中国を巻き込め。北朝鮮が「最終手段」の核を使えぬよう日本が取るべき“行動”

 

問題は、アメリカがそれを受け入れるか、日本国内の世論は大丈夫か、そして実用化までの期間をどれだけ短縮できるか、でしょう。

一つ目については、菅前総理の時代にバイデン大統領から日本独自の防衛力強化を依頼されていることもあるので、その一環という打ち出し方が出来れば、共同開発の道は開かれると思われます。

二つ目については、先のイージスアショアをめぐる議論と経緯を見た際に、不安が残りますが、これは政治がどこまでの覚悟を決めて取り掛かれるのかにかかっているともいえます。

三つ目については、専門家ではないのでわかりませんが、北朝鮮が極超音速ミサイル技術を確立するまでには実戦配備できないといけないでしょう。一抹の不安が残ります。

そして、「使わせない」ために有効だと思われるのは、中国を巻き込むシナリオです。北朝鮮の後ろ盾として、国際社会における激しい非難や孤立を支えてきた経緯がありますので(実際には中国・北朝鮮とも相互に信頼はしていないようですが)、中国(とロシア)に北朝鮮を制御してもらうというものです。

中国にとっても北朝鮮の核弾頭の存在は脅威に移っていますし、数々のミサイルが中国全土を射程内に収めていることも脅威と認識されていますので、北朝鮮が暴発しないように制御するインセンティブはあると考えます。

ただし、米中対立が激化する中、習近平国家主席の中国は、北朝鮮をアメリカと対抗する際のアジアにおける最前線基地という見方をしているのも事実ですので、そう簡単には動かないとも思われます。

以前、北京の情報筋と話していた際、「北朝鮮は予測不可能であり、中国にとっても脅威だと認識するが、中国は北朝鮮の生命線をしっかりと握っており、生存のためには金一族は中国に背を向けることは不可能だ。中国が北朝鮮を見限るとき、それは北朝鮮の存在の終わりを意味することになるだろう」と言っていたのですが、その認識が広く共有されているとしたら、中国を動かすことに外交的な努力をするのも大きな一手かと思われます。

ただ、米中対立が激化する中、中国を動かして、みすみす大きな対米のための駒を弱体化させることは考えづらいですが。

ただ、先ほど触れた“極超音速ミサイル技術が確立し、かつ核弾頭を搭載できる”ようになった場合、これまで守ってくれた中国に対する北朝鮮の態度がこのまま従属的かどうかは不透明です。

以前、北朝鮮問題を話し合うストックホルム会議の場で聞かされた内容ですが、北朝鮮にとって中国は100%信用している相手ではなく、かつての金日成時代のように、いつ突然裏切ってくるかわからない相手と見なしているようです。

そして、従属関係を良しとしておらず、機会があれば中国に刃を向けることになるかもしれません。

そのことは中国もよくわかっているはずですから、北朝鮮が誰からも相手にされない中、北朝鮮の食糧と燃料などの生命線を握っているのだと考えられます。そして、中国でビジネスをしたり、中国と交渉をしたりしたことがおありになる方はよくご存知かと思いますが、受けた恩を仇で返すような振る舞いは、完全にアウトですから、その場合は中国が北朝鮮の体制転換を行い、実質的に北朝鮮を崩壊させるのかもしれません。これはあくまでも推測ですが。

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