MAG2 NEWS MENU

被爆国だからこそ。我が日本国が「世界のリーダー」になれる理由

広島、長崎への原爆投下から77年。唯一の被爆国として他のどの国よりも非核化を叫ぶべき日本ですが、アメリカの核の傘に守られているという現状、2021年発効の核兵器禁止条約を批准できないというジレンマを抱えています。このような状況にある我が国を「核兵器廃絶の問題に関して世界のリーダーになれる」とするのは、起業家で大学教授でもある大澤裕さん。大澤さんは自身のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』で今回、日本が核廃絶の実現において大きな力を持つためこの先取り組むべき事柄を、中南米各国を例に挙げ解説しています。

この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ

初月無料で読む

 

原爆を落とされた日本と核兵器禁止条約

8月6日は米国の原爆投下から77回目の「原爆の日」でした。

広島市の平和記念公園(広島市中区)で平和記念式典が開かれました。99カ国と欧州連合の代表らが参列しました。

以下、毎日新聞の記事抜粋です。

初参列したグテレス国連事務総長は「人類は実弾が込められた銃で遊んでいる」とし、核保有国による核戦争は断じて許容できないと述べました。

 

広島市の松井一実市長は平和宣言で、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに核抑止論が勢いを増していることに懸念を表明。核保有国のリーダーに対して、「被爆地を訪れ、核兵器を使用した際の結末を直視すべきだ」と呼びかけた。

 

被爆地選出の首相として初めて参列した岸田文雄首相は、非核三原則を堅持する考えを示したが、核兵器の開発・製造・保有を禁じる核兵器禁止条約には触れなかった。

解説

ここでいう核兵器禁止条約とは将来的な核兵器の全廃を目指す初めての国際条約です。核兵器の法的禁止をうたっています。

英語名「Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons」で略称はTPNW。2017年7月に国連総会で賛成多数にて採択され50か国の批准に達したため2021年1月に発効しました。

有名な核拡散防止条約NPTは核軍縮を目的にアメリカ・フランス・イギリス・中国・ロシアの5ヶ国以外の核兵器の保有を禁止する条約ですから、核兵器の全廃を目指す核兵器禁止条約TPNWはさらに大きな目標を持っている事になります。

記事で式典で岸田首相は核兵器の開発・製造・保有を禁じる核兵器禁止条約には触れなかった、と書いているように日本は批准していません。

米国の核の傘の下にあるからです。つまり米国が核をもつことを前提としているので、核兵器禁止条約TPNWには賛成できないのです。

この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ

初月無料で読む

 

それでは、この核兵器禁止条約TPNW、米国ではどう報道されているのでしょうか?

驚いた事に、今年、NYタイムズやワシントンポストでTPNWやNPTが記事として取り上げられたことはほとんどありません。

わずかにワシントンポストが8月1日に記事を載せています。

核拡散防止条約NPTは5年に一回、再検討会議を行いますので、その記事です。

NPTは核兵器廃絶の約束を果たすことができるのか?

 

国連は8月1日、核兵器の不拡散に関する条約(NPT)の第10回再検討会議を開始し、191の条約加盟国がニューヨークに集結する。

 

今年の議題は何だろう?

 

NPTとその擁護者たちは、過去50年間、核拡散を防ぐことにほぼ成功してきた。しかし、核軍縮のペースが遅いという一部の国の不満が高まっている。

 

メキシコをはじめとするラテンアメリカ諸国は、今回の再検討会議を機に、核保有国に核軍縮への努力をあらためて求めるだろう。

 

彼らは、最終的な核兵器の廃絶、法的拘束力のある消極的安全保障、核兵器用の核分裂性物質の生産を禁止する条約を要求するだろう。

 

ラテンアメリカは、1960年代のNPT交渉の当初、核兵器廃絶を提唱していた。

 

