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理解不能。無断で「高知小2水難事故グッズ」をECサイトで販売した人物の倫理観

先日掲載の「高知小2水難事故の遺族宛にDMで送られた死者を冒涜する『許し難い画像』」等の記事でもたびたびお伝えしている、高知県南国市で起きた不可解な小学生男児の死亡事故。現在も真相が明らかになっていない当案件を巡り、さらに信じられない事態が発生していました。今回のメルマガ『伝説の探偵』では現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、ネット上で展開された倫理観が疑われる許しがたい行為を紹介。さらに情報開示が困難な現状と、その解消の必要性を強く訴えています。

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インターネットの権利侵害や誹謗中傷はやり放題なのか!?

これを読むあなたが、もしも我が子を亡くし、その真相が定かではない状態で、見知らぬ人物からその件をTシャツなどのデザインで使われて販売されていたらどう思うだろうか?

2021年の10月末頃のことである。

高知県小学生水難事故のご遺族である岡林さんから、こんな相談があった。

「知らない人が、“真相究明 高知小学生水難事故”と書かれたTシャツなどを売っている」

※ 高知小学生水難事故について詳しくは、下記のリンクの記事で確認することができます。

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さて、ご遺族からすれば、見ず知らずの人物が、我が子のことを突然、Tシャツやマグカップにプリントして売り、金儲けを始めたわけである。

さすがにここまで倫理が崩壊したことをする人物がいるとは想定していなかった。

そこで、私は販売をするECサイト側の利用規約などを調べ、プロバイダ責任法についての「権利侵害に関する削除または情報開示依頼について」のページがあるため、ここからサイト側に情報開示を行うことを勧めた。

その後、この販売サイトを運営している会社に対して、発信者情報開示などの手続きをしてもらったところ、指定の販売ページは削除された。

しかし、ご遺族が行ったのは、あくまで「情報開示」であり、削除ではない。

いったい、どうなっているのであろうか。

そもそも、いわゆる誹謗中傷やインターネット上の権利侵害などについて国会でも大いに問題として取り上げられ、総務省を中心として被害側が大きく費用を投じることが多い、情報開示などの手続きの簡素化などが取り組まれていたはずである。

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情報開示よりも削除

いわゆる誹謗中傷やインターネット上の権利侵害などについての国の動きは、総務省のホームページに取り上げられているが、読み進めればわかるように「情報開示」についてはこれまでよりは少し積極的に受け取れる表現はあるものの、それよりは「削除」が強化されていく流れであることがわかる。

ところが、いわゆる誹謗中傷やインターネット上の権利侵害などは投稿する側は、キーボードを叩くだけであって指でできる極めて容易な手段であり、削除を求める側は、権利侵害などを明確に示し、プロバイダに当たる役務提供者(会社)に通報するなど、いずれにしても時間と手間をかけて手続きをする必要があるのだ。

つまり、こうした削除をやっても次から次へと削除すべき事例は発生し、いたちごっこになるわけだ。一方で、削除する側はそれなりにハードルがあって、その作業が追いつかなくなっていく。結果、被害側が泣き寝入る結果になったり、将来的な不利益を被ったり、酷く心を痛め自死に至るケースもあるわけである。

だからこそ、多くの被害者は削除よりも情報開示を求めるわけだ。情報開示により投稿者が特定されれば、裁判をすることなどもできるし直接の交渉も可能である。

安全な場所から人を傷つけていた匿名の投稿者は、自らの名前で投稿ができるほど度胸も肝も据わっていない卑怯者が大半だから、情報開示が容易にできることがわかれば、不用意に言葉をナイフにしようとはしないわけである。

ECサイトは全て代行していた

さて、前述の「高知県小学生水難事故」をプリントして金儲けをしていた人物が利用していたECサイトは、いわゆる特定電気通信役務提供者にあたるプロバイダ責任法の範疇にあることを提示しているが、このサイトを利用すると、「発送者」「販売者」はこのECサイト運営会社となり、代金収納も関連会社などで代行していることになっていた。

