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中国の横暴。何を根拠に「台湾は自国の不可分の領土」と言うのか?

台湾を自国の不可分の一部とし、独立勢力に対しては武力行使も厭わない姿勢を見せる中国。彼らは何をもって台湾の領有権を主張し続けているのでしょうか。今回のメルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』ではジャーナリスト・作家として活躍中の宇田川敬介さんが、両国の歴史を紐解きつつ、かつて中国が台湾をどのように見ていたかを解説。その上で中国政府が言うところの「一つの中国」に、何一つ法的・条約的根拠が無いことを白日の下に晒しています。

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風雲急を告げていた中国の台湾侵略計画の新たな展開:簡単に台湾と中国の関係を復習する

令和4(2022)年6月は、多くの日本人の目がウクライナとロシアにばかり向いているこの時こそ、台湾と中国の関係についてみるべきではないかということから、その内容を話してみようと思います。

さて、中国は当初より「台湾の統一」ということを主張していました。

しかし、その主張に関しては、時代の変遷とともに内容や意味するところが変わってきているのではないかという気がします。

本当に簡単に、中国と台湾の関係を見てみましょう。

基本的に、古くは中国は台湾を認識していませんでした。

「化外の地」というような言い方をしていましたので、「化け物が出る土地の外側」というように、完全に異世界であるというような感覚になっていたのです。

その当時の中国、少なくとも明代までは、台湾というのは、全く関係ない場所であり、中国は少なくとも中国というような場所ではなかったということになるのです。

そのために、中原(ちゅうげん)で覇を唱えた民族がいれば、その時にそこを追い出された民族がいます。

その「追い出された民族」が「本来の土地の人ではない」という意味で「客家」として台湾の対岸である福建省や、台湾の中に多く住んでいるということはその意味ではないかと思うのです。

台湾の立場から見れば、中央(中原)で何か問題が起きて、逃げてきて、安全に暮らせる場所ということになり、当時の中国の中心部から見てかなり離れていただけではなく、見捨てられていたということになります。

もう少し突っ込んだ言い方をすれば、中国が「化け物の外」というように、すでに管理をすることができない外国以上離れた場所というように認識していたということになるのではないでしょうか。

この台湾が注目されるのは、一つ目は「倭寇」といわれる海賊です。

日本では、歌舞伎などで有名になった「鄭成功」が台湾を中心に暴れまわり、そのことによって台湾や南西諸島が有名になりました。

このエピソードから考えれば、中国は台湾を「倭国」つまり「日本」と認識していたことになるのではないかとも思います。

少なくとも、中国の一部とは認識していなかったのではないかと思います。

そしてその次に台湾が注目を浴びるのは、大航海時代にペリーなどが太平洋に現れる頃になります。

基本的に、欧米の船は、産業革命のためにクジラを取りに来ていて、その油を搾るということをするのですが、捕鯨船の補給基地が必要になるということになります。

日本にペリーが現れたのも、また、その他の船が現れたのも、すべて捕鯨のためであり、別段植民地を増やしに来たのではないというような解釈もあります。

私からすれば、現地の人の言葉がわからず、なおかつ未開の文明しか持っていなければ、当然に、交渉をするよりも脅迫をした方が早いということになりますから、占領して従わせるということになります。

それが領域の支配ということになれば、当然、植民地というような話になってくるのでしょう。

もともとが捕鯨船の補給という、船の資材をもらうということが、奪うに変わっただけであり、もともと対価を払うという気分がない人々にとっては同じであったということになるでしょう。

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この時になって、中国は「海」の重要性がわかってくることになります。

それまで大陸国家であった中国が、なんとなく「海も重要なのではないか」というようなことを考えるようになったということになるのです。

しかし、それは現在のような状況ではなく、なんとなく「貿易」とか「海からくる敵」ということを認識するようになるということになるのではないでしょうか。

その流れから、台湾を、それまで「化外の地」とか「倭寇の拠点」といっていたのに、中国の領土であるというように認識し始めます。

そして、それが日清戦争の日本の勝利によって下関条約で、日本が台湾の支配権を得ることになるのです。

その台湾支配権の黎明期は、軍人が台湾総督になります。

この部分に関しては『我、台湾島民に捧ぐ 日台関係秘話』の中に、小説調で書いています。

よろしければ、その台湾の総督の話、特に軍人総督の話は、皆さんも一読いただければありがたいです。

ちなみに、特に第四代総督の児玉源太郎と、第七代総督の明石元次郎、いずれも日露戦争の英雄ではありますが、この二人の総督に関しては、今でも台湾の人々に慕われている名総督であったといえます。

