消えぬトランプの亡霊。幻に終わる米国「外交的神通力」の復活

 

イスラエル―パレスチナ紛争で地に落ちたバイデン外交の信頼性

そのロシアとの関係が見事に響くのが、中東情勢におけるアメリカのプレゼンスです。

イスラエルとパレスチナの間で行われた戦争に対し、アメリカが国連安保理で、通例通りの二枚舌でイスラエル擁護に奔走したことで、バイデン政権の外交に対する信頼性は地に落ちたと思われます。

国際協調、人権外交…などを前面に打ち出しましたが、結局はダブルスタンダードを用いて、イスラエルによる人権侵害の恐れには目をつぶってしまうという矛盾をさらけ出しました。

一応、まだ残っている外交力と影響力用い、同じく人権侵害の懸念でにらみを利かせているエジプトに仲介の任を取らせ、背後で操縦することで、何とか停戦合意にこぎつけましたが、その持続性については非常にデリケートな危険な状況です。

それはなぜか?

イスラエル(ネタニエフ首相)もパレスチナ(ハマスとアッバス氏)も、今回の紛争は国内向けの道具であったという側面もありますが、一番の大きな理由は、アメリカから心が離れてしまったイスラエルを再度取り込みたいと考えるバイデン政権の思惑の存在と、悔しい思いはあるものの、トランプ大統領の力でイスラエルとアラブ諸国の融和が図られ、アラブ諸国の心をアメリカに寄せたという状況を取り戻したいとの思いが交差していることです。

対イスラエルについては、アメリカ国内の根強いイスラエル・ユダヤロビーへの配慮があり、多くの蛮行に目をつぶってきたという歴史的なトレンドがあり、国内の支持層に対して【バイデン政権はイスラエルに冷たいということはない】とアピールしたいという思惑があります。

対アラブについては、大統領就任後、トランプ前大統領への非難ばかりで、自身の政権の対アラブ社会姿勢の方向性を明らかにしてこなかったので、アラブ諸国の間で対米猜疑心が大きくなっていた矢先、今回のイスラエルとパレスチナの間の紛争が激化し、アメリカが有効な対策を取れなかったことで、反米感情の再燃が巻き起こっていることが懸念材料です。

何とかその感情を和らげたいと、ブリンケン国務長官をイスラエルとパレスチナ双方に派遣して関係改善とアメリカの変わらないコミットメントをアピールしています。

ここに横槍を入れるのが、イスラエルとアラブのスプリットを拡大したいイランとトルコ、そしてその背後にいるロシアと中国です。

これらの反米“同盟”が仕掛けてくる対米揺さぶりに対抗しようと、バイデン政権は外交上の正念場に立っています。

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