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高齢者がコロナ禍で「賞与なし」、1年後に年金で戻ってくるって本当?

高齢者の雇用が当たり前の時代となりましたが、そうなると気になってくるのが、働いているうちは年金が停止されることではないでしょうか。そこで、今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では、年金アドバイザーのhirokiさんが「在職者の年金停止」と、「年金停止では無くなるケース」もあることを解説しています。

賞与を貰って1年経つと停止されていた年金が復活してくる事例

60歳以降の高齢者雇用が当たり前の状況ですが、働くと年金が停止されるという事を気にされる事が多いです。特に65歳未満の在職者の人が年金停止される事が多いので、65歳以上の人はあまり気にする必要はありません。なぜ65歳前後で停止される人が多いとか少ないがわかれるのかというと、停止の基準が違うからです。

65歳未満の人は老齢厚生年金の報酬比例部分(過去の給与額に比例した年金)の月額と、働いてる最中の月給与(標準報酬月額)、そして直近1年以内に貰った賞与額を月換算した額を合計した額が28万円を超えてくると停止額がかかってきます。それに対して65歳以上の人は28万円が47万円と一気に緩和されるんです。だから、65歳以上の人は現役時代と大差ないくらい給料もらってる人じゃないと停止されない。

ちなみに老齢の年金が停止されるといっても、停止されるのは老齢厚生年金の報酬比例部分のみ(ただし、報酬比例が全額停止されたら加給年金も全額停止される)。国民年金からの老齢基礎年金や、遺族年金、障害年金などは停止されない。

なお、令和4年4月からは65歳未満の人も停止基準額が28万円から47万円に変更されるので、65歳未満の人も在職による停止がほぼかからなくなる。高齢者雇用を促進して、年金財政を支える人を増やすという目的の中で、働く意欲を削ぐような法律は改正したほうがいいからですね。とはいえ2030年で65歳未満で老齢厚生年金が貰える人は原則居なくなるので、しばらくの間の緩和という感じです。

さて、今回は在職により年金が停止されている人がいつ停止が無くなるのかという場合です。多くは4月から給与が下がったとか、月給与が下がってから4ヶ月経ったような時なんかが年金停止額が変更するタイミングではありますが、過去の賞与が関係してる事もよくあります。賞与が年金額の反映するようになったのは平成15年4月からであり、それからの改正で賞与も年金停止額に加わるようになりました。その賞与を考えてみましょう。

1.昭和30年4月8日生まれの男性(今は66歳)

(令和3年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!

絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方。

20歳になる昭和50年4月から昭和51年9月までの18ヶ月間は専門学校生だったが国民年金保険料を支払わなかった。専門学校に通ってる期間は国民年金強制加入期間なので、支払わなければ未納になる(夜間、通信、定時制なども強制だった)。なお、昭和61年4月から平成3年3月までの専門学校期間は国民年金には任意加入とされ、加入しないなら未納ではなくカラ期間になる。昼間の4年制大学は平成3年3月までは任意加入扱い。昭和51年10月からは民間企業に就職し、令和3年4月現在も厚生年金に加入中。

なお、昭和30年度生まれの男性なので62歳から厚生年金が貰えてる人ではありますが、省略して65歳からの年金額を計算します。

この厚生年金期間の平均給与は、昭和51年10月から平成15年3月までの318ヶ月間は35万円とし、平成15年4月から65歳前月の令和2年3月までの204ヶ月間は50万円とします。

(20歳から60歳前月である平成27年3月まで国民年金同時加入の期間は462ヶ月)

・65歳からの老齢厚生年金(報酬比例部分)→35万円×7.125÷1,000×318ヶ月+50万円×5.481÷1,000×204ヶ月=793,013円+559,062円=1,352,075円(月額112.672円)

