ドッグランで喜ぶのは飼い主だけ。犬には迷惑だと気づいて

2019.09.18
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飼い犬のしつけに悩む飼い主の救世主として、”犬の問題行動の原因は人にあり!”をモットーに、犬の気持ちを大切にした問題解決に長年取り組んできたドッグビヘイバースペシャリストのMASUMIさんが、自身のメルマガ『Doggies 911』で、飼い主のエゴでやってしまいがちな日常の行為について警鐘を鳴らされています。犬のしつけのつもりが、単なる「押しつけ」になってしまっているかもしれません。

「ドッグラン」は犬のため?飼い主のため?

オンラインセッションをしていたり、カウンセリングなどをしていると、「なぜ、こうも人間はややこしく考えるのだろうか?」と思ってしまうんですよ。もともと、人間は高等な動物だから、犬に対しても人間の考え方、人間を基準に考えてしまうんだろうけど。

例えば、よく耳にすることだけど「犬を走らせたい」っていう人。犬が走っている姿はとても優雅で楽しそうで、犬は思いっきり走ってなんぼ…? みたいに思い込んでいるんですよね。これってとっても多い。

よく考えてみて欲しいんですけど、犬に限らず、テレビとかで動物が走っている姿見ることがあると思います。チーターが獲物を襲うために走っていたり? シマウマがライオンから逃げるために走っていたり? 見たことありますよね? 動物にとって「走るということは、「目的がある中で起きる行動なんです。それは「逃げる為」だったり、「獲物を追う為」であったりするわけで、犬が「走りたい~!」って常々思っているかどうか…。

よく考えてみてください。多くの飼い主は、「走っている姿をみたいだけ」なんです。つまり、人間の欲求なの。人間の延長で考えがちな動物観…。これが大きな問題なんです。

犬の問題行動にしたって、問題にしてしまうのは人間であって、人間社会(家庭)で、自分が困る行動なだけで、犬としては当たり前な自然な行動しているだけなんですよ。人がくれば吠えるし、不審者をみれば、威嚇するし、欲求があれば吠えるし、嫌なことされたら、身を守るし、当たり前にやっている行動が、人間にとって「困る」ってことなだけで、それをなんとかしようと、トレーナーを付けたり、躾本読み漁ったり。

でも根本は人間が犬を理解していないことで、犬を悪者、おバカだと思い込み、犬をなんとか変身させようとしてしまう。すべて、人間としての延長で犬を考えるからそうなるんです。

競走馬を例にしましょうか。競馬、馬です。
馬は走るのが大好き。これ、誰がそう言い出したんでしょうか? 馬の中にも、走るのが苦手な馬、います。馬は常に走ってます? 牧場にいる馬は、いつもアホみたいに走ってます? 競走馬は「ゴール」がわかってます? 勝ち負けがわかってます? 勝ちたいと思って走ってると思いますか? もっといえば、馬は自分が勝ち得た賞金に喜んでます?

たまにいますよね、競馬が趣味の人でこういう風に、勝ちたい! と走りたがる馬がいるって言う人。じゃあ、なぜ、騎手はムチを使うんでしょうか?これって、人間側の情緒(感情)に頼った表現が用いられているだけで、人間が人間にそう納得させるために言っているだけです。実際にそういった見方は人間の論理でしかありません。

馬だって犬だって、器官も違えば進化の方向性も違います。全く違う世界に生きている動物に人間の価値観を当てはめるのは無理がある…そのことにすら、人間が気づいてないんです。競争をさせているのは、人間です。馬に乗った騎手です。

どの動物にも、我先に…っていう競争(走)本能があります。早く獲物を捕獲したいとか、早いもん勝ちで食べなきゃ生き残れない、それが自然ですからね。どんな動物にも、自然界で生きるための本能はあるんです。犬も馬も・・・。それを上手く利用したのが競馬。そして、早く走らされることを訓練されるんです。人の娯楽の為に。(別に競馬を否定しませんが)

見たことありませんか? 競馬場のスタート前で逃げ出してしまう馬。レースを棄権する馬・・・。ドッグレースにしても狩猟本能を利用して走らせるんです。走りたくて走っているのではなく走らされているってことです。

「走らされる」ことと、「自分の好きなときに、自分の走りたいペースやフォームで走る」のとでは違いますよね? 馬は重たい人間に乗られ、手綱で自由を奪われ、ときには鞭で尻を叩かれてあおられて走るわけですから。だから、競馬で逃げ出す馬もいるし、調教師や騎手を振り落とす馬もいるわけですよ。

「自分が好きで、走りたいときに自由に走る」のなら、馬も走ることが好きと、言えるでしょうが「走らされる」のは嫌いなはずですよ。目的が「人間の為」であって、馬が理解できるものではないからです。

ご存じですか? 競馬、競走馬でレースに出たくなくって仮病を使う馬もいるってこと。(これ、結構有名な話ですけどね。)犬も馬も自分のペースで気持ちよく走ることが好きなのであって、「一生懸命走る」「疲れてもなお走る」ことが好きなわけではないでしょう。

人間もそうでしょう? 走るって苦しいことです。アスリートだって、苦しみに耐え、練習して走るんです。笑顔で走っているオリンピック選手、います?? 自分と戦って、人と戦う。競技として走るんです。

馬のこと書きましたけど、犬も同じです。走りたいとき、走らなければならないときは、ほおっておいても走りますよ。でも、その走りをみたいっていう人間の情緒的な欲求の押し付けで、犬を走らせたいって言ってる人、意外に多いんです。

人間だって若いときゃ、走ります。歳とりゃ走りません。こういう些細なことですら、人間は自分の情緒で動物を解釈して、犬に余計なものを求めているんです。しかも、無意識に。

ドッグランにしても同じ。犬が行きたがるのではなく人が犬たちの遊んでいる姿を見たい』わけだし、人が犬が走ってる姿をみたい」わけです。もちろん、ドッグランが大好きな犬もいるでしょう。それが日課になっていれば、ルーティーンとして犬はドッグランのある方向に歩き出し、走り出すこともあるでしょう。気の知れた仲間がいたり、若い犬だったら遊びますからね。

でも、それも個体差があります。
大抵犬は、自分の群れ(飼われている家族)以外の奴らは、部外者とみなします。ドッグランに行けば、毎回同じ犬、しかも気の合った仲間と会える可能性は少ないですし。そりゃ、毎日毎日、日課として同じドッグランにつれていけば、同じように毎日毎日日課として来ている犬と会えるでしょう。でも、それは、日常化しているだけで、幼稚園や学校のような? 仲間意識ってものが形成されるからですよ。

毎日ドッグランに来ている犬なんていうのは、ドッグランを私物化してますから、よそ者新参者には手厳しいこともあるんです。公園デビューという言葉があるように、飼い主さんたちもほぼ面識があって、そこにいる犬たちも面識がある…そういう仮パックが出来上がってしまっているようなドッグランに新入り、新参者が入り込むには、犬だって飼い主だって緊張します。飼い主だって行きづらさを感じるし、犬だって同じです。まさに転校生ですからね。

image by: Shutterstock.com

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犬という生き物の心理を理解するための情報です。犬が分かれば犬は変わります。犬たちの思いを人間たちに伝えたい。本当の犬好きをもっと増やしたい、もっともっと幸せな犬を増やしたいという思いで書いてます。躾け本ではありません。飼い主さんへの教科書です。

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【著者】 MASUMI(ドッグ ビヘイバー スペシャリスト) 【月額】 初月無料!月額1,100円(税込) 【発行周期】 毎月 15日(年末年始を除く) 発行予定

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