検査結果は数値で出るので、とりあえずは客観的なデータであるが、それを基に個々一人一人の血圧を、正常あるいは異常と判断することはできない。血圧が160/95mmHgでも、本人が何ともなければ、正常なのである。具合の悪さが本人にしか分からない感覚の場合、これを表す客観的な数値は存在しないので、検査数値を見ても役に立たず、自分の体の声を聴くしか術はない。
頭が痛かったり、おなかが痛かったり、だるかったり、高熱が出たりすれば、具合が悪いことは自分ではわかる。この中で体温は数値として出てくるので、客観的なデータである。最近ではオキシメーターと言って、動脈血の酸素飽和度を簡単に測れる装置があるので、これも客観的な数値として出てくる。
医者はこれらの数値が異常であれば、病気だと認知してくれるが、頭が痛いんですと訴えても、CTやMRIの画像や血液検査の数値に異常がなければ、取り合ってくれないことが多い。コンピュータとにらめっこして、「おかしいですね。痛いはずはないんですけどね」などと平気で宣う医者もいる。
反対に検査の数値が異常であれば、本人に自覚症状がなくても、治療を勧める医者も多い。私は滅多に血液検査をしないけれど、5年ほど前に、偶々、血液検査を受けたところ、HDLコレステロールが基準最高値の2倍近くあり、医者にびっくりされたことがある。HDLコレステロールは所謂善玉コレステロールと言われ、少々高くても問題はないのだが、あまりにも高いものだから、精密検査を受けた方がいいと言われたが、私は別に不具合を感じてなかったので、聞き流して、それから病院には行っていない。
繰り返して言うが、検査結果を無闇に信じるより、自分の体の声を聴くことの方が大事だ。医者に話してもどんな痛みかという事を共有することはできない。痛みのクオリア(自分が感じることができる感覚のこと)は、視覚のクオリアと違って、他人と共有することができないのだ。(『池田清彦のやせ我慢日記』2021年10月22日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください)
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