ペロシ訪台という米国の大戦略的ミス。中国と揉めている暇などない現実

 

ペロシ訪台という大戦略的ミス

同じように「大戦略的視点」からペロシさんの台湾訪問を見てみましょう。

考えなければならないのは、欧米と日本は現在、「ロシアと戦っている」ということです。もちろん、戦場はウクライナです。もしプーチンが逃げ切れることができれば、習近平はどう考えるでしょうか?

「プーチンは、ウクライナに侵攻して逃げ切った。俺が台湾侵攻を決断しても逃げ切ることができるだろう!」

と考えるでしょう。プーチンが逃げ切れれば、台湾侵攻の可能性が高くなります。

では、どうすればいいのでしょうか?

ウクライナへの支援をつづけることで、ロシアに勝てるようにしなければならない。もちろん、厳しい制裁は継続していきます。プーチンを失脚に追い込めたらどうなるでしょうか?

習近平は、

「ウクライナ侵攻に失敗したプーチンは失脚した。台湾侵攻に失敗すれば、俺も失脚だ」

となり、台湾侵攻を決断しないでしょう。だから、アメリカは今、ロシアとの戦いに全集中すべきなのです。当然、中国とは、プチ和解すべきです。

ところがペロシさんが台湾に訪問した。激怒した中国は、大規模な軍事演習をした。これで、本当に戦争がはじまったら、アメリカはどうするつもりなのでしょうか?

西でロシアと戦い、東で中国と戦う?

こんな愚かなことはありません。

ヒトラーは1939年、西と東、同時に戦わないために、独ソ不可侵条約を結びました。スターリンは、西のドイツ、東の日本と同時に戦わないために1941年、日ソ中立条約を結びました。「二正面作戦を回避すること」は、戦略の基本です。アメリカは、「自ら二正面作戦を誘発するような行動をしている」という意味で、ペロシ訪台は愚かです。

ミアシャイマーのいうことを聞かず、NATOを拡大。中国とロシアを一体化させてしまったのも、愚かでした。しかし、過去を悔やんでも仕方ありません。ロシアがウクライナに侵攻した。ロシアと戦いながら、中国を挑発してどうするの?ということです。

バイデンさんは、ブレることなく、ロシアとの戦いに集中していただきたいと思います(バイデンさんは、ペロシ訪台に反対したと報じられていますが)。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年8月10日号より一部抜粋)

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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