つまり、Tシャツなどのグッズを販売するAという個人が、グッズを販売する場合、利用するECサイトが事実上販売し、代金を回収してくれるわけだ。

一般にECサイトを個人であれ法人であれ運営する場合は、通信販売であることから、特定商取引法に基づき、販売についての基本的なことを示す必要がある。

私もヤフオクなどはよく利用するが、販売者はヤフオクではなく実際の出品者になっている。

しかし、今回のECサイトはいわゆるプロバイダと販売における責任者が同一であるが、事実上の販売者は個人の投稿者ということになるわけだ。

この仕組みを使えば、例えばあまり知られていない企業のロゴや商標のあるマークなどを勝手に販売してしまったとしても、おおよそ権利者や関係者から忠告を受けなければ、事前の検品ではじくことは難しいであろうし、仮にそうした責任問題が発生したとしても、事実上、情報開示を現状の仕組みで運用すれば、ECサイト会社の恣意的な判断で、裁判を起こさなければ、権利侵害者を特定することは不能になる。

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現状のプロバイダ責任法の限界

特定電気通信役務提供者にあたるプロバイダは、インターネット接続業者と考えればいいだろう。どこも大きな会社であるが、インターネット接続するにあたって、利用者が他人などの権利を侵害したり誹謗中傷を行うことは現実として有る問題だ。

だから、ここにはプロバイダ責任法があるわけだが、主には選挙のこととプロバイダは責任を負いませんということが書いてある。

確かに、いちいち利用者がやらかす責任を取らされていたらたまったものではないだろう。

プロバイダ責任法第4条

 

(発信者情報の開示請求等)

 

第四条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。

 

一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。

 

二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。

 

2 開示関係役務提供者は、前項の規定による開示の請求を受けたときは、当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、開示するかどうかについて当該発信者の意見を聴かなければならない。

 

3 第一項の規定により発信者情報の開示を受けた者は、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならない。

 

4 開示関係役務提供者は、第一項の規定による開示の請求に応じないことにより当該開示の請求をした者に生じた損害については、故意又は重大な過失がある場合でなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該開示関係役務提供者が当該開示の請求に係る侵害情報の発信者である場合は、この限りでない。

ここでいう2は、今回のケースでは開示関係役務提供者がECサイトとなり、発信者がTシャツなどグッズを販売していた者となるが、ECサイト側は被害者の申告と申請を受けて、発信者に「情報開示をしてもいいですか?」と尋ねることになる。

発信者が「いいえ、ダメです。」と意思表示すれば、結果、「情報開示」はできません。とSCサイト側は被害者に伝えるということになるわけだ。

もちろんそれぞれの事情などはあるが、ECサイト側が発信者の意見に逆らえば別の問題を誘発することがあるから、何かあれば裁判所に決めてもらいましょうや、ということになる。

ただし、今回のケースでは外形的には、ECサイトは販売者の表示を自らしているから、発信者と言われても仕方がないところもあろう。かなり微妙であるが、ギリギリの闇をついた運営であると言われてしまいかねない。

まあ、世の流れからして、金儲けでしっかり儲けることができれば正義なのだということなのかもしれないが。

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ちなみに

ちなみに私は、このECサイトを利用して同一の発信者の商品を注文してみた。

ところが、私が注文した翌日、特段の理由なく、注文が発信者都合でキャンセルされたのである。

簡単に金儲けができる仕組みを作るのは良いことだが、それにより被害者を容易に作り出してしまうことは「悪」である。

いわゆるプロバイダに当たる者は、自らの責任が免責されることばかりを注目するのではなく、事実として自らの責任を重く見て、被害者を作らない仕組みにしっかりと取り組むべきだろう。また、総務省はより多くの被害者の声を聴くべきであるし、情報開示の簡素化にはさらに実効的手段として取り組んでもらいたいところである。

編集後記

高知県小学生水難事故については、それにまつわる誹謗中傷が常におきています。これは、本件をよく発信する私に対しても同様のことですが、いわゆる支援者に当たる方々も攻撃対象となっています。

この問題については、年内にまとめて対処する手続きが進んでいますが、新型コロナウイルス問題などで法手続きが中断される期間があったり、そもそもでかなりの時間を要しています。

また、別の事件や事故においても被害者やご遺族などが誹謗中傷の対象となることも多く発生しておりますが、法手続き面での高額化は未だに解消されておらず、実際に手続きを打つ場合においては、その費用などが大きなハードルになっています。

こうしたことは、もうずいぶん前から問題になっているし、芸能人さんの問題でも多く取り上げていることです。国は「やります」的な発信をしていますが、いつになったら実現するのかな、期待してはいけないのかなと思えてきます。

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image by: 伝説の探偵

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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