・65歳からの老齢厚生年金(差額加算)→1,628円(令和3年度定額単価)×480ヶ月(上限)-780,900円(老齢基礎年金満額)÷480ヶ月×462ヶ月(20歳から60歳までの国民年金同時加入中の厚年期間)=781,440円-751,616円=29,824円(年額)

・65歳からの老齢基礎年金→780,900円(令和3年度満額)÷480ヶ月×462ヶ月=751,616円

65歳未満の生計維持してる妻が居たので配偶者加給年金390,500円も加算。

65歳からの男性の年金総額は老齢厚生年金(報酬比例部分1,352,075円+差額加算29,824円)+配偶者加給年金390,500円+老齢基礎年金751,616円=2,524,015円(月額210,334円)。

年金総額が158万円以上になってくると所得税がかかりますがここでは割愛します(税金はあんまりかからないですが、社会保険料のほうがどっちかというと年金額を低下させる要因になります^^;)。

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※ 参考

老齢基礎年金は480ヶ月の年金期間があると満額の780,900円になりますが、この男性は480ヶ月をゆうに超えてるものの満額にはならない。

老齢基礎年金は大原則として20歳から60歳までの期間を使うので、60歳以降に加入した厚生年金期間は老齢基礎年金には算入されない。

どうしても基礎年金を満額にしたいのであれば国民年金に任意加入するしかないですが、厚生年金加入中は任意加入はできない。

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さて、この男性は65歳以降も継続して働く事になり、現在の給与は40万円(標準報酬月額41万円)と、7月と12月に60万円ずつの賞与が支給されていた。この場合の年金停止額を算出する。使用する年金月額は老齢厚生年金の報酬比例部分112,672円(年額1,352,064円)

・年金停止額→{(標準報酬月額41万円+直近1年に貰った賞与を月換算した額10万円+報酬比例の年金月額112,672円)-停止基準額47万円}÷2=76,336円

つまり老齢厚生年金(報酬比例部分)112,672円-停止額76,336円=36,336円(年額436,032円)

停止額が年間916,032円かかってる状態ですね。

だから年金総額としては2,524,015円-916,032円=1,607,983円(月額133,998円)

その後、令和3年1月からコロナ禍により給与が30万円に下げられており、令和3年4月からは標準報酬月額が30万円に変更になった。さらに令和3年の賞与は支給しない方向となった。この男性の年金停止額はどう変化していくのか。

まず、令和3年4月時点で標準報酬月額が40万円から30万円に下がり、直近1年(令和2年5月から令和3年4月)に貰った賞与は120万円(60万+60万)。

・令和3年4月からの年金停止額→{(標準報酬月額30万円+直近1年に貰った賞与を月換算したもの10万円+年金月額112,672円-停止基準額47万円}÷2=21,336円(年間停止額256,032円)

年金総額としては2,524,015円-停止額256,032円=2,267,983円(月額188,998円)になる。月給与(標準報酬月額)が下がったので、かなり停止が無くなりました。でもまだ完全には停止が抜けてないですね。

次に年金額が変わるのは、令和3年7月。ここで令和2年7月に60万円貰った賞与が抜ける。よって直近1年間に貰った賞与は令和2年12月に貰った60万円のみとなる(月換算すると5万円となる)。

・令和3年7月からの年金停止額→(標準報酬月額30万円+月換算した賞与5万円+年金月額112,672円)≦停止基準額47万円なので、停止額が消える。

よって令和3年7月からは何も停止されない本来の年金2,524,015円(月額210,334円)が支給されるようになる。

賞与が無くなるのは悲しいものですが、逆に年金支給額が増えてくるとちょっと嬉しいですね。

※ 追記

65歳以降に働いた分は退職して1ヵ月経過した時、または70歳に到達した時から年金額を再計算して支給する。

なお、令和4年4月改正により、65歳以上の人は毎年9月1日を基準として8月までの期間で年金額を計算し、10月分の年金から新たな年金を支給する事になる(在職定時改定)。

image by: Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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