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日本国民ダマし韓国へ数百億円の上納金。統一教会「政界工作」の悪質手口

与党現役議員による衝撃的なリークでもその繋がりの強固さが証明された、旧統一教会と自民党。一宗教団体にすぎない旧統一教会は、いかにして政権与党と深い関係を築いたのでしょうか。今回のメルマガ『 国家権力&メディア一刀両断 国家権力&メディア一刀両断 』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、彼らの巧みな政界工作の手口を紹介。さらに日本だけを金集めのターゲットとする旧統一教会の理解に苦しむ理屈を取り上げ批判するとともに、そのような団体から選挙援助を受ける政治家に対して苦言を呈しています。

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日本からの収奪を許した政治家と統一教会の腐れ縁

筆者の知人が、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に勧誘され、危うく入会しそうになったときの経験談を話してくれた。知人は60歳を少し過ぎた女性である。

ある日、信号待ちをしていたら中年の女性に声をかけられた。「何か悩みごとありませんか?」「幸せになる自己啓発セミナーをやっていますので、参加しませんか」

人のよさそうな女性だったので警戒もせずついていった。歩いて数分のところに小さなビルがあり、セミナー会場はその4階だった。壁に文鮮明、韓鶴子夫妻の写真が飾られている。後でわかったことだが、そこが教会の支部だった。

驚くことに、その中年女性は「安倍首相も信者なのよ」と言っていたのだとか。その時期はあやふやだが、3年くらい前ではないかという。

だとすれば、安倍氏が教会の別組織「UPF」(天宙平和連合)にビデオメッセージを送った2021年9月12日よりはるかに前から、安倍氏の名前は統一教会の広告塔として使われていたことになる。

安倍元首相はなぜそれほどに教会から仲間意識を持って見られていたのだろうか。その謎を解くには、統一教会が行なってきた政界工作に目を向ける必要がある。

第1次安倍政権で首相秘書官をつとめた井上義行氏は、統一教会の全面支援を受け今回の参院選(自民党全国比例)に当選した一人である。

井上候補は事件の2日前の7月6日、さいたま市文化センターの大ホールで開かれた教会関連団体の集会「神日本第1地区 責任者出発式」に参加し、挨拶に立った。そのさい、教会の幹部が次のように紹介すると、井上氏は割れんばかりの拍手を浴びた。

「うちの教会、うちの組織もたくさんの問題があります。この問題を支援してくださる方が井上義行先生でございます」「井上先生はもうすでに信徒になりました」

至れり尽くせり。統一教会が政治家を「全面支援」するときには、そんな感じらしい。つまり、教会組織が集票マシンとなるだけではなく、政治家のもとに秘書や選挙スタッフを派遣し、彼らの信仰心を推進力に、支持する候補者の勝利をめざすのだ。無報酬でも寝食を忘れてがんばる人々を派遣してくれるのだから、候補者にとって、これほどありがたいことはないだろう。

もちろん、統一教会となんらかの関わりがあるのは、井上氏だけではない。日刊ゲンダイが、ジャーナリスト・鈴木エイト氏の調査をもとに「旧統一教会と関係のある国会議員」として報じたところによると、議員または秘書の教会イベント出席や祝電などを公開資料で確認できたのは112人におよぶ。そのうち自民党議員は98人で、多くが第2次安倍政権以降、大臣や副大臣、政務官などに起用されている。

しかし、政治家と統一教会の関係は、ほとんどメディアで報じられてこなかった。

合同結婚式や霊感商法の問題がテレビ番組を賑わしたのは1980年代から90年代にかけてだが、94年の松本サリン事件、95年の地下鉄サリン事件でオウム真理教がクローズアップされてからというもの、統一教会に対するマスコミの関心は急速に薄らいだ。

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オウム真理教事件が一段落ついた後、警察庁や警視庁は統一教会の捜査に本腰を入れようとしたが、なぜか取りやめになった。警察幹部から「政治の力が働いてダメだった」と聞いたと、ジャーナリスト・有田芳生氏(前参院議員)はネットメディア「デモクラシータイムス」で証言している。

東西冷戦下の1968年、反共産主義政治団体「国際勝共連合」を岸信介元首相の協力のもと日本に設立した統一教会開祖、文鮮明氏は共産主義にどう対応していくかという政治的テーマを掲げて、日本政界に「統一原理」にもとづく政策を浸透させていった。

井上義行氏が参院選の演説で「私は信念で言っているんだ。同性婚には反対ということを」と叫んだのは、家父長的秩序を重んじる統一教会の思想をアピールしたかったからだろう。性的少数者(LGBTQ)を差別したり、選択的夫婦別姓に反対する議員が自民党内に目立つが、日本会議とともに統一教会の影響もうかがえる。

長年にわたり統一教会を取材している鈴木エイト氏によれば、文鮮明氏は「まず秘書として食い込め。食い込んだら議員の秘密を握れ。次に自らが議員になれ」と教会幹部に指示、秘書養成所で訓練された信者が自民党国会議員のもとに送り込まれ、秘書や運動員として活動してきたという。

