中国を巻き込め。北朝鮮が「最終手段」の核を使えぬよう日本が取るべき“行動”

 

そしてコロナのパンデミックは各国の目を内向きにさせ、欧米で高まる中国脅威論とロシアとの対峙というトレンドは、たまたまおとなしくしていた北朝鮮に対するマークのレベルを下げることになりました。

その典型例が、2021年の国連年次総会時に出されたGlobal Concernsのリストに北朝鮮問題がなく、特段、北朝鮮問題を話し合うためのad hoc委員会も開かれなかったことでしょう。実際には、ミサイル実験を行うことで、会期中に目を覚まさせることになってしまったのですが、それでもトッププライオリティではなかったように思います。

中国との微妙な距離感は常に存在しますが、北朝鮮は中国(とロシア)を後ろ盾にして、アメリカからの攻撃を阻み、外交舞台でも上手に中ロを盾にして、決定的な制裁内容を阻止し、中国やロシア、そして“同胞”韓国による安保理決議違反ともとれる“支援”を通じて、国民の窮状とは反対に、軍拡が再加速することになったようです。

その結果、気づいたときにはすでに北朝鮮は直接的に叩けない脅威になってしまいました。

従来型の近距離ミサイルのスカッドERは韓国への攻撃、ノドンは日本全土をカバーし、そして中長距離弾道ミサイルの火星シリーズはほぼ全世界を射程に収めるまでに至りました。そこに最近、極超音速ミサイルの開発途上と見られるミサイルが加わり、おまけに潜水艦からの発射(SLBM)や列車からの弾道ミサイルの発射といった“発射媒体の多角化”まで加わりました。そして、日本の防衛省や米ペンタゴンの分析では、まだ小型化が必要とはいえ、すでに核弾頭を弾道ミサイルに搭載できるレベルにまで来ているということですから、北東アジアをめぐる安全保障体制を再考する必要性に直面していると言えるでしょう。

ゆえに、北朝鮮の核問題への対応は、これまでの「核兵器を持たせない」という方針から、「いかに核を使わせないか」にシフトする必要があります。

実際に北朝鮮が核を用いるのは最後の手段となるでしょうが、核兵器の存在を盾に、今後、周辺国に対する軍事的な行動を取りかねないとの懸念が浮かび上がってきます。もし、金正恩氏及び彼の後継者が「周辺国に軍事的な挑発を行っても、アメリカは自国本土への核攻撃を懸念して反撃できない」と過信した場合、日本が位置する北東アジアは混乱に陥ります。

そして核を搭載できる極超音速ミサイル技術がある程度確立されてしまうと、現時点の米・日・韓のもつミサイル迎撃システムでは対応できませんので、一気に安全保障環境は一変します。

では具体的に何ができるでしょうか?

日本の防衛力強化はもちろんですが、北東アジア地域をカバーする新しいミサイル防衛システムの早期開発と導入や、アメリカに“核による反撃を含め、即時に対抗する”ことを明言してもらうように働きかける、そして日本独自の反撃力を持つ(敵地攻撃能力)ということも要素として考えないといけないでしょう。

現在のバイデン政権の中途半端な外交姿勢に鑑みると、アメリカによる対北朝鮮反撃の明言(核含む)は難しいでしょうし、恐らく言ったとしても、北朝鮮も、そしてその後ろ盾の中国・ロシアも本気にしないと思われます。

極超音速ミサイルに対抗できるミサイル防衛システムの構築は、アメリカも抱える大きな課題と言われていますが、可能であれば、日本もその開発に積極的にかかわる姿勢を打ち出すのは有効だと思います。

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