しかし当時の核保有国は、全面的な核軍縮に反対を表明した。学者も政策立案者も、核抑止力が紛争を防いでいると主張した。冷戦の安定のためにある程度の核武装が必要だと主張した。

 

これに対し、ブラジルなどは、大胆な軍縮目標がなければ、核拡散防止条約NPTは「新植民地主義」の道具になると主張した。

 

ほとんどのラテンアメリカ諸国政府は核保有国が時間をかけて核兵器を削減することを約束する代わりに、核不拡散の義務を受け入れることにした。この妥協案がNPT第6条となった。

 

中南米諸国は、核不拡散と核軍縮に同等の関心を払うよう再検討会議の参加者に要求するだろう。

 

ラテンアメリカ諸国の政府は、NPTを世界の核秩序の礎石とみなしている。しかし、核保有国の間で軍縮が遅々として進まないことから、彼らは代替的な軍縮メカニズムを模索してきた。

 

ほとんどのラテンアメリカ諸国は、2021年1月に発効した核兵器禁止条約TPNWを支持している。

この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ

初月無料で読む

 

解説

核兵器禁止条約を強力に支持しているのはラテンアメリカの国々なのです。

それには理由があります。

「ラテンアメリカ及びカリブ核兵器禁止条約」です。

1962年10月にキューバ危機が起こり、カリブ海が極度の軍事的な緊張状態となりました。

この事件を契機にラテンアメリカの非核化が模索され12月の国際連合総会で、ブラジル・ボリビア・チリ・エクアドルの4か国からラテンアメリカ非核化決議案が提出されました。

わずか4国からはじまった運動が徐々に発展して1967年に14か国が調印し1968年4月に発効しました。

最終的に2002年10月には中南米33か国33か国すべての署名・批准が完了したのです。

「ラテンアメリカ及びカリブ核兵器禁止条約」という母体があるので、核兵器禁止条約にも賛成できるのです。

日本の話にもどります。

日本が核兵器禁止条約TPNWを批准することは、米国の核の傘を離れることになるので無理でしょう。

しかしながら、核兵器廃絶の問題に関しては、ヒロシマ、ナガサキという象徴があり世界のリーダーとなれる立場になれることは確かです。

そしてラテンアメリカのように具体的な条約を各国と結ぶことによって、最終的には大きな力をもつことになるかもしれません。

日本にとっても世界にとっても素晴らしい事です。(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』8月7日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)

社会の分断化を推し進める「バランスを欠いた報道」を見極めるために

メルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』 では、在米14年の経験と起業家としての視線、そして大学教授という立場から、世界で起きているさまざまなニュースを多角的な視点で分析。そして各種マスコミによる「印象操作」に惑わされないためのポイントを解説しています。8月中であれば、8月配信分のメルマガ全てが「初月無料」でお読みいただけます。この機会にぜひご登録ください。

月額:¥330(税込)/月
発行日:毎週 日曜日(年末年始を除く)
形式:PC・携帯向け/テキスト・HTML形式

この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ

初月無料で読む

 

image by: Shutterstock.com

大澤 裕この著者の記事一覧

・株式会社ピンポイント・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長  ・情報経営イノーベーション専門職大学 客員教授 ・法政大学大学院イノーベーションマネジメント研究科 兼任講師 慶應義塾大学を卒業後、米国バンカーストラスト銀行にて日本企業の海外進出支援業務に従事。カーネギー・メロン大学でMBAを取得後、家業の建築資材会社の販売網を構築するべくアメリカに子会社を設立。2000年、ピンポイント・マーケティング・ジャパンを設立。海外のエージェントとディストリビューターを使った販路網構築・動機づけの専門家として活動を行っている。2015年「中小企業が『海外で製品を売りたい』と思ったら最初に読む本」を、2017年「海外出張/カタログ・ウェブサイト/展示会で 売れる英語」をダイヤモンド社から上梓。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説 』

【著者】 大澤 裕 【月額】 ¥330/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け