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日本のマスコミは死んだ。忖度で大出世の中村格警察庁長官にベッタリのTV局

安倍官邸との並々ならぬ関係が取り沙汰され、権力中枢及びその周辺への忖度が噂された警察官僚・中村格氏。その中村氏が警察庁長官に就任した当日、一人の男の身柄拘束を伝えるニュースがテレビ各局で大々的に報じられました。今回のメルマガ『テレビでもラジオでも言えないわたしの本音』では著者で現役医師の和田秀樹さんが、その不可解とも言うべき逮捕劇が起きた背景について持論を展開。さらに警察官僚の「基本的な手口」をリークしながら彼らの体質を厳しく批判しています。

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中村格時代の警察とそれにベッタリのテレビ局

予想通りというか、ほとんどが中村格氏が警察庁長官になった問題は報じられなかった。日本で数少ない左翼番組とされる『サンデーモーニング』でも取り上げられることはなかった。

ただ、そのときに気づいたことはある。中村格氏が就任した9月22日に一人の男が逮捕された。3歳の幼児に熱湯をかけて殺害した容疑で母親の交際相手の23歳の男が逮捕された。

問題は殺害した日が8月の31日だったという点だ。

それまでも何回も虐待の通報があり、誰がどう見てもこの男が殺したのは明らかな事件で、わざわざ9月22日に逮捕したのはなぜか?おそらくは中村格氏の就任の記者会見をなるべくテレビが報じないようにするためだろう。実際、このニュースでもちきりになり、中村格氏のことはほとんど取り上げられなかった。

日本人というのは、その後の被害を少なくすることより処罰感情ばかりが強いから、逮捕されることでリスクが減るのに逮捕されたとたんに大報道がされる。それが日本のテレビのやり方だ。

連続で市民が危険にさらされる事件でも、その容疑のある人の顔が防犯カメラなどで映ってもテレビはそれを映さない。ところが逮捕されると鬼の首を取ったように、その男の顔がどんどん公開される。

捕まる前に公開されたほうが人々はそれから逃げやすいし、犯人情報だって集まるはずだが、それはしない。人権に配慮してというなら、逮捕されてからだって推定無罪だし、前回も書いたようにレイプなどでも3割しか起訴されない国だ。

テレビがまじめに報道しない機関だとバレたせいかニュースもネットで見る人が圧倒的に増えた。

しかし、中村格という人はそういうテレビのクズさ加減がよくわかっているようで、それに大阪府警が忖度したのか、中村氏がそのように命じたのかわからないが、泳がせている重要事件の容疑者をその日に逮捕させた。

逮捕されたら、警察勾留中は市民に悪いことはできないし、市民は安全となるが、中村氏が警察庁長官になったという一件を全国の警察官が、とくに警察の偉い人が知れば、上級市民の逮捕状をふみにじったほうが出世できることが自覚される。

伊藤惇夫という政治評論家によると、役人にとって出世がすべてだから内閣人事局はまずいそうだが、警察官僚も出世がすべてだとすればこの悪影響は計り知れない。

公文書改ざんの佐川氏はその後処分され、辞職することになったが、中村氏の場合はそのほうが出世するという話のままだ。選挙の争点にでもならない限り、警察にその文化が残ってしまう。

実際、中村格氏は就任会見で「私は数多くの捜査指揮にあたってきたが、常に法と証拠に基づき適切に判断してきたし、その姿勢を貫いてきた。法と証拠以外の他事を考慮して何らかの捜査上の判断をしたことは一度もない」と述べた。

こんな立派な会見をやるのだから、それを目立たせるために、普通なら22日に重罪の人の逮捕をして、そのニュースが目立たなくするようなことは地方の警察本部長(もちろん、警察庁の官僚で、地元で実績をあげたたたきあげは一人もいない)はしないはずだ。それが警察官僚仲間の応援というものだ。

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この事件の場合、殺してからこの男は逃亡していないのだから、逮捕はいつでもできたのだ。それをあえて、わざと就任会見の日に逮捕したというのが、それだけ中村氏の就任を世間に知らせたくないというテクニックのように思えてならないし、実際、ほとんどのテレビマスコミが報じなかったのだ。

