米「ロシア敵視政策」のツケ。ウクライナ紛争で中国が“世界覇権”の棚ぼた

 

地政学の祖マッキンダーはいいました。

「ハートランドを制するものは世界島(ユーラシア+アフリカ大陸)を制し、世界島を制するものは、世界を制す」

と。中国は、ハートランド・ロシアを制することで、世界島支配、世界支配に、大きく前進することになるのです。

私は、今回のように中国とロシアが引っ付く事態を非常に恐れていました。それで、私の「対ロ観」は、以下のようなものでした。

  1. プーチンは、北方領土を返す気がまったくない
  2. それでも、ロシアとは仲良くした方がいい
  3. 中国に勝ちたければ、中ロを分断すべきだからだ

と。私は、このことを少なくとも15年以上いいつづけています。たとえば、今07年発売の『中国ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日』を開いてみました。238pに「日本は、中ロ分断を」とあります。

実をいうと、世界一の戦略家ルトワックさんも、リアリズムの神様ミアシャイマーさんも、「中ロを分断しなければならない」と主張しています。だから、米中覇権戦争の最中に、欧米ウとロシアが戦争をはじめ、結果的にロシアが中国の属国になることを、とても憂慮している。

リアリズムの神ミアシャイマーさんは、大戦略観のないアメリカ政府の愚かさを嘆きます。そして、「ウクライナ戦争の責任は、アメリカにある」と断言します。これは、ミアシャイマーさんが「親ロシア」だとか「親プーチン」だという話ではありません。

  1. アメリカ、真の敵は中国である
  2. 米中覇権戦争に勝利するために、アメリカは、ロシアを自陣営に引き込むべきだ

という、単純明快な【大戦略観】があるからです。

アメリカは、ナチスドイツに勝つために、スターリンのソ連と組みました。第2次大戦が終わると、今度はソ連に勝つために、かつての敵日本、ドイツ(西ドイツ)と組みました。それでもソ連が優勢なので、70年代には共産中国と組みました。このように、アメリカは、常に【大戦略的】に動いてきた。

しかし、ブッシュ、オバマ、トランプ、バイデンは、ロシア敵視政策を止めず、「ウクライナ戦争」が起こってしまった。

誤解のないように繰り返しますが、私は、今回のウクライナ侵攻について、100%のプーチンの失敗だと考えています。しかし、長期的に見れば、「反中包囲網に引き入れるべきロシアを、逆に中国に追いやってしまった」という意味で、アメリカも大きな間違いを犯しているのです。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年4月12日号より一部抜粋)

image by: Al.geba / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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