MAG2 NEWS MENU

1日100万回でも遅い。菅政権「唯一の延命策」スピード接種は実現可能か

5月7日、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の延長と対象地域拡大について会見した菅首相は、ワクチン接種のスピード加速をコロナ対策の柱として打ち出しました。以前から、早期かつスピード感を持ったワクチン接種と、広範囲な検査の必要性を訴えてきた日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんは、メルマガ『国際戦略コラム有料版』で、「やっと」と少しだけ評価。しかし、首相の言う1日100万回の接種スピードは物足りなく、その倍の200万回を達成して初めて五輪開催に国民も納得し、その後の選挙での勝利にも繋がると、それを目指した施策を強く求めています。

今こそ、コロナワクチンの「ワープスピード作戦」を

やっと、菅政権は、ワクチン接種に積極的になってきた。コロナ禍を終わらせる方向にシフトしたようである。一歩前進。しかし、次にそのスピードを加速する必要がある。

4月25日から5月11日の緊急事態宣言は、延長になり12日から5月末まで延びた。案の定、旅行業界、エンタメ業界、レジャー関連と飲食店業界は、厳しい状態が続くことになる。しかし、緊急事態宣言でも人出は減らないので、感染者数の減少は期待ができない。

世界的な移動緩和のためにはワクチン接種が必要条件になっている。企業の業績に、ワクチン接種が直結することになる。大企業には必ず産業医がいて、企業ごとにワクチンを配布することで、社員やその家族を企業施設内に集まってもらい、産業医に打ってもらうようだ。早くしないと日本が逆鎖国状態になる。企業としても早くする必要がある。

5月11日までの緊急事態宣言は延長されて、5月12日から5月31日になり、対象地域も東京、大阪、兵庫、京都に加えて愛知、福岡にも宣言が発令された。蔓延防止等重点処置は、沖縄、埼玉、千葉、神奈川、愛媛、北海道、岐阜、三重の7道県に増えている。しかし、要請が出ていた石川、茨城、徳島3県への適用を見送った。対象地域であった宮城は外れた。

今、一番気を付けるべきはインド型コロナ変異種であり、しかし、既に日本に上陸している可能性が高い。今までのコロナ変異種とは大きく違い、アジア人が持っている免疫機能をすり抜けることが分かっている。10歳未満の子供も掛かり、早い速度で重症化するようだ。英当局も、インド型「B.1.617.2」と呼ばれるコロナ変異種を「VOC(懸念すべき変異株)」に指定した。そして、今の所、ワクチンは有効としている。

このインド型コロナ変異種の登場で、状況は大きく変化した。いち早くコロナワクチンを日本人全員に接種する必要になってきた。65歳以上の高齢者だけではなく、16歳以上の全員に接種することである。菅首相も会見でそのことを言っていたので、分かっているようである。

このコラムで提案したコロナ感染症対策がやっと、菅政権で初めて実行するようになったことは良いことである。尾身会長も、PCR検査、抗原検査を無症状の人にも行う必要性があると言及した。この無症状者への検査は、このコラムでは当初から強く実施するべきと主張していたことである。

やっと、日本もまともな感染対策を打つことになったようである。そして、現在もっとも重要なのが、コロナ・ワクチンの接種スピードを上げていくことである。既にファイザー製とモデルナ製ワクチンで、日本の16歳以上全員分を供給されたという。

このため、国家総出でワープスピード作戦とでもいう作戦を行うことである。65歳以上の接種は6月末に終わり、9月末には16歳以上の国民にワクチン接種を終わらせることだ。

5日6日時点の1日当たり接種回数は、高齢者1.6万回強+医療従事者33.1万回強=合計34.8万回強で、このスピードでは全員9月末は無理だ。医師だけの注射を打つ人では足りない。

そのためには、中央政府と地方自治体が連携して、スピードを上げていくことである。歯科医師、医師、看護師を総動員して、ワクチン注射を打つ人にして、足りないなら薬剤師に研修をして注射を打つ人を増やしていくことだ。

1日200万回以上の接種にしないといけない。このため、問診を医師が行い、注射を打つ人は歯科医師や薬剤師、看護師という体制にしないと無理である。

そして、五輪を行うためには、6月末までに選手、大会関係者全員にワクチンを打てばよいだけであり、ワープスピード作戦の職域への接種の一環で行えばよいことになる。そうすれば、比較的安全な大会が開催できることになる。それしか、大会を成功させられない。これもこのコラムで、述べたことだ。

世界保健機関(WHO)で緊急事態対応部門を統括するマイケル・ライアン氏も、今夏の東京五輪の開催を望んでいると表明した。また、インド型コロナのリスクがあるので、大会形式に関する判断の多くは直前になるとしたが、この前提が選手と大会関係者のワクチン接種終了であろう。

そうすれば、五輪で、看護師を500名取り、医師も300名取っても、国民は納得するはずだ。要は、一般国民の思いより、先手を取って主導権を握る必要があるということだ。そうしないと、民心は離反するので選挙もできないし、やっても負けることになる。五輪優先ではなく、国民優先で行った結果で、五輪もできたということをアピールしてしか、国民を説得できないと思う。

首相の「現在、看護師で休まれている方もたくさんいると聞いている。そうしたことは可能だ」と述べたが、これでは国民は納得しない。ワクチン注射の打つ人を増やせとなる。しかし、国民優先の接種をした結果、選手にも大会関係者にも接種出来たなら良いはず。そして、五輪終了後、9月にでも選挙をすればよいのである。そうすれば自民党の勝利が期待できる。菅首相の続投も可能になる。

選挙後、今回のコロナ禍を反省して、早急に非常時対応の憲法改正と関連の法律を作り、周りから嫌われる覚悟で通すことだ。戦争対応ではなく、感染症対策のための憲法改正なら、野党も反対ができない。このため、立憲民主党も国民投票法の改正を認めたのである。

憲法改正の大きなチャンスになっている。そして、一度憲法改正を行えば、必要に応じて、憲法改正ができることになる。憲法9条の改定ではないことが重要である。最初は国民全員が納得して憲法改正を行うことだ。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸

津田慶治この著者の記事一覧

国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 国際戦略コラム有料版 』

【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け