そして、全国の警察官僚に官邸に忖度した捜査を行ったほうが出世するという印象を与えたことは確かだろう。この状況をマスコミが叩かなければ、第二第三の被害が出る。

もちろん、HANADAの執筆者たちは大喜びだ。自分たちは女性に何をやっても逮捕されないとお墨付きをもらったようなものだ。

前回も書いたように、いくら被害届を出されても警察や検察が起訴しなければ罪にならないのだ。

実際、『週刊新潮』によると、中村氏は「責任者として逮捕の可否を決裁したことは認めたが、政府当局による介入については否定した」とのことだ。

実は、私は官邸からのサジェスチョンがあったほうがよほどましだと思っている。ある人物が、性犯罪とか暴行事件を起こし(さすがに殺人だと逮捕されるだろうが)、逮捕状が地裁から発行されて、その人の名前をチェックする人が警察組織にいるということを意味するからだ。そうでないと、こんな短期間に逮捕状を取り消すことはできない。

そのチェック係がその人を検索したり、あるいは、その県で逮捕してはいけない人のリストに照らし合わせたりして、この人を逮捕するとまずいなということになれば逮捕されないことを意味する。日本には逮捕されない上級市民がいると宣言しているようなものだ。こんなことが知られたら、ウイグルもタリバンも真っ青だ。

実際、日本の警察は上級市民というか、官邸に近い人たちの犯罪には甘い。

たまたまテレビを見ていたら、ルーレット族という爆音を鳴らしながら首都高を暴走する車が後を絶たない話をしていた。これに対する警察の反応はなんとパーキングエリアを閉じることだった。そこにたむろするのを防ぐ意味だという。私も仕事が遅くなって帰宅するのでわかるが、パーキングエリアが深夜閉じられると、オシッコもいけなくなる。なんで暴走する車を現行犯で捕まえないで、一般市民を犠牲にするのか?

医療関係者が大事という話をするが、たとえば準夜勤務の看護師さんは12時半くらいに仕事が終わり、少しでも長い時間休めるように首都高を使って帰ることもあるだろう。あるいは、長距離トラックの運転手さんだってトイレくらい使いたいだろう。それをルーレット族のために塞ぐのに現行犯で捕まえない。

おそらくはルーレット族は暴走族とちがって、一部ポルシェとかフェラーリの人たちもいる。偉い人の子供とか、ストレス発散をしたい偉い人が混ざっている可能性がある。50キロどころか100キロオーバーなので、一発免許取り消しだ。こういう人を捕まえてしまうとまずいので現行犯で捕まえないで、市民を犠牲にして取り締まっているふりをしているとしか思えない。

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警察官僚が指揮する全国の交通取り締まりというのも、この原則に基づいているように思えてならない。私も比較的速い車に乗っているし深夜帰宅になるときは疲れているので、かなり飛ばすことがあるが、40年の運転歴で首都高で捕まったことはない。

ところが、福島の原発の廃炉作業の人たちのメンタルヘルスのボランティアに行く際は、常磐自動車道だと年に2回くらい80キロの道で100キロ出したくらいで捕まる。何回か免停になりかけて、ボランティアが続けられない危機にあったこともある。

実は地方の医者不足の一因になっているのは警察の取り締まりだという。地方の医者は金を使うところがないので、ついいい車を買ってしまうのだが、そういう人たちが高速で捕まって免許を奪われてしまう。地方だと免許がないと仕事ができないから泣く泣く東京に仕事を見つけるそうだ。

実際、2004年の臨床研修制度必修化の際、地方の研修医は増え、東京の研修医は2割減った。地方の医者不足が解消されるはずなのにこの警察の仕打ちと、まともな中高一貫校がないため子どもの中学受験の時期に、地方の医者が東京に移住するそうだ。

今回のコロナ禍でも地方の医者不足が表面化したが、今の警察がその真犯人と言っていい。東京の上級市民は取り締まらず、地方いじめをするのが日本の警察官僚の基本的な手口だ。そして、中村格という人間がそれを象徴する男にしか思えてならない。

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image by: yoshi0511 / Shutterstock.com

※本記事は有料メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』2021年10月2日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。10月分のすべてのメルマガが届きます。

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高齢者を専門とする精神科医、学派にとらわれない精神療法家、アンチエイジングドクター、そして映画監督として、なるべく幅広い考えをもちたい、良い加減のいい加減男。

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