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東京以外には大迷惑。長時間報道される首都圏降雪情報に潜んだ2つの問題

年も明け、仕事をスタートさせた人も多かったなかでの首都圏の大雪。首都圏に降雪があると、全国放送のニュースでも時間をかけて情報を報じていますが、これにはさまざまな議論があるようです。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、首都圏降雪報道に潜む問題を取り上げ論じています。

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首都圏降雪報道はキー局の横暴か?

毎度のことではありますが、首都圏の大雪情報に長時間を割いて報じる全国放送のニュースを巡ってはさまざまな議論が出ています。「キー局のおごり」という批判が多い一方で、「雪国マウントうざい」といった反応もあります。「関西の大雪だとこんなに大きくは扱わない」という意見も、確かにそうだと思わせるものがあります。

私なんぞは、気象災害といえば、12月末にフォリピンに上陸した台風2号の甚大な被害については、アメリカでも日本でもほとんど報じられていないのが不自然と思いますが、それはともかく、「首都圏降雪報道」についいてはどう考えたらいいのでしょうか。

これは2つの問題を含んでいると思います。

1つは、報道機関において「東京というローカル」と「全国」の問題が混同されるという点です。TV局の体制がいい例で、Eテレなど専門局以外のキー局は全国と東京ローカルを兼ねてしまっています。つまり、東京という地元という概念がハッキリ認識されて、全国レベルの問題と切り分けて語られるという習慣がないのです。

TVの場合が顕著で、民放のキー局は地方局に対して絶大な権力を行使して君臨している一方で、東京ローカルと全国の問題をしっかり切り分けて報じる体制にはなっていません。もっといえば、広域放送をしていた名残で、関東圏の東京以外では新聞は頑張っていましたが、TVなどではローカル報道の体制は脆弱です。

これからTV界は「キー局再編」「ローカル大再編」を通じて、ローカルな報道は時間をかけてネットに移行していくと思われますが、そこで改めて地方の地元に根ざした報道の質を上げていく改革がされていくのだと思います。

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2つ目は、これとは別に「東京のローカル」というコミュニティが脆弱だということです。10センチの降雪だったら、チェーン規制はどうなるべきか、商店街や町内会は歩行者の転倒防止のために除雪をどう進めるのか、組織だって対応するだけの「コミュニティ」というのがほとんど成立していないのです。

その原因は、昭和の非効率な「事務仕事」を抱えた人口が長時間労働に束縛されて、地域社会への参加が不可能な中で、地元コミュニティーは商店など自営業者という少数派が代行していて、そのグループが高齢化して動きが鈍くなっているということがると思われます。

東京での僅かな降雪が大災害になってしまう背景には、とにかく東京という地域では、コミュニティの結束と機能が脆弱となり、バラバラの孤立した個人が危険に晒されているわけです。今回の災害は、そのことも示しているように思います。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年1月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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image by: MAHATHIR MOHD YASIN / Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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