誰しもが「あり得ない」と信じて疑わなかったロシアによる軍事侵攻。しかしそんな思い込みはいとも簡単に覆され、ウクライナでは深刻な人道危機が今この瞬間も続いています。我が国が同様な事態に襲われた際、国民の命は守られるのでしょうか。今回のメルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』では著者でジャーナリスト・作家として活躍中の宇田川敬介さんが、ウクライナと日本それぞれの状況を比較しシミュレーション。そこから見えてきたのは、あまりに戦争に対して無防備な日本の真の姿と、他国の侵攻を受けた際に逃げ場がないという絶望的な現実でした。
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ウクライナ情勢を見て思う「我が国は生きのこれるのか?」
まずは日本の備えをウクライナの例から比較してみよう。
2月3月と、このメールマガジンでは「第52話 緊迫するウクライナ情勢に見るロシアと中国と北朝鮮」と題して行ってきました。
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実際に、現時点でまだロシアのウクライナ侵攻は終わっていません。
この話をオンラインサロンの方と合わせてこのように文章化してみると、やはり考えなければならないと思いますのが「日本にウクライナと同じようなことがあった場合。どのようになるのか」というような心配が先に立ってしまうのです。
ウクライナのことが、とても他人事には見えないというような状況になります。
日本人の多くはそのような感覚はなく、ウクライナ侵攻に関して「他人事」「対岸の火事」としか見ていません。
その為に、ウクライナ侵攻に対するテレビのコメンテーターのコメントなども、何とも無責任なもので、驚くことばかりではないかと思います。
あのような事件に対して、日本人は根本的に「自分の所に他国が攻めてくる」というようなことを想定していることは全くないのですから、大変困ったものです。
戦争を「する」「しない」ではなく、攻めてきたらということと同じで「備える」ということを考えなければならないのではないかと思うのです。
そのような観点から考えると、今の日本はあまりにも「防衛」が出来ていないのではないかと思います。
今回の連載で、まずは今の日本がどのようになっているのか、日本の防衛を考えるということで、見ていきたいと思います。
実際に「危機」というと、日本の場合は「災害」ばかりになってしまっていて話になりません。
地震に備えるとか、津波に備えるというようなことは、様々な人が積極的に行っていますが、例えば「北朝鮮のミサイルが落ちてきた場合に備える」とか、「大規模なテロが発生した場合に自分のみを守る」というような「人為的な危機」に対する警戒が出来ていないということになります。
日本は、自然災害に関しては、様々なことが起き、なおかつ毎年のように報道されている尾で身近なものとして認識しているのではないかと思います。
また自然災害に関しては「いつ起きるかわからない」と同時に、「自分に災害の影響がある」という認識があるので、様々な意味でこれ等の災害に備えるということになります。
しかし、ロシアのウクライナ侵攻のような内容に関しては、全く備えていません。
もちろん、このようにかけば「どのように備えて良いのかわからない」などということが声が上がり、初めから、思考を停止してしまい、備えることに関して考えることすら拒否してしまうということになっているのではないでしょうか。
同時に、「攻めてくるはずがない」などというようなことをいう人も少なくありません。
北朝鮮は、今年に入ってからミサイルの発射をどれくらいしているのでしょうか。
ニュースになっているだけでも既に6回、つまり平均すれば1ヶ月に2回のペースでミサイルの実験を行っています。
その中には日本のEEZ内に落下したものもあります。
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また中国で言えば日本国の領土である尖閣諸島沖に中国の公船が連日のように侵入しています。
中国は尖閣諸島を中国の革新的利益と主張し、日本から不正に奪取しようと考えている状態です。
実際にこのような状況は、ロシアのウクライナ侵攻におけるウクライナ東部の2つの独立を表明した共和国と同じような感じになってしまいます。
