維新を斬る元首相。菅直人氏に聞く「橋下ヒトラー発言」の真相

2022.06.18
 

▽「維新政治を斬る!」という小冊子を作りましたね

2週間ほど前、前回大阪入りした帰りに、電車の中で「冊子を作ろう」と考えました。私自身が維新について学んだことを、一般の有権者にも知ってほしかったのです。例えば「身を切る改革」といっても、実際は「他人の身を切る」ことだとかね。短期間で大車輪で作りましたが、参院選に間に合って良かったです。

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▽手応えはどうですか

逃げ始めましたね。最初はかみついてくれて、私の知名度を上げてくれたけど、今は一切反応してきません。逃げたということは負けたということです。

 

でも、東京の人たちはまだ、維新の問題点を十分に感じてはいません。「身を切る改革」がリベラルだと思われている面もあるんです。維新へのアレルギーも少ない。危機感が弱いんです。そこをどう伝えるかが、これからの課題ですね。

菅氏の「戦う姿勢」は、「野党は批判ばかり」という誤った世論にひるみがちになり、戦闘力をやや欠いていた立憲の執行部にも、それなりの影響を及ぼし始めた。

泉健太代表は10日の記者会見で、維新の松井一郎代表が「核共有」の認識をめぐり「(立憲は)昭和の時代で時計の針が止まっている」と断じたことに言及。「自民党にもバッサリと否定された核共有(の議論)を今から始めるのなら(維新の方が)1周、2周遅れている。昭和より古い」と切り捨てた。

ここまで維新に言われっぱなしだった立憲だったが、徐々にメディアでも「安保 つばぜり合い」(朝日)などと、立憲と維新が並べて報じられ始めた。

菅氏の大阪視察の前日、大阪市内で対話集会に臨んでいた小川淳也政調会長は、たびたび大阪に乗り込む菅氏について「敵基地攻撃に来てますね」と発言。やや苦笑気味ながらも「あのファイティングスピリッツは、私ども後輩もしっかり学ばなければいけない」と語った。

もっとも、菅氏の戦術は基本的に空中戦である。参院選本番まで時間がないなか、ある意味割り切っているのだろう。例えば視察先の府営住宅で見かけるポスターは、公明党と共産党のものばかり。立憲のものは一つも見つけられなかった。昨秋の衆院選以降、たびたび指摘してきた「地力の弱さ」を克服するには、まだ相当の時間がかかりそうだ。

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こういう状況で、参院選本番に向け強まってきた立憲と維新の主導権争いは、最終的にどんな展開を見せるのか。少なくとも「面白くなってきた」ということは言えそうである。

image by: Twitter(@菅直人 立憲民主党大阪特命担当 衆議院議員

尾中香尚里

プロフィール:尾中 香尚里(おなか・かおり)
ジャーナリスト。1965年、福岡県生まれ。1988年毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長、川崎支局長、オピニオングループ編集委員などを経て、2019年9月に退社。新著「安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ」(集英社新書)、共著に「枝野幸男の真価」(毎日新聞出版)。

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