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死をも覚悟。台湾の特急列車脱線事故で日本人乗客が見た地獄絵図

日本でも大きく報じられた、台湾東部の花蓮県で発生した特急列車の脱線事故。多くの死傷者を出す大惨事に、台湾中が悲嘆に暮れています。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、さまざまな記事を引きつつこの事故を改めて振り返るとともに、花蓮県と日本とのつながりの深さを紹介。さらにいち早く被害者に寄り添う姿勢を明らかにするなど、いつもながらのリーダーシップを発揮する蔡英文総統の対応を「万全」と評しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年4月4日号外の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【台湾】台湾鉄道の事故の状況と、日本とのゆかり深い花蓮県

日本など80の国や国際組織が台湾の脱線事故を追悼 外交部「心からの感謝」

4月2日午前9時35分頃、台湾で悲しい事故が起こりました。日本でもリアルタイムでニュースが流れてくるので、皆さんもよくご存じでしょう。花蓮県を通る東回りの台湾鉄道「タロコ号」がトンネル内で脱線しました。乗客数496人のうち、現段階で確認されているのは死者54名、負傷者188名。そのうちアメリカ人2名とフランス人1名の死亡が確認されています。日本人の乗客は親子2名のみで、どちらも軽傷とのことです。事故当日は、清明節の連休初日で、多くの乗客は墓参りのため地元に帰る人々でした。

事故の原因は、クレーンを装備した工事用の重機が列車に衝突したことだと、台湾当局は発表しました。事故現場のトンネル付近では、斜面の安全対策工事が行われており、トンネル付近の斜面に停車していた重機が滑落してきて、列車に衝突。バランスを崩した列車は、トンネル内で脱線したということです。

脱線30分前、工事責任者が事務所に入ると…滑り出したトラックが線路脇に滑落

8輌編成の列車で、最も被害が大きかったのは、先頭のほうの車両でした。乗車していた運転手と運転訓練生も死者に含まれています。特に運転士の男性は、結婚して1年余りの新婚だったそうです。

タロコ号脱線 運転士と訓練生が死亡 死者54人に/台湾

ほかにも、乗客についての情報が次々と報じられています。死者のなかには6歳女児もいました。父と姉と3人で乗車し、女児だけが帰らぬ人となりました。父親は、意識のない状態で見つかった女児を「もう一度抱きしめていいですか」と、抱きかかえていたそうです。

台湾特急脱線、6歳女児も犠牲に 父「もう一度抱きしめても」

また、乗車していた2名の日本人についても詳細が報道さされています。以下、報道を一部引用します。

男性は2日、台湾出身の妻の先祖の墓参りのために、大学生の長女と「タロコ号」(8両編成)に乗った。連休で並びの席が買えず、男性は先頭から4両目(5号車)、長女は3両目(6号車)に座った。

 

車内で寝ていた男性はガクンという大きな衝撃で目を覚まし、足元にずり落ちた。脱線したと直感し、兵庫県で2005年4月に起きたJR宝塚線脱線事故を思い出した。断続的な車体の揺れのなか、手で頭を守りつつ、死を覚悟した。「ガンガンと階段を落ちるような衝撃だった。もし死ぬなら痛みを感じないようにして欲しいと願った」

 

停電した車内で、周囲の乗客が携帯電話のライトで所持品を探したり、脱出方法を話し合ったりし始めた。油の臭いが漂うなか、男性は「落ち着こう」と周囲に声をかけ、長女の身を案じながら車外へ出て、トンネルの出口に向かった。車内のトイレで息絶えている女性を目撃したという。

 

トンネルの外で、後から出てきた長女と合流。長女も乗客女性が亡くなった姿を見ており、男性を見て涙を流したという。

 

救急車で運ばれた病院で、男性は肋骨と足の指にひびが入っていると診断された。長女に目立った外傷はなかったが、精神的ショックから、一時的に食事ができない状態になった。

ガクンと衝撃、死を覚悟 日本人乗客が語る台湾脱線事故

事故の直接的な原因とされている重機の運転手についても続報がどんどん上がっています。重機のサイドブレーキをかけなかったことが滑落した原因ではないかという指摘に対し、運転手はサイドブレーキはかけたと主張しています。台湾のテレビカメラが、この運転手を追いかけて問い詰めていました。

衝突の工事車「サイドブレーキかけた」台湾

この「タロコ号」は、清明節で帰省する人が多く乗っていたということですが、どうやら立ち席の人も多くいたという情報もあります。また、この車両構造はJR九州の「白いかもめ・ソニック」と基本的に同じで、日立製作所が開発・製造したものだということです。

損傷が激しく身元が分からない遺体に関しては、DNA鑑定をするそうです。蔡英文総統は、すぐに負傷者のいる病院を見舞い、事故の原因究明を徹底すると言っています。

日本からは、菅総理、安倍前総理、加藤官房長官、岸防衛省、茂木外相、台湾交流協会の泉代表らが、お見舞いのメッセージを送りました。それに対して、蔡英文総統も「菅氏に『困難に遭遇するたびに台湾と日本は互いに関心を寄せ合ってきました』と両国の固い絆を強調し、安倍氏には『台湾に対する変わらぬお心遣いに感謝いたします』」と、感謝のメッセージを発信しています。

蔡総統、菅首相と安倍前首相のお見舞いに謝意=台湾の脱線事故

事故が起こった花蓮県にはタイヤル族の村があります。DNAの研究では、タイヤル族はもっとも縄文人に近いという説もあります鳥来、宜蘭、タロコと、タイヤル族の村は点在していますが、地域によって言葉が違うため、彼ら共通語は日本語です。こうした要素から、台湾原住民の中でも日本人にもっとも近い人々です。

かつて、台湾の平地と山岳の民をひとつの国体として統一したのは、日本時代の第五代台湾総督であった佐久間左馬太でした。そして今は、花蓮県は台湾を代表する観光地のひとつとなっています。

今回の事故で注目すべきは、日本を含めて80の国や国際組織の首長や要人ら600人以上から、哀悼のメッセージが届いたことです。その中には、習近平も含まれていますが、国際社会の台湾への関心の強さが分かる数字です。

一部報道では、この事故が台湾鉄道管理局の管理体制を監督する蔡政権への批判につながるのでは、との論調もありますが、私はそれはないと思います。事故後すぐに現地入りして被害者やその家族に寄り添う姿勢をアピールするなど、蔡氏側の対策も万全ですし、そもそも蔡政権の失策というわけではありません。

しっかりと原因究明をし、情報を開示して、遺族や被害者の方々への手厚い対応を怠らなければ蔡政権のダメージは小さいでしょう。今はなにより、亡くなられた方々へのご冥福を心からお祈りするとともに、被害に遭われた方に心からお見舞い申し上げたいと思います。


 


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image by: 蔡英文 - Home | Facebook

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