もちろん、尖閣諸島には住民がいませんので、尖閣諸島の住民が独立を宣言するようなことはありませんが、しかし、ロシアが軍事力による現状変更をしたということになり、それを認めてしまえば、同様の事が起きてもおかしくありません。
そのロシアとの間には北方領土問題があり、その領土に関しては確定しているものではありません。
またロシアはウクライナ侵攻の直前に、「アイヌは先住民族である」ということを主張し始めています。
ウクライナ東部の共和国と同様に、アイヌ民族と称する人々が北海道の独立を主張し、そこにロシアがウクライナと同様に侵攻してきた場合、日本は、それに対抗できるのでしょうか。
そして、北朝鮮と同じように、中国とロシアはオホーツク海で大規模な軍事演習を行っていますし、また、ロシアは北方領土においてミサイル発射の訓練を行っております。
ウクライナ侵攻でも、ベラルーシで軍事演習を行っており、その演習期間中(実際は延長しているので、本来の演習期間は終了していましたが)に軍事進攻が始まっております。
日本も、同様の例を考えれば、オホーツク海における軍事演習時に、ロシアで言えば、アイヌ民族の独立を支持するなどとして、戦争が始まる可能性が否定できなかったということになるのではないでしょうか。
何度も攻めてくる可能性がある国(日本周辺で軍事演習をしている国)は、ロシアや中国・北朝鮮だけではありません。
韓国であっても、竹島の問題があり、また昨年まで(現在もその運動は続いていますが)「NO JAPAN」運動などを行っていたのです。
現在の韓国の国民の多くは、日本を潜在的な敵国と考えているというようなアンケート結果が発表されたこともあります。
そのように考えれば、民主主義国家とされている国や、アメリカと関係が良い国だからといって、安心できる関係にはないのです。
さて、ロシアにおけるウクライナ侵攻の特徴は、その「係争にかかる地域」のみの軍事作戦ではないということになります。
つまり、ウクライナ東部のロシア系住民がいる場所だけではなく、ウクライナ全土が戦場になっているということになります。
日本にウクライナと同じような事例が当てはまると考えた場合、当然、東京も大阪も戦場になる可能性があるということを示唆しているのです。
尖閣諸島は遠いから、竹島は海の向こう側だから、東京にいれば戦争の被害はないなどということは全く考えられないのです。
ロシアによるウクライナ侵攻に関して考えるだけで、つまり、その侵攻を例にして日本に同様の例を当てはめただけで、日本の場合は、ウクライナのように戦えるのか、国を守ることができるのかということが疑問になってくるのです。
まず、ウクライナとの共通点は、私の確認した時点で2月21日、つまり24日がロシアの侵攻開始日なので、その3日前の時点で、キエフの人々はそのほとんどが「ロシアとの戦争などありえない」「今の国際状況で攻めてくるはずがない」というようなことを言っていました。
そのほかにもキエフで聞かれたのは、「EUやアメリカが守ってくれる」などの、他国に依存するような意見ばかりでした。
実際に、現在日本において「他国が攻めて来たらどうしますか」というようなことをアンケートを取ると、この時のキエフと同じように、「日米安保条約があるからアメリカが守ってくれる」「どこかの国が攻めてくるはずがない」などというような意見がSNS上でも散見される状況です。
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日本の場合は、もっとひどく「憲法9条があるから他国が攻めてくるはずがない」などと、半分宗教的に日本国の憲法を賛美するような人がいることと、「攻めて来たら降伏すればよい」などと、主権や自由を否定する意見が存在ることではないかと思います。
要するにロシアが侵攻する3日前のキエフよりもひどい状態が日本であるというような感じではないでしょうか。
さて、もう少し当時のキエフを見直してみましょう。
2月24日になり、ロシアの侵攻が始まったという報が流れたのちに、キエフでは避難の車の列ができ、避難できない人は買い物に殺到するというような状況になります。
このような状況はコロナウイルスのロックダウンになる前の都市でよく見られた光景ですし、また、日本でも台風や雪害などの前に見られる状況です。
店の中の物が無くなるということも考えらえますし、物流が滞るということも考えられます。
いずれにせよ、避難をするか、あてのない人はキエフ市内に残り「籠る」ということを考えるということになります。
