画を見る。改善点を書き出し、再び、自分でチャーハンを作る。これを繰り返せば、確実にチャーハンを作れるようになると思う。

3.対話と具体的な問題

教育の基本は対話にあると思う。まず、先生の話を聞くか、あるいは、いきなり先生に質問される。解答すると、更に先生から質問される。その繰り返しが教育になる。対話が言葉によるものか、活字によるものか、動画によるものかの違いはあっても、インプットと考察、アウトプットと考察を繰り返すことに違いはない。

そういう意味ではゲームとも共通している。学校の授業はゲームであるとも言える。しかし、ゲームとして見ると学校の授業は面白くないのだ。なぜ、学校の授業が面白くないのか。第一に対話がない。学生は常に受け身であることを強制される。第二に具体的な課題ではなく、抽象的な問題が多い。だから、具体的なイメージが湧かないのだ。

例えば、こういう具体的なゲームを想定してみる。「あなたは夢だったカフェを開くことになりました。自分の好きな立地に自分の好きなインテリアの店を作りましょう。スタッフも必要ですね。何人雇いますか。幸いなことに銀行がお金を貸してくれるそうです。いくら借りればいいでしょうか。オープンまでにどれだけの費用が掛かるでしょう。不動産の権利金、家賃、内装費、設備費、ユニホーム費用、広告宣伝費、水道光熱費、リース費用、スタッフの人件費、自分の人件費等を計算します。そして、店がオープンしましたが、お客が来ません。なぜでしょうか。お客さんが来ない理由を考えましょう。調べてみたら、周辺の住民が少ないことが分かりました。また、人気のカフェが近所にあることも分かりました。それぞれの場合、どのような対策が考えられるでしょう」

人生では、常に具体的な問題が押し寄せてくる。それを解決するためには、知識やノウハウ、技術が必要になる。それが分かってから勉強すれば、一生懸命に取り組める。しかし、何の役に立つか分からないのでは、真剣に取り組めないのも仕方がないだろう。

4.総合的スキルに必要な編集

具体的な検定の問題を考えていると、実は共通した問題が多い。例えば、アパレルのショップ店員もアパレル企業のデザイナー、パターンナー、営業担当も、基本的なファッション用語は必要である。したがって、ファッション用語の問題は共通でもいい。

学校の授業とは、こうした汎用的な共通項を抜き出して、基本から順番に教えている。どんな仕事にも、算数は必要であり、その仕事に関係する歴史や文化も必要である。あるいは、仕事に関する用語、商品知識。お金に関する管理、時間に関する管理、コミュニケーションや人間関係等については、あらゆるビジネスに共通している。

具体的な課題は、必ずしも、大学の学問として分類されていない。そこに社会人教育のニーズがある。そもそも、日本の大学教育は、職業毎に分類されていない。つまり、カリキュラムの編集が必要なのだ。特定の職業に必要な要素を抜き出し、それを編集する。本来、教育とはそういうものだろう。アナログな講義ではそれができない。しかし、デジタルなら可能だ。

経理担当が必要なのは、経理や税務やスケジュール管理や税理士さんとのコミュニケーション、役員や社員とのコミュニケーションである。高度な会計学の講義を受けても、これらの総合的なスキルは身につかない。そこに新しい教育の可能性があり、新しい検定の需要がある。

編集後記「締めの都々逸」

「みんな集めて 教科書配り テストやらせりゃ 学校だ」

本を書く人は多いけど、それをテストとして出題する人は少ない。テストとして出題できれば、既存の本を使ってもいいわけです。学校の教育って、出題が大切だと思います。

解けない問題を出題してもいいんだよね。だって、世界の問題はほとんどが解けない。でも、解けないと思っていたことが、技術が進んで、解けるようになるかもしれません。

でも、解きたいという思いがなければ、技術が進化しても解けません。だから、設問、出題が重要なんです。出題することで、問題点が明らかになります。あとは解けばいいんです。(坂口昌章)

image by: Shutterstock.com

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