消えぬトランプの亡霊。幻に終わる米国「外交的神通力」の復活

 

対中包囲網に向けた最後のピース、韓国

そして極めつけは、中国とアメリカの間で両にらみ外交をとっている日本を確実にアメリカ側に寄せるための策として、これまで微妙な姿勢を取ってきた“日本の軍事力の強化”に青信号を出したことでしょう。

トランプ政権下で、日本サイドからイージスアショアの導入をキャンセルされたことで、若干微妙な雰囲気になっていた気がしますが、再度、日米間での安全保障協力が強化される方向に進むことになります。

これまで極力米国製の軍備(戦闘機など)の購入を前面に押し出していた米国政府ですが、バイデン政権下でそのプッシュは若干弱められ、日本企業による開発にまでゴーサインが出た模様です。

「アメリカは、日米安保条約に基づき、引き続き日本の有事に対応するが、中国の軍事力の著しい圧力に直面し、即応性という観点からも日本独自のシステムを」というメッセージかと思われます。

その日米の動きを強化するのが、英・仏・独の艦隊のインド太平洋地域への派遣・駐留と安全保障政策のアジアシフトです。日米とともに、中国を安全保障上の脅威とみなして協力して対応するという触れ込みですが、欧州各国の関心は、日本や北朝鮮がある東アジアではなく、香港を含むインドシナ地区と、南太平洋海域における影響力の確保という地政学的な関心ですので、直接的には日本をはじめとする東シナ海の防衛にはつながりませんが、中国の軍事的な展開面を多様化して、集中的な対応を阻むという戦略からは、効果的な協力であると思われます(若干、「いつまで前時代的な思考なのだろうか」という違和感を持っていることは、あえて申し上げませんが)。

そしてこの対中包囲網に向けた最後のピースが韓国の“色付け”です。ワシントンで米韓首脳会談が開かれ、韓国メディアは日本との比較に明け暮れて大いに沸いていますが、この首脳会談のアメリカ側の目的は、【韓国は米中どちらサイドにつくのかをはっきり色分けさせたい】というものだったようです。

報道ではサムソンなど韓国を代表する企業による米市場への投資拡大というポイントが強調されていましたが、実際には、アメリカ側から韓国に対し、様々な要求と踏み絵が突き付けられたようです。

例えば、中国が韓国にケチをつけるきっかけになったのがTHAADの韓国への配備をめぐる綱引きですが、今回、バイデン大統領は文大統領に対して、【THAADの配備は“予定通り”行うのか否か?】と決断を迫り、同時に、北朝鮮との対話実現において韓国が果たした役割をよしとしつつ、「米朝合意を今後も堅持して対話の機会を探る」と公言することで、バイデン大統領は文大統領に対して「勝手に動き回り、あることないこと触れまわるな」と強くくぎを刺したようです。

加えて、日本への配慮の現れとして、今後、日本への攻撃は自制し、一日も早く日本との関係修復を行うようにと厳命したという話も入ってきています。ホワイトハウスの幹部曰く、「あくまでもバイデン政権にとっては、日韓は同盟国であるが、日韓は同レベルには位置しておらず、それをしっかりと韓国サイドに伝えた」ということです。

すでに国内では袋小路にはまっている文政権ですが、今後、アメリカからのプッシュに対して、どのような回答を示すのか非常に注目です。

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