統一教会の政界工作の一端を有田氏はこう語る。「国会に女性信者のPRチームが定期的にやってきて、文鮮明教祖の本を渡すなどしてロビー活動をしてるんです。今もやってます」

統一教会が政界への働きかけをより強化し始めたのは、2009年に霊感商法の販社が警視庁に摘発されたのがきっかけだった。教会本部に捜査の手が伸びる寸前、警察官僚OBの政治家に口利きを依頼し、危ういところで難を逃れた。

鈴木氏によると、そうした危機を招いたことに対する教会の反省は「政治家対策を怠っていた」のただ一点。そこで、政治工作を再び本格化させた時期が、ちょうど2012年12月の第2次安倍政権のスタート時と重なっていた。

教会の目論見通りにコトは進んだ。霊感商法のイメージが強い統一教会の名を変更しようとして文化庁に拒否され続けてきたが、安倍政権になってようやく認められ「世界平和統一家庭連合」に改称した。

警察の取り締まりも緩くなった。第2次安倍政権で国家公安委員長に登用された山谷えり子、小此木八郎、武田良太氏はいずれも統一教会に近いとされる。

統一教会の日本会長が首相官邸に招待されたり、教団関連政治団体「世界戦略総合研究所」の事務局次長が「桜を見る会」に招かれたこともあった。

しかし、こうしている間にも、日本の国会に教会の影響力は浸透していった。

2016年に統一教会が立ち上げた「世界平和国会議員連合(IAPP)」の創設大会には当時の閣僚5人を含む63人の国会議員が出席した。日本の議員連合会長は原田義昭元環境相、名誉会長は細田博之衆院議長である。

鈴木氏は「表向き平和運動を掲げる同議員連合の目的は、世界各国で統一教会をその国の宗教つまり国教とする“国家復帰”戦略にある」と指摘する。

にわかには信じがたいが、本当だとしたら細田議長は知らずに参加しているのだろうか。「伝統と文化、国の栄光」を重んじる日本会議が聞けば、目をむくような話である。

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そもそも、日本会議と統一教会はどのような関係にあるのだろうか。

ざっと数えたところ、日刊ゲンダイにリストが示された統一教会関係議員34人のうち65%近い22人が日本会議国会議員懇談会のメンバーでもあった。細田議長もその一人だ。

日本会議が主導する「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の共同代表である櫻井よしこ氏は、2012年にホテルオークラで開かれた世日クラブ30周年記念講演会で「日本よ、勁(つよ)き国となれ」と題して講演した。統一教会系の新聞「世界日報」が開くこうした講演会には、櫻井氏のほか著名な保守系知識人が招かれている。

安倍元首相襲撃事件のあと、ワシントンポスト紙は統一教会に関する記事を掲載した。以下はその一部。

旧統一教会と関連団体は、世界の政治指導者や有名人、他の宗教の著名聖職者を講演に招くために高額を支払ってきた。これは、有名で尊敬される人物と教会を関連付けることによって信用を勝ち取るための長年の戦略である。(中略)たとえば1990年代半ばには、元米大統領のジョージ・H・W・ブッシュやジェラルド・フォード、米コメディアンのビル・コスビー、ソ連のミハイル・ゴルバチョフ元書記長が、日本やワシントンで開かれた文鮮明主催の会議で講演を行っている。

櫻井氏らも、統一教会のこうした戦略に巻き込まれただけかもしれない。しかし、統一教会関連のイベントに日本会議系の面々が参加するのは、どうにも釈然としない。

統一教会は保守思想で日本会議と一致するものの、ネトウヨ諸氏の言う反日的な一面を持っている。

たとえば教団組織や関連する団体、企業群が世界各地で活動するための資金はもっぱら日本で集められる。実際、教会の収入の70%は日本からだという。それも、信者から搾り取るような献金や、恐怖心を利用した霊感商法の売上が中心だ。鈴木エイト氏によると、日本から韓国の教祖一族への上納金額が毎年数百億円にのぼることが、流出した教団内部資料によって判明している。

なぜ日本だけが金集めのターゲットとなるのか。そこには、とうてい理解できない理屈がある。すなわち、韓国は世界を支配する「アダム」の国であり、日本は韓国に従属する「イブ」の国である。だから、「全てを惜しみなく与えなくてはならない」というのだ。

霊感商法対策にあたってきた弁護士の一人、紀藤正樹氏は「日本は戦前に韓国を併合した。その罪を清算するために日本人は韓国に貢献しなければいけないという教義がある」と指摘する。

統一教会が日本国民から金を収奪し韓国に送って力を世界に及ぼすことができた背景には、集票活動をエサに日本の政治家を籠絡し、規制を逃れてきた事実がある。そのために霊感商法の被害にあったり、財産を根こそぎ献金名目で奪い取られた日本人がたくさんいる。

もちろん、日本の政治家なら誰しも、こんな構図を望みはしないはずだ。統一教会と、その名を隠した諸団体の実態を直視すべきである。麻薬のような選挙援助に頼らず、地道に政治基盤をつくっていくべきである。

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image by: 不明Unknown author, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

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