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離婚したら年金はどうなる?必ずやるべき「年金分割」、いくら貰えるか実例検証

人生を共にする結婚ですが、熟年離婚する夫婦も増えてきました。配偶者と別れて違う人生を歩むことももはや特別なことではありません。しかし、気になるのが年金。夫婦が別れた場合、年金はどのようになってしまうのでしょうか?そこで今回は、メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんがアドバイス。「離婚時の年金分割」について詳しく解説します。

女性は家庭に専念するものという価値観が定着してしまった背景と、年金額の低下

こんばんは!年金アドバイザーのhirokiです。

いきなり年金の話とズレますが日本ってまだまだ女性は家庭、男性は外で働くという価値観が根強かったりしますよね。

この価値観が長かったので、女性の厚生年金加入期間って短い人が多いです。特に現在もう既に年金受給者になってる人の時代ですね。

厚生年金の期間が無いか、短いという事は国民年金が主の受給になるのでどうしても低年金化します。

低年金になると老後になった時に、貧困の危険性が高まります。

貧困というと自分の生活が成り立たなくなる恐れだけでなく、社会も不安定になります。

収入が少ないと消費を抑えるので、モノが売れなくなるため会社の収益が落ちて、会社はモノの値段を下げます。値段を下げないと買ってくれないから。

安いものが買えるのは消費者としては嬉しいですが、社会全体としてはあまり良い事ではないです。

収益が下がると社員の給料を減らすとか、上げないようにするため、社員が消費者としてモノを買う立場になったらモノを買わないですよね。

モノを買わないから会社は更に値段を下げてしまうから、社員の給料はまた下がってしまう。

こういうスパイラルをデフレスパイラルといいますが、バブル崩壊以降ずっとこのような事が続いたままです。

 

物価もほとんど0%前後で停滞していますが、それはモノを買わないから。物価が上がるというのは、モノに対する買いたい!という需要が多くなると物価が上がってくる。給料が上がれば気分が良くなって、モノが買いたいなあという需要が出てくるので、物価が上がり始める。

だから、賃金が上がると需要が高まるので物価が上がるという流れになる。

逆に物価が上がれば、会社の収益が上がって賃金が上がる。とはいえなかなか収入が上がらないとモノを買いたくても消費を抑えるので、なかなか物価は上がらない。

…おっと、話が飛んでしまいましたが、女性は昔の価値観のせいでどうしても年金額が低い人が多い。

そもそもいつから「男は仕事で女は家庭」という価値観が根付いたのでしょうか。

それは昭和30年の高度経済成長に入ってからですね。

この時期は日本の工業化に対応するために、多くの労働者を募り始めましたが、その労働者を確保するために会社は終身雇用や年功序列を推し進めました。

こうすると男性の雇用が安定すると共に、経済成長によって給料もキチンと上がっていったわけです。

よって既婚女性は、夫の雇用が安定してるなら「じゃあ私は、家事と育児と介護に専念しよう」という事になり、専業主婦となる女性が増えていきました。

そうすると、昭和40年代ごろから「男は仕事に専念し、女は家庭を守る」ものであるという性別役割分担が定着するようになっていきました。

ちなみに、終身雇用や年功序列というのは定年までは会社が面倒見るよ!年齢が上がったら給料も自動的に上げるよ!というものですね。バブル崩壊してからは、コストカットしないといけないのでそんな大盤振る舞いはできなくなっていきました。

お荷物社員をクビにしたり、正社員ではなく非正規雇用に置き換えていく。

よって、成果や能力主義になり、成果が出せないなら辞めてもらうという労働者の使い捨てみたいな時代になっていきました(労働者は労働基準法で簡単にはやめさせられないけど、成果が出ないと会社に居ずらくなる)。

 さて、昭和時代というのは農業のような第1次産業や、第2次産業である製造業や建設業などのような肉体労働の会社が主であり、なかなか女性が活躍できにくい産業の割合が高かったです。

しかし段々とサービス業のような第3次産業中心となっていった事で、女性が働ける仕事が増えていきました。

更に、女性の社会進出を助けたのは家事労働の負担の軽減ですね。家電製品が行き渡ってくると、家事労働というのが劇的に改善されてきます。

以前は全部手動だった洗濯も自動でやってくれるし、米も自動で炊いてくれるし、掃除機もあるし…等々家事の負担が軽減されました。

昔はそれこそ家事で一日潰れるなんて当たり前だったわけで、当時からすれば現代はとんでもないほど便利になってるわけですね。

そういうわけで、女性が働きに出やすくなっていきました。

ところがです。

昔の価値観が邪魔するんですね。

家事は今までほぼ女性がすべてやって来たので、そのままの価値観として「家事、育児、介護は女性がやるものだ」となってしまい、それらの負担が依然として女性に付きまとってるわけです。

家事はずいぶん楽にはなったとはいえ、育児とか介護の負担は凄く重いものなので、女性がいざ働くか?家事をやるか?という選択を迫られた時に、どうしてもどちらか一方を選択せざるを得ないのであります。

というわけで女性は家庭を守るものという価値観が出来上がっていったわけですが、その価値観が根強い時を生きてきた人にとっては厚生年金に加入する期間が短いかもしくは無いので年金額がどうしても低くなりますよね。

