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「お座り」でも「伏せ」でもない。犬のスペシャリストが最初に「名前」を教える理由

「躾け本ではなく、飼い主さんへの教科書」を謳い、毎回犬の心理を理解するための情報を届けてくださる、ドッグビヘイバースペシャリスト(犬の心理行動学専門家)のMASUMIさん。そんなMASUMIさんは、犬を迎え入れた際、まず最初にその子の名前を認識させ、続いて「下がれ」を教えると言いますが、その理由はどこにあるのでしょうか。MASUMIさんが発行する、普通の飼い主さんが普通に犬を知ってもらうためのメルマガ『ドッグペディア・Doggies 911』では、「座れ」や「伏せ」ではなく「名前」と「下がれ」を最優先する理由を分かりやすく記しています。

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犬に教えるべきこと!座れや伏せではありません

犬を飼いました。まずあなたは、何をしますか?

名前を付けるでしょう。そして、そこから何をしますか?

家の中に連れてきて、犬に何をしますか?何を教えますか?

メルマガも129号になり、分析の仕方や犬との向き合い方をずっと書いてきていますが、これからメルマガに興味を持たれて読む方もいらっしゃるでしょう。基本の基について、お教えします。

というものも、私はクライアントさんにまず聞くことがあります。「その犬に教えていること」を教えてくださいと…。言い方は様々で「ご自分の犬ができることを教えてください」と聞く場合もあります。そうすると、100%、どの犬も「座れ」はできると答えを頂きます。そうです。100%、皆さん「座れ」は教えますよね?

ですが、恥ずかしながら、私の飼っていた犬に「座れ」ができない犬は3匹ほどいました。(笑)。うちにいる、今年道で捕獲したチワワのマナは、未だに「座れ」はできません。偶然座ってトリートを貰うことはありますが、私のコマンドではできません。

「座れ」は、まずどなたも、犬に最初の教える「コマンド」ではないでしょうか?私は犬にまず、何を教えると思いますか?「座れ」でもなければ、「伏せ」でもありません。「マテ」でもないし、「カム」でもありません。以前もよく聞かれることがありましたが、私はこれらをまず教えません。

私が最初に教えるのは、「名前」です(当たり前ですよね?)。でも、皆さん、「名前」を教えますか?ただ、ずーっと名前を呼んでいけば、犬が自分の名前を覚えちゃいますから?特別教えることなんか、しないんではないでしょうか?

私が名前を教える理由は、「こちらを意識させる」ためです。それと必要性があるからなんですよね。

私は保護をやっておりましたから、多頭で飼っている場合、新入りが入ってくると名前を先に覚えて貰わなければならないんですよ。とくに保健所あたりから迎えた犬は、過去その子が呼ばれていた名前などわかりませんから。

そもそも、名前は何の為につけますか?「呼ぶ」ためですよね?アテンションを貰う為ですよね?そうです、私は「呼ぶ」ために、私の発した音に犬がこちらに気づく…こちらを意識する、そこから始めます。

今、メルマガを読まれている方は、「うちの子が名前を呼ばれても来ない」という方、いらっしゃるかもしれません。それも、きちんと名前と意味を理解していないのかもしれませんよ。

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さて、一般の人は、私のように、何匹もの犬と生涯接することはないのかもしれませんが、私のように、数十匹の犬をコントロールするためには、(オフリードで)、犬たちが呼ばれた名前(音)に反応して、こちらに意識を向けてくれなければなりません。

20匹の犬がいたとしたら、オフリードの状態で、その中の1匹だけに注意を促したいとき?犬の固有名詞が必要になります。以前、私の家にいたマックス、ハリウッド、バンバン、レオ、ハマー、マセ、スバル、サミー、ベル…など、多くの犬が同じ空間にいた場合、名前を呼ぶことで私がどの犬に対してコミュニケーションを取ろうとしているのか?名前を呼ぶことで、犬たちも混乱しませんよね?

