古びた外観に飾り気のないショーケース。いつ潰れてもおかしくないような佇まいにもかかわらず、地域の人々が全員ファンだと言えるほどに人気のケーキ屋さんが兵庫にあります。今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、そのお店の魅力の秘密を詳しく紹介しています。
昭和の価格で町の人に愛される、母と息子のケーキ屋さん
チーズケーキ200円。アップルパイ260円。シュークリーム110円。プリン110円。一番高いイチゴのショートケーキで270円。
すべて手づくりでありながら、いまなお、こんな低価格で販売を続けるケーキ屋さんが、兵庫県・川西市にあります。この地にお店を開いて、42年。地域の人に愛され、お客さまの足が途絶えることはありません。
しかし、失礼ながら、お店の外観は古びており、「お洒落なスイーツショップ」とは無縁。店内も、正面に飾り気のないショーケース。横に、ギフトの棚があるだけ。懐かしいとも言える、昔のスタイルが残されています。
このお店を守るのは、81歳のお母さんと58歳の息子さん。先代であるお父さんが亡くなった後、息子さんが継ぎ、現在に至っています。
一見すると、いつ潰れてもおかしくないような佇まいなのに、なぜ人気を保ち続けることができるのでしょうか。
いま、お洒落で新しく、しかも話題性もある、激安スイーツのチェーン店ができています。そんな中で、古い町のケーキ屋さんが生き残っていることは、非常に興味深いものです。
その理由を探ってみると、お客さまを想う、一途な商売人の姿がありました。
まず気になるのは、安さです。なぜ、ここまで安く提供しているのか。「子どもがお小遣いで買えるように」というのが理由です。
ケーキと言えば、特別な日に食べるものというイメージがありますが、子どもたちが普段でも食べられるようにしたかったのです。
また、毎日買いに来る大人のお客さまもいます。おやつの時間に食べるそうですが、それだけ普段使いのできる、安いお店だということです。
しかも、安いだけではなく、ボリュームがあります。ひとつひとつが大きく、まったく価格に見合っていません。息子さん曰く、「父の教えです。てんこ盛りに入ってたら、美味しいでしょ」。胸に響く言葉です。
安さなりの味ではないことは、お客さまの多さでわかります。地域の人みんながファンなのです。お客さまの中には、亡くなった父親が好きだったからと、父親の誕生日に買いに来る人もいます。お店のファンである子どもたちから、手紙が届くこともあります。
「いつも美味しいケーキをありがとう」
「やさしく話しかけてくれて、ありがとう」
「これからも元気で長生きしてね」
こうした手紙は、お店の入口に貼り出されています。
このお店が愛される理由は、まだあります。お母さんです。いつも明るく笑って、お客さまとおしゃべりします。歳を取って、お客さまとのやりとりがチグハグになることもありますが、それもお母さんの魅力となっています。
最後には、「アメちゃん、いるか?」のひと言。カゴに入れたアメを差し出すのです。定番ギャグのようになっているこの言葉で、笑いが起きます。そして、駄目押し。「大阪のオバちゃんやからな!」
お客さまは、笑顔で「ありがとう!」と言って、帰っていきます。中には、心でツッコミを入れている人もいます。
「ここは兵庫県やけどな」
これもお母さんの面白さです。
そんなお母さんと息子さんは、毎日11時間半も働き、給料もありません。つまり、生活費だけ。だから、安いケーキが販売できるのです。
息子さんは、「お金のことを考えてたら、商売はできない」と言います。
私は、商売は儲けなければいけないと思います。しかし、このお店のように、お客さまの喜ぶ顔を見たいがためだけに、頑張り続ける人たちがいることを忘れてはいけません。それも商売人の姿なのです。
本当に素晴らしいケーキ屋さんです。
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