2021年の箱根駅伝で準優勝を遂げた創価大学を始め、計3校の連続シード権獲得に貢献し話題となった「3本指ソックス」をご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、人間工学に基づき「スリーグリップス」を開発した「メディカルヤマモト」の戦略と戦術を分析し解説。注文に生産が追いつかないという人気の秘訣を探ります。
まとめる
今号は、新発想の競技用靴下を分析します。
● メディカルヤマモトが展開している競技用靴下「スリーグリップス」
パフォーマンスを向上したいアスリートをターゲットに「“三点歩行”理論」に支えられた「運動パフォーマンスを補助してくれる」等の強みで差別化しています。
参入が容易ではないスポーツウェア業界において、着用した選手が、箱根駅伝とういう陸上界の一大イベントで結果を出したことで、注目を集めてます。
■分析のポイント
タイムを競う競技においては、結果が全てです。なので、かつて競泳では、「レーザー・レーサー」という競泳用水着を着用した選手が次々と世界記録を樹立して、ブームが起きました。結局、使用禁止になってしまいましたが…。
陸上界では、厚底シューズが話題になりましたね。やはり、好タイムを出す上で、機能性の高い商品の重要性は高いということでしょう。
今回、紹介した「スリーグリップス」も同様に機能性の高い商品と言えます。何よりも箱根駅伝という陸上界の一大イベントで結果を出したという実績は、アピール効果が絶大ですね。
今回のポイントは、「まとめる」という発想です。
5本の指の中でも、実は、人差し指と中指は、同じ作用をしているからまとめた方が、力が入りやすい。同様に、薬指と小指は同じ作用をしているから、まとめた方が力が入りやすい。このように、力を発揮するために“まとめる”という発想はいままで無かったわけですから、素晴らしい目の付け所だと思います。
足について研究していた企業はたくさんあったと思いますが、足の指一本一本の作用について、分析し、その共通点を見出した企業は無かったということでしょう。「木を見て森を見ず」とは、よく言いますが、「森を見て木を見ず」、「木を見て枝を見ず」、「枝を見て根を見ず」といったことも言えるかもしれませんね。
分析対象の構成要素をひとつひとつ見ていくということは基本ではなありますが、その基本を徹底することは容易ではないということです。ですが、そこを徹底することが、差別化につながるということを示しているのが今回の事例と言えるでしょう。
現在は、注文に生産が追いつかない状態のようですが、今後、「スリーグリップス」が、陸上界ひいてはスポーツ業界でどのような存在になっていくのか注目していきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):高機能靴下
- 競合(お客様の選択肢):既存の機能性ソックス、スポーツソックスなど
■強み
1.運動パフォーマンスを補助してくれる
- より爽快な走り心地
- より滑らかな着地感
- 力が入りやすい
- グリップ感が高い
2.靴の中で足がズレない
- シューズ内での安定感がある
- 疲労がたまりにくい
- 蒸れにくい
- 快適な足元状態を保つ
- 耐久性が高い
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
体の専門家(メディカルヤマモト)と、靴下の専門家(株式会社ウエダ)がタッグを組む事により実現
- 足の5本指を「親指=押し出し」「人差し指・中指=押し出し・蹴り出し」「薬指・小指=蹴り出し」と、人間工学的に同じ作用を持つ指をそれぞれまとめることでより大きな力を発揮できるという「三点歩行」理論に基づいて開発された。
- 足裏に導入した「シャンク(ゴムによる収縮構造)」によって、足裏の機能として重要な「アーチ形状」の保持をサポート。
上記のような、ノウハウや理論が強みを支えています。
■顧客ターゲット
- パフォーマンスを向上したいアスリート
- スポーツ愛好家
- 歩く、走る・跳ぶ、登るを楽しみたい方
◆戦術分析
「競技用靴下『スリーグリップス』」
スポーツや私生活でのあらゆる動きをサポートする、高機能靴下
- 足先が3つに分かれている「3本指」であることが大きな特徴
→同じ作用を持つ指をまとめることで、より大きな力を発揮できる - ラグビー日本代表ストッキングにも使用される、超極細ナノファイバー繊維素材を指先部に贅沢に使用
→ソフトな風合いで肌に優しい、なのに滑りにくくズレにくい - 完全国内生産
■売り値
・定価3,300円(税込)
■売り方
- クラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」にて先行販売
- 2021年の箱根駅伝で往路1位総合2位に躍進した創価大学の選手が着用
■売り場
- 楽天市場 など
※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
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