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まだNYは大丈夫。在米日本人が偶然遭遇したこの街の「真の魅力」

先日掲載の「コロナ関連の規制もほぼ解除。ワクチン接種率7割に達したNYの今」等の記事で、コロナ禍を乗り越えたアメリカの様子をライブ感を持って伝え続けてくださる、NY在住の人気ブロガー・りばてぃさん。そんなりばてぃさんは先日、この街の本当の魅力を感じるとともに、文化的活動が意識している以上に我々の生活を支えていると思うに至る経験を得たといいます。今回のメルマガ『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』ではりばてぃさんが、ハドソン川に新たに建設された人工島・リトルアイランドで偶然遭遇した、とあるイベントのリハーサルの模様とそのイベントが企画された背景について紹介するとともに、そこで抱いた感情を綴っています。

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ニューヨークは復興するのかしないのか?

(1)NYの復興を考える

メルマガやYouTube動画でワクチン接種が進んだニューヨークはすっかりコロナ後の雰囲気で一気に経済再開が進んでいるとお伝えしてきましたが、果たしてこの復興モードはいつまで続くのか?企業は未だに多くがリモートワークです。中には永遠にリモートワークにした企業もありますし、もしくは、オフィス自体を一旦解約し、新たなオフィスをオープンするのは未定という企業も少なくありません。

逆に早速オフィスをオープンし従業員をオフィスに戻そうという動きも出ていますが、一方でリモートワークに慣れてしまったことでオフィスに戻りたくない社員は思いのほか多いそうで、出勤しても週2回までとか、週休3日は成り立つのか?みたいな話題が散見されます。

しまいにはオフィス勤務するくらいなら転職する人も出てまして、これについてブルームバーグが少し前に報じてましたが、実際、友人の会社でも同じ理由で転職する人がでていて人材不足に陥っているのだそうです。そうです、報道機関が一部の珍しい人たちの珍しい行動を取り上げているのではなく、本当にアメリカ人はオフィスに出るくらいなら転職するといって転職をはじめているのです。

加えて、コロナのパンデミック経験が精神的な安定や何が自分にとって幸せか、時間の使い方などなどを考えるきっかけになったようで転職する人の増加を後押ししているのだとか。

そんなわけでブルームバーグに限らず様々なメディアが関連事情を報じはじめています。

ご参考:

Employees Are Quitting Instead of Giving Up Working From Home

As The Pandemic Recedes, Millions Of Workers Are Saying ‘I Quit’

ニューヨークの話に戻りますが、オフィスに戻る従業員もいるけども転職するという人もニューヨークにもいるわけで、街を歩くと人が戻ってきた印象はあるものの、コロナ以前同様の経済的な動きがあるかというと様子見の部分もまだまだ多いのではと感じています。

特にビジネス会食や出張はまだ制限されているので個々人では復興消費が増えているけども、企業ごとではどうなのか?旅行や出張者が多かったニューヨークはこのまま戻らないのではないか?なんて心配の声は当然あるわけなのです。

実際はもう少し様子見が必要ですが、NYは復興するのかどうか考える材料になるエピソードがあったので、前置きが長くなりましたがご紹介したいと思います。

そのエピソードとは、今朝、YouTubeで公開したプロのミュージカル歌手によるディズニー映画『ヘラクレス』の名曲「Go The Distance」に関するお話。

これリハーサルのワンシーンですがリハーサルとは思えないほどの大盛り上がり。なぜそれほど盛り上がったのか?その背景を考えることでNYはまだまだ大丈夫と思えたので皆さんにもシェアしたいと思います。

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(2)ノーム・ルイスさん

ことの始まりは、ニューヨークのハドソンリバー沿いに、2億6,000万ドル、日本円で約260億円もの大金をかけて作られ、今年6月にオープンしたばかりの人口の小さな島、その名も「リトルアイランド」からはじまります。

このリトルアイランドに関する詳しい情報はまた改めてお届けしたいと思いますが、とにかくそのリトルアイランドの魅力についていろいろと調べていたところ、いかにもニューヨークらしい感動の物語を発見。