そして太平洋戦争によって敗北し、日本がサンフランシスコ講和条約に調印すると、日本は台湾の支配権を放棄するということになります。

実際はこの時点で「中国に属する」とはどこにも書いていません。

しかし、なし崩し的に中国がそれを支配することになり、その上で、国共戦争で敗北した蒋介石が共産党から逃れ、台湾を占領するということになります。

毛沢東率いる中国共産党が大陸を支配し、そして、それまで大陸を支配していた国民党が台湾を支配するということになります。

ちなみに、その国共戦争は現在も終戦をしているわけではありません。

つまり、中華人民共和国なのか、中華民国なのか、そしてその二つの政府が一つの国の中に併存しているのかあるいは二つの国家なのかということは、少なくともこの二つの政府の条約などでは全くわからない状態になっています。

どうも中国という場所や民族は、これらのことを決めることが苦手であり、そのままなしくずし的に物事を形成してゆく癖があるようで、何か条約などがあってもなかなか守らない状態にあります。

そして、この国民党と共産党の対立のまま、現在に至るということになります。

この意味では、実は朝鮮半島とほとんど同じで、北朝鮮と韓国が分かれているかのように、台湾と中国大陸で別れているというような感じになったのです。

そもそも、「連合国」に参加していたのは台湾の方でしたが、1972年2月にアメリカのニクソン大統領が中国と事実上の外交関係を構築する、いわゆる「ニクソンショック」において、アメリカは「一つの中国」という概念を認めることになります。

「一つの中国」とは、中国大陸と台湾は不可分の中華民族の統一国家「中国」でなければならないとする政策的立場および主張の事を言います。

国共内戦の結果、中国大陸を実効支配し、中華人民共和国の建国宣言を行った中国共産党と、台湾を中華民国として実効支配した中国国民党は、国共内戦後長らく対立関係のまま、それぞれ内政問題等に忙殺される形で、条約や協定のない実質的停戦状態に至り、分断状態が固定化してしまいます。

中国大陸(本土)を実効支配する中華人民共和国と、台湾に遷都したものの国連安保理常任理事国である中華民国は、それぞれ着目点によって一方が優勢・他方が劣勢にあったのですが、双方とも自政府が中国唯一の正統政府であるとの立場を崩さなかったのです。

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中華人民共和国が国連に中華民国の追放を最初に提起したのは1949年11月18日で、以後「中国代表権問題」と呼ばれ、長らく提議されては否決され続けてきました。

中ソ対立が鮮明となった1950年代後半以降も1964年第18回国連総会、1968年第5回国連緊急特別総会、1970年第25回国連総会においてもアルバニアなどから類似の提案がなされましたが、いずれも否決されています。

転機となったのは、アメリカ合衆国がベトナム戦争において泥沼化し、北ベトナム(ベトナム民主共和国)との停戦交渉を進める中で、中華人民共和国の協力が必要となったことからといわれています。

アメリカ合衆国は中華人民共和国の協力を得るため、国連安保理常任理事国の継承は合意しましたが、中華民国の国連追放までは考えていませんでした。

1971年7月中旬、アルバニア、アルジェリア、ルーマニアなどの共同提案国23ヵ国が「中華人民共和国政府の代表権回復、中華民国政府追放」を趣旨とするアルバニア決議案を、国際連合事務局に提出します。

その後、中華人民共和国側は、「中華民国」の国連追放ではなく、「蒋介石の代表」の国連追放と文面を改め、当時友好国であったアルバニアを経由し「国府追放・北京招請」決議案を1971年9月25日に第26回国連総会に提出します。

総会では、議題採択等をめぐり一般委員会や本会議等で中華民国追放支持派と反対派の間で激しい論議が展開されました。

表決に先立ち、中華民国代表は“これ以上総会の審議に参加しない”旨宣言し、総会議場から退場し、アルバニア決議案が賛成76、反対35、棄権17、欠席3で通過します。

このアルバニア決議案通過を受け、二重代表制決議案は表決に付されず、後に中華民国は、国連(及び加盟する各専門機関)からも脱退を宣言することになるのです。

いわゆる「アルバニア決議」といわれる内容です。

この台湾の国連脱退後、中国はよりいっそう「一つの中国」の主張を大きくします。

特に中華人民共和国政府は、これを自国の核心的利益であると主張し、「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府である」との意味合いから、諸外国に対してこの考えに同調するように強い圧力をかけているのです。

また現在の国際社会では、中華民国を国家承認する国家が少ないため、「一つの中国」は中華民国を国家として承認しないという要求と同義として解釈される傾向が強くなっています。

ただし、アメリカの公式文書には「『一つの中国』を認める」とはなく、「中国が『一つの中国』という概念を主張していることを認識する」というような書き方になっており、アメリカ自体が一つの中国を完全に認めたわけではないということになっています。

さて、このような状態から、徐々に台湾の孤立化が進み、そして2020年くらいから、習近平国家主席の年初会見では、必ず「台湾の併合」ということが言われるようになっているのです。

(メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』2022年6月6日号より一部抜粋。続きはご登録の上、お楽しみください。初月無料です)

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image by: Shutterstock.com

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