このことによってキエフ市内のいたるところで自動車が渋滞をするようになってしまいますし、また、様々なところで人があふれるということになります。
しかし、これが一変するのは3月に入ってキエフにもミサイルが飛んでくるようになってからです。
3月2日に、キエフのテレビ塔にミサイル攻撃がなされ、近くを歩いている人が犠牲になって以来、ロシアの砲撃またはミサイルによる攻撃が行われ、人々は地下に隠れるようになります。
この時、あまり地下施設がなかったので、地下鉄の駅などが避難所となっていました。
なお東部のマリウポリなどは、地下鉄も少ないので、市の中心部にある劇場が避難所となりますが、その避難所がミサイルで攻撃され300人以上の犠牲者が出るという悲劇になるのです。
さて、これも日本に当てはめてみましょう。
まず何よりも「数日間の水や食料」を家に蓄えている人は、地震などの自然災害に備えるという観点で多くの家でできているのではないかと思います。
それだけではなく、1か所のショッピングセンターに集中するのではなく、コンビニエンスストアなども多くありますし、飲み物だけならば、自動販売機も多数ありますので、それらの中を出せば、意外と飲み物などは出てくることになります。
最近では、「災害時には無料でとることができる自販機」など災害時対応の自販機も多くあるので、その点ではウクライナのような恐慌状態になるということになります。
しかし、避難するということになると、日本ほど脆弱なところはありません。
今回の件で、ウクライナから他国へ避難した人は400万人を超える人数になり、予想では1,000万人以上が避難をするという予想が報道されたりしています。
さて、日本の場合はどこに避難をするのでしょうか。
日本の場合、ウクライナのように陸上でつながっている他国はありません。
つまり、船か飛行機でどこかに避難するしかないのです。
しかし、戦争になった場合、海も空も敵に制圧されてしまっています。
そのことから、日本は逃げる場所がないということになるのです。
太平洋戦争の末期に、日本は「一億総特攻」というような標語を出して国民を鼓舞しましたが、実際に、特攻しない場合、つまり、日本国民が全て戦わない場合には、滅びるしかないのです。
国家の地理的特性を考えれば「逃げる場所がない」ということに気づかされるはずです。
自然災害の場合は、日本の国土全体が被害に遭うということはなかなか考えにくいです。
小松左京先生の小説『日本沈没』のような内容にならなければ、基本的にはあり得ないでしょう。
しかし、戦争の場合は「人為的」であるということから、その規模も人為的に設定するので、当然に日本国全体が戦場となり得るということになります。
そのように考えると、日本の場合は逃げる場所がないということになります。
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そして、一時的な避難ということになれば、それは地下ですが、例えば東京の場合、その東京の人をすべて受け入れられるだけの地下施設はあるでしょうか。
地下鉄まですべて入れても、東京の人口1,200万人を収容することはできません。
その上、千葉や埼玉神奈川などまで広げれば、その収容人数はないのです。
これは、韓国の場合、ソウル市では必ずシェルターの設置が義務付けられていて、そのシェルターの数は、ソウル市の人口の3倍あるといわれています。
韓国の場合ソウル市とその周辺地域に、韓国全体の40%の人口が集中していますから、韓国全体の人口がソウル市内のシェルターに入ることができる計算になっています。
この韓国の内容に比べて日本はいかに脆弱な事でしょうか。
このように、比較するだけで、日本は戦争に備えていないということがわかります。
上記のように、ウクライナと同様になっており、日本は外交努力によって70年以上戦争などはない状態になっていましたが、それが崩れる可能性は少なくありません。
ウクライナと比較してみてこれだけ何もできていない日本の防衛について、今回、第53話では考えてゆきたいと思います。(次号に続く。この続きをお読みになりたい方は、この機会に『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』をぜひご登録ください。初月無料です)
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