まず最初に注目したい人物は、ノーム・ルイス(Norm Lewis)さん。

ブロードウェイミュージカルの最長ロングラン記録を持つ『オペラ座の怪人』の主役である怪人役を黒人(アフリカンアメリカンともいいますね)で史上はじめて演じられたというスーパースターです。

昨年からアメリカではブラック・ライブス・マター運動など特に黒人の差別をなくそうという様々な活動も拡大していますが、それよりもずっと前から自分ができることに全力を尽くし努力を重ねて自ら黒人の地位を高めてきた素晴らしい人物です。

おそらくは恵まれた環境ではなかったはずなのに諦めることなく夢を追いかけ続けてきた…、普通に考えても、『オペラ座の怪人』の主役自体、人種など関係なくそんじょそこらの努力でなれるものではないです。それに加えて人種の壁があり、これまで白人が演じてきたことを最高と考える劇場関係者や観客支援者などはいたはずです。そういった状況で史上はじめて主人公を演じたルイスさんはとてつもない人物ですし、間違いなくミュージカル業界の最高峰の1人でしょう。

そんなノーム・ルイスさんがステージ上で生で素晴らしい感動的な歌を歌っている場面に、リトルアイランドで偶然たまたま遭遇したのです。

それもリトルアイランドの野外劇場です。で、実は、これ、ノーム・ルイスさんの歌を聞くためにリトルアイランドの劇場にいったわけではなかったんです。

このリトルアイランドには大きな劇場の他にもう1つ小さなステージと2つありまして、その日は小さなステージで行われたボサノバとタップを融合した、いかにも多様性の街ニューヨークらしい無料のショーをみにいったのです。

その様子は1時間丸々みられる動画にしているのでご興味ある人はどうぞ。観るだけでご機嫌になれる動画です。

ご参考:

Little Island NYC Sunset Sound Bossa Tap Trio, 4K Ultra HD

そんなわけでこのボッサトリオのイベントを見に行くのも兼ねてリトルアイランドに行ったのは平日でしたが、その週末に予定されていたのがノール・ルイスさんが出演するイベント。

しかもリトルアイランドの劇場ではじめて催される有料のイベントのリハーサルが偶然たまたま行われていたんです。

そこにノーム・ルイスさんもいて生歌を披露してくださったのです。

その日にリトルアイランドの野外劇場を訪れていた人なら誰でも無料でみられるようなってました。

前述したようにルイスさんは黒人として史上はじめてブロードウェイミュージカルの頂点といってもいい『オペラ座の怪人』の主役をつかみとったわけなんですが、歌ったのがディズニー映画ヘラクレスの劇中歌「Go the distance」(遠くへ)でした。

自分をヒーローとして受け入れてくれる場所を求め、どこまでも進もうというそんな前向きなメッセージがこめられた歌で、背中を押されるような勇気がわいてくる歌です。

ルイスさんが歌うということを事前にわかっていて聞きにいっても胸をうたれると思いますが、これ偶然たまたまこんなところに遭遇したら感動も驚きも何倍にもなります。

私のようにたまたま偶然遭遇した他の人たちの中には感動して涙を流していた人もいました。スタンディングオベーションは当たり前という感じ。

それに、何よりこのイベントは、コロナ禍を乗り越えたニューヨーカーの方々を勇気づけ希望を持って新しい未来を切り開いていこうというメッセージが込められた特別なイベントだったのです。

だからこのノーム・ルイスさんもそうですが、その他の方々の演目もすべてポジティブで希望があって人々を勇気づけ立ち上がらせるような曲ばかりになっていました。

で、繰り返しますが、たまたま偶然遭遇したのはリハーサル。そして一般公開していて、同じように偶然たまたま通りかかった私のような他の一般人も自由に無料でみれるようになっていたのです。

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(3)マイケル・マッケルロイさん

ところで、このイベントのメイン演者は、ブロードウェイ・インスピレーショナル・ヴォイス(Broadway Inspirational Voices)という1994年に立ち上がった演劇の団体です。

