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中国は尖閣諸島を4日で落とす。米軍事専門家が警告する衝撃シナリオ

先日掲載の「北京五輪の終了後が危ない。中国の台湾侵攻に備える米国、無防備な日本」等の記事でもお伝えしているとおり、もはやいつ勃発してもおかしくないとされる台湾有事。当然日本にとっても台湾に対する中国の実力行使は他人事ではなく、安全保障に直結する問題であることは言うまでもありません。そんな「東アジアの危機」に関してアメリカの軍事専門機関が発表した衝撃的なシナリオを紹介しているのは、外務省や国連機関とも繋がりを持ち、国際政治を熟知するアッズーリ氏。アッズーリ氏は今回、専門家らが具体的な数字やシナリオを示し始めた重要性を指摘するとともに、日本人に対しては台湾有事の可能性を十分理解し、領土安全保障を真剣に考える必要性を訴えています。

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中国は本当に台湾へ侵攻するのか?具体的な数字が示す東アジアの危機

中国が台湾に進攻するかどうかの議論は今に始まったものではなく、以前からあった。しかし、以前は中国の国力は米国や日本にはるか及ばず、決して大きな脅威ではなかったが、今日では中国の経済力は日本を抜き、米国に接近しようとしている。昔と今ではまるで東アジアの政治力学は全く違うのだ。

その米国さえも、今では世界の警察官ではないと自認し、それはトランプだけでなく、脱トランプを掲げ大統領に就任したバイデンでも全く同じだ。そして、日本や台湾周辺では、“中国↓ 米国↑”の軍事環境は今後いっそう進むであろう。

そのような中、今日中国と台湾との緊張はこれまでになく高まっている。最近も当局や有識者からもその声が上がっている。しかも、その声は“より具体的な数字”として示されている。これまでではほぼなかったことだ。

例えば、10月になって、トランプ政権で国家安全保障担当の大統領補佐官を務めたハーバート・マクマスター氏はハドソン研究所での講演で、中国が台湾に侵攻する可能性に言及し、来年2月の北京冬季五輪後に危険な時期に入ると述べ、米国や日本、オーストラリアなどが台湾と安全保障面での関係を強化する必要性を示した。同様に、台湾の国防当局も、中国との緊張関係がここ40年で最も高まっており、2025年までに台湾への侵略が可能になり、人民解放軍は既に台湾を侵略する能力を持っていると指摘した。

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また、3月には米インド太平洋軍のデービッドソン司令官が今後6年以内に中国が台湾に進攻する可能性があり、この地域における米中の軍事力が逆転し、中国優位の安全保障環境が予想以上に早く到来する恐れがあると指摘した。

台湾や米国を強くけん制した習近平氏

反対に、習近平氏も清朝を打倒した辛亥革命から110年を記念する式典で台湾について言及し、「台湾は純粋な中国の内政問題であり、いかなる外部からの干渉も許さない。中国人民の主権や領土を守り抜く不屈の決心や強大な能力を見くびるな」と台湾や米国を強くけん制した。

台湾国防部によると、10月初めから4日までに、中国軍の戦闘機や爆撃機149が台湾の設定する防空識別圏に侵入したとされる。6月にも中国の戦闘機など28機が台湾の防空識別圏に侵入し、台湾が実効支配する東沙諸島や台湾南部周辺を飛行したという。台湾の蔡英文政権は習政権へ強い懸念を示し、米国やオーストラリア、欧州との関係強化に努めている。

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最近でも、元フランス国防相が率いる上院議員6人とオーストラリアのアボット元首相が相次いで台湾を訪問し、政治経済的な連携を深めていくことで一致した。また、米国は1年前から密かに台湾軍を訓練していることが報じされるなど、台湾の利害関係国同士の緊張もいっそう高まっている。

一方、軍事・安全保障的に考えると、中国が台湾に進攻するのかどうかは必然的に日本の国防に直結する問題となる。なぜなら、仮に、中国が台湾へ進攻するとなれば米軍が関与することになるが、その出発点となるのは距離的に近い沖縄となる。要は、台湾有事と沖縄の安全保障と切っても切れない関係にあり、日本人は決して台湾有事を外国の問題と考えてはならない。

中国が尖閣諸島を4日以内に奪取する具体的シナリオ

そして、中国が力を高めれば高めるほど、台湾、そして日本の固有の領土である尖閣諸島でも圧力的な行動を強化してくるだろう。たとえば、米国ワシントンD.C.に拠点を置く「戦略予算評価センター(CSBA)」で研究するトシ・ヨシハラ氏は去年5月、“Dragon Against the Sun: Chinese Views of Japanese Seapower”と題する論文を公表した中で、中国が尖閣諸島を4日以内に奪取する具体的なシナリオを紹介している。トシ・ヨシハラ氏は尖閣諸島奪還までのシナリオを8つのフェーズに分ける。

  1. 日本の海上保安庁の船が尖閣海域で中国海警の船を銃撃し、その後、中国軍の護衛艦が報復として日本に攻撃をする
  2. 日中の間で軍事衝突のリスクが一気に高まる。中国軍が保有する空母などが宮古海峡を通過して日本側が追跡
  3. 日本の早期警戒機とF15戦闘機が東シナ海の上空をパトロールするが、中国軍がそれらを撃墜
  4. 緊張が拡大し、とうとう那覇空港を中国が巡航ミサイルで攻撃
  5. 日本の早期警戒機とF15戦闘機が東シナ海上空をパトロールするが中国軍の戦闘機らがそれを追撃
  6. 宮古海峡の西側で日中間で短期的かつ致命的な軍事衝突が発生
  7. 米軍はそれを観察したままで依然として介入せず。米軍が介入しないことを中国軍が理解し、米軍の偵察機が嘉手納基地に戻る
  8. 最初の衝突から4日以内に中国が尖閣諸島に上陸・奪取

当然ながら、日本側が中国側に先制的に攻撃する可能性は考えにくく、このようなシナリオになることもないだろう。しかし、重要なのはこのシナリオ以上に、専門家たちからも具体的な数字やシナリオが示され始めていることだ。

台湾には2万人あまりの日本人が生活をし、近海は日本のシーレーンとなり、台湾有事における邦人退避や安全保護なども重要な問題となる。日本は今のうちから台湾有事の可能性を十分に理解し、邦人保護やシーレーンの安全確保、そして自らの領土安全保障を真剣に考えていく必要がある。

image by: Igor Grochev / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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