よって、年金の話に移っていきますが…年金を増やす手立ては無いのかというと、個人の力ではなかなか難しいですが、離婚した時は増やす事は出来たりします。

それは年金の離婚時分割といいます。

最後にちょっと事例で離婚分割してみましょう。

※ おしらせ
2月9日の有料メルマガでも離婚分割を発行しますが、そちらでは正式な計算事例で考えていきます。

1.昭和23年6月17日生まれのA子さん(今は73歳)

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A子さんは22歳から25歳までの3年間は厚生年金に加入して働きましたが、25歳の昭和48年6月にサラリーマンの夫と結婚し、専業主婦として家庭に入ります。

夫の生年月日は昭和21年8月です。

サラリーマンの専業主婦になると国民年金には加入する必要は無かったので、昭和61年3月までの154ヶ月間は加入せず保険料も支払っていませんでした(154ヶ月はカラ期間として年金受給資格期間に組み込む)。

昭和61年4月になるとどんな人でも必ず国民年金に加入しなければならなくなり(学生は平成3年4月から強制)、その後は60歳前月の平成20年5月までの267ヶ月間は国民年金第3号被保険者となる。

国民年金第3号被保険者はサラリーマンの夫の厚生年金保険料から、A子さんの基礎年金財源を支払うので、A子さんが個別に支払う保険料は無かった。

73歳現在に受給してるA子さんの年金は、

・老齢基礎年金→780,900円(令和3年度価満額。令和4年度は777,800円)÷480ヶ月×264ヶ月=434,376円

と、夫の配偶者加給年金から振り替えられた振替加算92,801円と、過去に3年間厚生年金に加入してた分の年額10万円の老齢厚生年金のみです。

年金総額は基礎年金434376円+振替加算92,801円+老齢厚生年金10万円=627,176円

他に令和元年10月から始まった年金生活者支援給付金→5,030円(月基準額)÷480ヶ月×264ヶ月=2,766円(年額33,192円)も受け取っています。

——
※ 注意
年金生活者支援給付金は、前年所得+前年の年金収入(遺族年金や障害年金は除く)≦781,200円(令和3年度基準額)で、非課税世帯の場合に支給される。
——

この度、婚姻期間が昭和48年6月から令和4年2月まで連れ添った夫と離婚したいと思います(婚姻期間中の夫の厚生年金期間は昭和48年6月から平成18年7月までの398ヶ月で、この期間による老齢厚生年金は130万円とします)。

夫の老齢厚生年金から最大2分の1の年金を分けてもらえると聞きましたが、分けてもらえるでしょうか。分けてもらえるならいくら分割してもらえるでしょうか?

さて、A子さんは離婚して、これからは自分自身の第3の人生を歩みたいと思っています。

以前から離婚は考えていましたが、年金額が低い事でなかなか一歩が踏み出せませんでした。

ところが年金分割を知った事で少し前向きになったようです。

年金分割できるのは婚姻期間中の厚生年金の報酬総額(厚生年金計算に使う給与や賞与を加入期間全部足したもの)のみであり、加入期間が増えるわけではありません。また、基礎年金は個人にのみ与えられる年金なので分割できません。

分割するのは婚姻期間中の報酬総額のみなのですが、簡易にするために年金額で分割したいと思います。

夫は婚姻期間中の厚年期間(昭和48年6月から平成18年7月の398ヶ月)の老齢厚生年金130万円を受給しています。他に老齢基礎年金70万円貰ってますが、基礎年金は分割対象外なのでカウントしません。

老齢厚生年金130万円の最高半分を分割するので、65万円を夫から分けてもらうという事ですね。

そうするとA子さんの年金総額は老齢基礎年金434,376円+自分の老齢厚生年金10万円+分割してもらった65万円=1,184,376円(月額98,698円)となりました。

振替加算が消えてますが、離婚分割で20年以上の期間の記録を分けてもらうと振替加算が消えてしまうので注意。年金生活者支援給付金は前年収入などの合計が781,200円を超えたので支給されなくなった。

まあそれでも年額50万円ほどアップしましたね。

なお、夫から自動的に分けてもらうのではなく、夫婦の合意が必要。

離婚分割してもらう時は夫婦の合意書や公正証書などの証明が必要であり、その合意で決めた割合で分割をする。分割は上記でも言ったように婚姻期間の報酬総額の最大半分となる(老齢厚生年金の最大50%分けてもらえる)。

※ 追記

婚姻期間中にA子さんは厚生年金期間が無ったから、単純に夫から厚生年金額を分けてもらったような形になりました。

たとえば、A子さんが婚姻期間中の記録で20万円の厚生年金が貰えて、夫のその間の年金が130万円だったらどう分けていたのでしょうか。

最大50%分けてもらうというのは厳密に言うと、夫婦の厚生年金記録を合計してその半分をお互い受給しましょうねというような意味になる。

よって、婚姻期間中の夫婦の厚生年金記録の合計20万円+130万円=150万円

150万円×50%=75万円を元夫婦で受給する事になる。

そのために夫から55万円を貰って、妻は20万円+55万円=75万円となった。夫は130万円から55万円分け与えて、75万円になった。

ちなみに50%が嫌なら、40%と分けてもいい(9割以上のほとんどの人は50%で決着しているけども…)。

40%で分けるなら、分割されるA子さんは150万円×40%=60万円となり、分割するほうの夫は150万円×(100-40)%=90万円となる。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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