ミュージカルとゴスペルを融合した演目を得意としてまして、創業者であり代表はご自身もミュージカル俳優であるマイケル・マッケルロイさん。

友人がエイズで大変だったので、何か精神的癒しになることをしたいと考えブロードウェイ・インスピレーショナル・ヴォイスを立ち上げたそうです。

20年以上活動してきましたが、コロナで劇場は閉鎖。メンバーたちも演じられる場所を一瞬にして失い、また仕事がなくなり失業保険で暮らすなど大変な状況になったのです。

なので、そもそもこのリトルアイランドではじめて開催される有料コンサートは、本当にそんなことが実現可能かどうかまだまったく誰にもわからなかった今年1月に企画が立ち上がり進めてきたものなのです。

なのでコロナ禍を乗り越えたニューヨーカーの方々を勇気づけ、希望を持って新しい未来を切り開いていこうというメッセージが込められたものだったのです。

ちなみにマッケルロイさんはリトルアイランドのアーティストインレジデンス、要するにお抱えアーティスト。リトルアイランド自体もコロナでオープンが延期されてましたが、ステージを作るのでそこで何かをやるために雇われたというわけです。

そんなマッケルロイさんですが、20年以上代表を務めてきたブロードウェイ・インスピレーショナル・ヴォイスから抜けてミシガン州の大学でシアター専門学科の先生になることが決まりました。

今回のイベントはニューヨークの復興を祝うものでもあり、マッケルロイさんのお別れの会、新たな旅の幸せを願うものでもあったわけなのです。

そんな背景があってのノーム・ルイスさんによるGo The Distanceの熱唱。

せっかくなので最後に日本語対訳で歌詞をご紹介しますが、これがまさにニューヨークの魅力の本質ではないかと思います。

NYという街を特別なものにしているのは、この街を舞台にして活動を続ける人々、例えば、アーティストの方々、ミュージシャンの方々、様々なパフォーマーの方々、そうした方々を支える関係者の方々。

コロナ禍のような困難の中でも前を向きより多くの人々に勇気や希望、そして感動を与えてくれるそんな人々こそがニューヨークの本当の魅力だと思いました。

ちなみにこのイベントは2日間開催されましたが、2日ともラストのトリは、ミュージカル『ウィキッド』の名曲の1つ「ディファイング・グラビティ(Defying Gravity)」。

ウィキッドはオズの魔法使いのサイドストーリーと言われているお話で、主人公の魔法使いのエルファバが、顔が緑色だからという理由で、周りの人たちに相手にされない孤独な女の子。ある日、皆が尊敬する魔法使いから招待状が届いて会いに行くことになって…という物語が描かれていますが、このミュージカルが伝えているメッセージの1つには、「たとえ、周りの人たちに理解してくれなくても自分の可能性を伸ばしていけば、夢を叶えられるかもしれない」というもの。

子供たちに見せたいミュージカルですが、実際にみにいくと子供たちよりも親御さんが大感動しているシーンにでくわす大人がみても感動するミュージカルなのです。

そんなミュージカルの名曲を2日間のイベントの最後にもってきているところに、作り手の思いを感じます。

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文化が廃れるとその街は滅びる、なんて言いますが、一時は感染の震源地などと世界的にもニュースになり、実際に多くの方がニューヨークでは残念ながらお亡くなりになりました。

先が見えない、どうやって復興したらいいのか?特に劇場関係者は悩み考えていたと思います。

でも、ワクチン接種が進み、またこうやって多くの人が集まってイベントを開催することができるようになりましたし、ブロードウェイミュージカルは今年9月にその多くが再開します。そのための準備を今まさに関係者たちはしているところなのです。

そして、こうした文化的活動は私たちが意識している以上に私たちの生活を支えてくれています。

リトルアイランドで遭遇したワンシーンからだけでもいかに文化的活動が私たちにとって重要で、そしてそれを素直に感謝し応援する人たちが多いことを実感しまして、ニューヨークは廃れるどころか復活しさらに成長していくのではないかと思いました。

長くなりましたが、ミュージカル好きの方々にはもちろんですが、コロナ後のニューヨークってどうなの?と気にされる方々にとっても現地の生の雰囲気を垣間見れるお話かなと思ったのでご紹介しました。

動画:

【日本語対訳付】ヘラクレスの名曲ゴー・ザ・ディスタンス

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image by: Shutterstock.com

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ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。読んでハッピーになれるポジティブな情報や、その他ブログで書けないとっておきの情報満載のメルマガは読み応え抜群。

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