なぜ大谷翔平は水原一平容疑者に全幅の信頼を置いたのか?組織の一員として海外赴任を経験したから分かること

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発覚以来日米両国のメディア報道を独占した、元通訳・水原一平氏による1,600万ドル(約24億5,000万円)にも上る巨額窃盗事件。一部では大谷選手が水原容疑者を信頼しきっていた姿勢を疑問視する声も上がりましたが、果たしてそのような「批判」は正鵠を射ていると言えるのでしょうか。今回のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』では、『生き残りのディーリング』等の著作で知られる矢口新さんが自身の海外赴任経験を交えつつ、大谷選手が水原容疑者に全幅の信頼を置いたことに何ら不思議はない理由を解説。さらにこの事件が「期せずして証明した事実」を記しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:信頼した方、裏切った方、どちらが悪い?

信頼した方、裏切った方、どちらが悪い?

昭和の流行歌では、泣かされた女がお人好し過ぎたのか、騙した男が悪いのか、というような歌詞が定番の1つだった。それは捨てられた女の、せつない恨みの歌でもあった。もっともそれは、自分の方から別れを切り出したのに、いつまでも自分に未練を抱いていて貰いたいという男の側の身勝手な願望をも反映していたように思う。想像だけに過ぎないが、自分と別れた後の女が、すぐに元気に次の男と恋に落ちることは、複雑なものだろうからだ。

そのような愛憎劇とは違うが、大谷翔平選手は、信頼していた水原一平氏に裏切られていたことが明らかになった。水原氏は追い詰められた挙げ句に魔が差したのではなく、数年にわたって継続的に大谷選手の資金を流用していた。あるいは、最初の1回は魔が差したのかも知れないが、見つからないことをいいことに流用を繰り返していたのだ。

大谷選手はお人好し過ぎた、あまりにも無防備に通訳に頼り過ぎていたという見方もあるが、そうだろうか?なぜなら、水原氏を雇ったのは大谷選手個人ではなく、日本ハムやエンジェルス、ドジャースといった会社だったからだ。私などもいくつかの会社に勤めたが、どの会社でも、会社が雇っていた人々を疑ったことは一度もない。特に海外にいた時には、多くのことを会社や会社が雇った秘書の方々に頼っていた。

組織というのは不思議な機能を持っている。もとは赤の他人の集まりに過ぎないのに、仲間となったら、時には血縁以上に信頼関係で結ばれるからだ。遠くの親戚より近くの他人とはよく言い得た言葉だが、同じ会社、同じチームの仲間は、時には近くの親戚以上に親しくなる。ましてや、海外にいてはそうだ。

海外に赴任すると、年金を含む社会保険への登録や銀行口座の開設、自動車免許の取得などが必要となる。交通違反などをしてしまうと、警察や裁判所への対応を現地の言葉で行うことになる。私などは英語圏の大学卒なのだが、それでも法律関係の文書は会社の秘書の方に確認して貰っていた。その時、自分の解釈とその人の解釈が違ったとしたら、その人の解釈に従っていた。仮に疑問に思ったとしても、他の人に確認するようなことはない。つまり、無防備に頼っていた。それが普通だ。

私などは長く生きてきたので、「騙された」というような目にもあった。とはいえ、それで人を疑うようになったようなことはない。なぜなら、圧倒的多数の人々にはよくして貰ってきたからだ。世の中には恨みより感謝の方が圧倒的に大きい。

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