高齢者より若者の支持。岸田政権が安倍氏の国葬を強行する裏事情

 

一方、若者の自民党離れが進む

政治的な現象としては、若者の自民党離れが進んでいる。参院選における比例での20歳以下の支持が、2017年衆院選の46%から32%まで落ち込んだ(*3)。

読売新聞社と日本テレビ系列の各放送局が共同で実施した参院選の出口調査では、自民党が政権を奪還した2012年の衆院選では、60歳以上の31.9%が自民党に投票し、他の年代を上回る。

しかし安倍政権であった2017年の衆院選では、20歳以下の得票率が46%、30歳代の39.5%を上回る。

一方、今年の参院選では、20歳以下からの支持率は32%で、30歳代からは33.9%、40歳代からの34.1%を下回った。

とくに選挙では自民党支持層全体の8.7%が維新、4.9%が国民民主党に投票すると回答、公明党に投票した4.8%を超える。また自民党支持層の3%は参政党へ投票、立憲民主党の3.1%とほぼ並んだ。

早稲田大学政治経済学術院の日野愛郎教授(投票行動論)は読売新聞の取材に対し、

「維新、国民、参政の3政党の政策が若者を引きつけた」

とする。

日野氏も投開票前日の7月9日、インターネットで有権者の動向を調べていた。

国葬 若者ほど支持高め 国葬強行で若者支持回復図る?

安倍元首相への国葬となると、ここも世代間のギャップが目立つ。年齢層の若い世代ほど、国葬への「賛成」の度合いが多数を占め、高齢者では「反対」が多くなる。

FNNは7月23日と24日、全国の18歳以上を対象に電話による世論調査を実施。それによると、国葬の決定について、「よかった」が31.0%、「どちらかと言えばよかった」が19.1%と、あわせて50.1%の人が「よかった」と回答。

一方、「よくなかった」は32.1%、「どちらかと言えばよくなかった」は14.8%とあわせて46.9%の人が「よくなかった」と答える。

ただ、特徴的だったのは、回答者の年齢層によって、「よかった」「よくなかった」が分かれたこと。「どちらかと言えば」も含めると、18~19歳を含めた20代は、「よかった」67.3%、「よくなかった」31.4%。

30代は、それぞれ62.7%と30.3%。40代は、52.5%、46.7%。50代は、44.4%、51.7%。60代は、44.4%、54.2%。70歳以上は、39.1%、57.0%。つまり、若年層ほど「よかった」と答える人が多く、高齢の人ほど「よくなかった」と答える人が多かった。

いくら“シルバー民主主義”とはいえ、健康面に課題を抱えるお年寄りが100%、投票所に足を運べるわけでもない。それよりも、自民党にとっては今後、長期間に渡る“顧客”として、若年層の支持を固める。

そのことを含めての“国葬”強行でもありそうだ。

引用・参考文献

(*1)東京新聞9月7日付朝刊

(*2)東京新聞8月29日付朝刊

(*3)「若者の自民離れ進む…参院比例選、若者重視の政策掲げた3党に票分散か」読売新聞オンライン 2022年8月16日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年9月17日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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