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大揺れ韓国。電撃辞任の韓国検事総長が文在寅に投げつけた爆弾

以前掲載の「文在寅の大誤算。覆された検察総長の懲戒と自身に伸びる捜査の手」等の記事でもお伝えしたとおり、自身に対して不都合な動きを取り続ける検察総長の力を削ぐことばかりに勤しんでいた文在寅大統領ですが、ここに来て検察総長が破壊力抜群の爆弾を炸裂させたようです。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、尹錫悦(ユン・ソンヨル)検察総長の電撃辞任を伝えるとともに、この辞任劇が韓国政界に与える影響について解説しています。

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尹錫悦爆弾

ついに韓国の政界に「尹錫悦爆弾」が爆発した(朝鮮日報のコラムが土台となっている)。

これまでに何度も本メルマガに登場している尹錫悦(ユン・ソンヨル)検察総長。憲法と国民の立場に立ってあくまで悪と戦う戦士である。この尹錫悦検察総長が3月4日に電撃的に辞任した。この突然の辞任は、韓国の政治地図を大きく揺さぶるだろう。本人の口からは一度も政治の「せ」の字も出ていないが、彼が電撃辞任を前にして発言してきた内容は、すべて政治宣言として受け止められている。

要約すると、まず4月のソウル市長選挙にどのような影響を及ぼすのか。第二に、野党の政党構図と政治勢力はどのように再編されるのか。第三に、来年3月に行われる大統領選の競争構図は、どのように揺れ動くのか。

尹錫悦総長が辞任を発表した日の午後、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は尹総長の辞任をすぐに収容し、宙ぶらりんの状態だったシン・ヒョンス民情首席秘書官の辞表も受理した。これらに対して文大統領の公式的な反応はなかった。いつものこと。自分に都合の悪いときは、黙って隠れているのがこの人のクセ。しかし、尹総長の辞任を1時間で受理したことは、文大統領の本音をそのまま表した格好だ。出て行くなら出て行け、俺も自分の道を行く、そういう意味だ。今年1月には、「尹錫悦総長は文政権の検察総長」とまで言っていた文だったが、それぞれの意図とは関係なく、二人は政治的に正反対の立ち位置となった。これが今後、二人の運命をどの方向に導くのか、見守ってゆきたい。もし尹総長が大統領選候補となって、大統領府への入城にまで成功すれば、尹錫悦vs文在寅という二人の関係は、さらに激しく衝突する恐れもある。

民主党の許営(ホ・ヨン)スポークスマンが論評を出した。「改革をすると言っていた尹総長の就任演説は嘘だった」と。一方、野党で保守の「国民の力」の朱豪英(チュ・ホヨン)院内代表は、「必要ならば尹総長と力を合わせる」と語った。民主党、国民の力、両者の反応は当然のことながら明らかに正反対だ。

尹総長が退く名分は論理的には、次のようになるだろう。

「これまでわたしは、検察業務を遂行しながら、政治的中立を守ってきた。しかし現政権は、検察の公正な業務遂行そのものを不可能にした。(検察の枠の)外に出て、これらを正そうと考えている」。

続いてこのような感想をもらした。

「検察として、わたしの役割はここまでです」。

検察の首長として、すなわち高級公職者としてやるべきことはここまで、という意味だ。そのため、検察の外に出て正すと述べたわけだ。まもなく本格的な政治を始めるという意味にとれる。

尹総長のコメント中に“憲法精神と法治システムが破壊されている”という部分と、“常識と正義が崩壊している”、という部分があり特に目につくが、これは誰が聞いても明白かつ断固とした「反文在寅宣言」だ。ためにこれから尹総長は自然に、反文在寅陣営を結集する中心の役割を担うことになるだろうと見られている。尹総長が辞任発表の前に、古巣大邱(テグ)高等検察所に赴き、検事らの前で「人事権者の顔色をうかがうな」と言った。つまり大統領であれ誰であれ、検察たるもの、自分を人事してくれたといってもその人の顔色をうかがってはならない、法治精神と憲法に基づいて、悪は悪として断固として裁け、という意味だ。この時から、辞任は秒読みとみられていた。

尹総長の辞任は、一次的には重大犯罪捜査庁のためだ。コンスチョの他にこんな部署まで設置されるというのは、生きた権力(つまり現政権など)を捜査してきた検察を解体し、法治システムを破壊すると考えたためだ。実際、与党と法務部がよってたかって、尹総長が1ミリも動けないようにしてしまったも同然だったのだ。これほどまでの侮辱、屈辱があろうか。尹総長は、そうした与党、法務部、青瓦台らがこぞって彼に辱めを与えるのを、がまんにがまんを重ねて耐えてきていた。重大犯罪捜査庁の案が与党から出されるに及んで、「もはやこれまで」と腹をくくったのだ。こんなもの(=重大犯罪捜査庁)までできてしまっては、検察の存在理由すらなくなってしまう。骨抜き以上の骨抜き、丸裸にされてしまうことになったわけである。

一方、辞任のタイミングが絶妙にも、いわゆる「尹錫悦防止法」を避けることができた。公職者(検察総長とか大法院長など)が選挙に出馬するためには、1年前に辞任しなければならないという内容で、与党が作成している検察庁法改正案を、無力化させることができるようになった。次の大統領選挙は来年3月9日に行われるわけだが、尹総長が辞表を出した3月4は逆算すれば1年と5日前になる。1年以内じゃないから、つまり出馬可能ということになる。

今日も、テレビ、新聞のニュースは、尹総長とLH公社の不正投機疑惑で持ち切りだ。尹総長の一挙手一投足が、話題となっている。慎重に処世してゆかねばならない。いろいろのブレーンも相当数、「わたしが尹総長を支えてゆきたい」と名乗りをあげている。尹総長が今後具体的にどういう動きをしてゆくか。非常に興味深いところだ。さしあたって、きのう、尹元総長は「LH土地投機疑惑は疑惑当事者への面接などという生ぬるい物ではなく、金の流れの部分を徹底して捜査すべき」だとコメントした。しかし、今は「元」の名の付く立場であって、検察の中にはいない。LH不正疑惑が噴出してすでに1週間も経ってしまっている。政府はこの事態を徹底して捜査しようという意志はない(ようだ)。当然だ。徹底捜査すれば、政府内部に不正投機したやつが出てくるだろうし、LH公社の元社長であるビョン・チャンフム(名前も韓国語としてもかなり変なものだ)というやつを現在の国土交通省の長官に任命したのが文在寅なのだから、文にとってはかなり都合が悪い。こういう時には、必ず「われ関せず」と知らんぷりするのが文の真骨頂。

LH公社に今日、警察(検察ではなく)が入って、青い箱に資料などを詰めて「捜査」したような演出をしているけれど、もうこの1週間のうちに、かなりの証拠隠滅がなされているはずだ。誰も、あの警察の捜査で犯人たちをひっとらえることができるなどとは、思っていない。

国が滅びてゆくんじゃないかという危機感を、朝鮮半島に住む日本人ではあるけれど、少なからず感じてしまう今日この頃だ。市民たちは怒り狂っている。

image by: 青瓦台 - Home | Facebook

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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