但し、ご存じでしょうか?この前のメルマガにも書きましたが、犬たちは「母音」に反応します。マックス、ハマー、マセ、サミー、バンバン、これらは、最初の文字の母音がすべて「あ」です。ということは、マックスを呼びつけることで、マセもハマーも、バンバンもサミーも私に意識を向けます。

でも、犬たちは「あ、俺のことじゃないんだ…」「あ、私が呼ばれているんじゃないんだ」って分かります。それは私の目線があるからです。マセに声を掛けたとき、私はマセを見ます。マセ!ということで、マックスもハマーもサミーもバンバンも私を確認はしますが、私の目線はマセに向かっている。そのことで、犬は「自分のことではない」と理解するようです。

今うちには、マセとマナがいます。どちらも「マ」で始まる名前ですから、マセを呼んだとしてもマナも反応します。語尾なんてどうでもいいんです。9月号だったかに、犬語の習得法というタイトルでしたか、音と犬については書いていますので、ここでは割愛します。

さて、今回は、私が最も大事としている「オビディエンス」についてです。私が犬に何を教えるか、その目的はなんなのか?を書きます。アメリカも日本も「オビディエンス」という言葉がありますよね?日本語でいうところの「服従」という意味です。

大抵、どのトレーナーも躾け教室も教えることは、「座れ」「伏せ」「マテ」「カム」とこの4つが基本でしょう。訓練になると、もっと上の「ヒール」(付け)や、アジリティーでは「オーバー」(飛び越えろ)など、いろんなことを犬に教えます。

でも私は先に書きましたように、「座れ」や「伏せ」は必ず教えることではありません。「座れ」や「伏せ」などは、犬のポーズに過ぎないからです。必要な犬には教えます。必要な犬とは?「興奮しやすい犬」です。興奮しやすい犬とは「パニックになる犬」もこれに当てはまります。

次に私が教えることは、「下がれ」です。「バック!」です。これ教える人はいないんではないでしょうか?私も自分で気づかないうちに、自分の犬たちにやっていたことだったんですが…。

以前からメルマガでは、「リーダーシップ」についても、「スぺース」についてもよく書いておりますが、「バック」を教えていることについて、詳しく書いたことはなかったと思います。オンラインセッションなど、実際に私がセッションをするときには、必ず飼い主さんに教えることですが…忘れておりました。

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バック!(下がれ)を教える意味とは?

そもそも、動物の世界で何かの主張をお互いにするとき、お互いは体を大ききみせて、どちらが優位であるかを競います。そして、見合って(視線で会話)間を取り合うんです。もちろん、下がった方が劣勢です。

乗馬を経験した人ならわかると思いますが、馬はまず、人間を試します。あの巨体で、人を脅します。そしてその人間のとった態度によって、馬もその人間を評価するのです。

私が犬に名前の次に、座れや伏せの前に、教えていることは「バック」(下がれ)であることを上に書きました。何の為に??優位に立つためにです。犬より人間が上であることは、絶対に必要ですからね。とくに大型犬を飼っている人であれば、絶対です。別にいままで秘密にしていたわけではなく、普通に当たり前にやっていたことだったからこそ、私も気づきませんでした。

バックナンバーで「スペース」について書いている記事がありますので、それを読んでもらうと、もっと「スペース」の重要性がわかるはずです。場所、スペースを奪えることが、動物社会においては最も重要なんです。自分のスペース、自分の場所、自分の物、自分のエサなど、自分が主張しなければ手に入らない厳しい世界が自然界です。戦ってでも奪わなければ、餌も安全な場所も手に入りません。

犬だって、子供だって、いつでも聞き分けがいいとは限りません。お菓子を見せるときは、犬はそれを貰いたいが為に人に従っているような行動を取りますが、皆さんが見えてないものがあります。犬の心理です。

皆さんが何かを人からもらうとき、頭を下げるはずなんです。「どうもありがとうございます」という心理、気持ちがあれば、それは自然に相手にスペースを与えて、お辞儀をするんです。日本の風習に限らず、アメリカ人でも何かを貰った時に、「THANK YOU!」と言いながら胸を張る人はおりません。ただ、アメリカ人の場合は、「ハグ」をしたり、相手に詰め寄ることもありますが、それはあくまでも風習であって、モノを頂いたときに偉そうな心理を持つ人はおりません。

人間の心理で考えてみましょう。あなたの目の前に、札束を持った人がいます。「座れ」と言われたらどうしますか?そのお金を欲しかったら座りますよね(ここは素直に欲しいと思うと考えてください)??あなたの見ているものは、なんですか?それを持っている人をみますか?それともお札ですか?気持ちはどっちにありますか?

ものすごくお腹が空いているときに、食べ物をチラつかせる人がいると想像してみてください。あなたに見えてるものは、「食べもの」です。それを持っている人への敬意、ありますか?食べたいから、貰いたいから従うのではないですか?

座れや伏せなど、食べものをつかって従わせたつもりでも、犬がどういう気持ち(心理)で従っているのか、考えないんですよ。多くの飼い主は。

私もお菓子でいろんなことを犬に教えます。それは「形」を教える為のものであって、犬の心理をお菓子で変化させることは致しません。「気を反らすこと」なら、お菓子でできるでしょうけど、それもその犬がどれほど、そのお菓子を欲しているのか?という欲求次第です。

私も以前はトレーナーでしたから、パピークラスも教えておりましてね。仔犬に座れや伏せを教えるためには、多くのお菓子を使いました。でも私は「ご褒美」としてのお菓子は与えません。「モチベーション」を利用するために、使うんです。このことについては、来月号に詳しく書くつもりですので、お楽しみに。

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さて、では私がどうやって「バック」(下がれ)を教えているのか?

下がらせる理由は、先にも書きましたが、私が優位に立つためですが、もう一つ。私が前に一歩出ると、犬が下がる。そこに何が起きているでしょうか?想像してください。犬の前にエサが置いてあるとします。その餌の前に私、反対側に犬がいます。犬はエサを渡したくはありません。だから犬はずっと餌を見ております。ちょうど、皆さんが犬にエサを与えるとき、床に置いてあるエサを目の前にした犬に対してマテを掛けている状態ですよ。

このとき、マテは教えていれば犬は従います。しばらく我慢すれば食べることができるわけですから、犬の心理が目の前のエサにだけ集中している状態であっても、犬はきちんとマテに従います(でもこのとき、犬はあなたのことなんて、考えていません)。いつ食べられるか!??それだけです。

さて、こういう状態のときに、私はマテを掛けません。下がらせるのです。「バック!」です。欲求の心理をコントロールするためにです。

目の前にエサがある状態、つまり「欲求」がすぐ側にあるとき、今話したように、犬には「あなた」が見えていません。↑でも説明しましたよね?札束のくだりです。犬の目の前にある欲求に近いほど、心理は動かないんです。変化しないんです。

下がらせることで、犬は「あなたを見ます」。マセ君を例にしても、目の前にエサがあればもちろん勝手に食べたりしません。私の指示をきちんと待ちますよ。でも、号令待ちをしているだけで、私のことなんか欠片も感じていないんです。この時点ではマセは、目の前のエサを「自分のもの」だと認識しています。早く、早く、号令をかけて欲しいわけですよ。

でも、下がれ!で下がらせることで、目の前の欲求(欲しているもの)から距離を置きます。そのとき、マセは何を感じるでしょうか?下がれ!と言われたマセ君は、下がります(教えていますから)。下がることで、マセ君は「え?」となりますよね?「食えないんですか?」と…。「僕のものではないんですか?」と…エサへの集中が途切れます。

つまりマセ君の期待を裏切るわけです。自分のものだと思っていた餌が、「そうじゃないの?」と考えるわけです。ということは?「それはMASUMIさんのものなの?」と考えます。ギラギラと食べたい一心で「食べてよし」のコマンドを待っていたマセ君に、「下がれ」ですからね。

下がらせることで、「所有者」を考えるということなんです。自分のものだとばかり思っていたマセ君が、「違うんだ…」と所有欲が薄れるということです。

動物同士は、「どっちの物か」という所有権を主張します。さきほどの猫と犬の動画であっても、猫がいることで、先に進めない犬、欲しい物が手に入らない犬…が映ってます。猫が主張しているからなんです。「ここは私の場所よ!」っていう所有権の主張。

何度もいいますが、動物は体でコミュニケーションをとります。自分の体を使って主張をします。おそらく、人間も言語を失えば、同じことをするはずなんです。だから、私は自分の犬たちに、自分の存在をアピールするために、「バック」(下がれ)を教えます。そして今、上に書いたように、犬の欲求に直結したものへの所有欲を下げる為に、つまり私の所有権を主張するために、下がらせるんです。

自分が前に出ることで、犬が下がる。自分が動かないことで、犬が下がる。これを常に無意識にやっているんですね。私は。(メルマガ『ドッグペディア・Doggies 911』2020年11月号より一部抜粋)

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