高齢者より若者の支持。岸田政権が安倍氏の国葬を強行する裏事情

mn20220921
 

賛否両論かまびすしい議論が交わされている、安倍元首相国葬の是非。ここまで多くの国民が反対の声を上げる中、なぜ岸田政権は国葬を強行するのでしょうか。今回のメルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』では著者でジャーナリストの伊東森さんが、世論調査により明らかになった「年代別国葬支持率」に注目。そこから透けて見える、国葬を敢えて行う「自民党の思惑」を考察しています。

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岸田首相はそれでも国葬を強行する そして“世代間対立”で分断を煽る

安倍晋三元首相の国葬についての議論が収まらない。政府は6日、国葬の費用のうち、警備費や外国要人への接遇費などに合計約14億1,000万円の支出が見込まれるとの概算額を公表。

すでに支出を決めている会場の設営費など約2億5,000万円を含めた総額は計16億6,000万円となり、当初公表していた予算の6.6倍となった。

政府は警備費などについては、国葬実施後に明らかにするとしていた。しかし、世論や野党の批判を受け、一転して公表。

6日、松野博一官房長官は記者会見で、約14億1,000万円の内訳について、各道府県警から派遣される警察官の旅費や待機所を借り上げる費用として8億円程度、海外の要人の接遇などにかかる経費として6億円程度とする。

ただ、元警視庁公安部の捜査官でセキュリティーコンサルタントの勝丸円覚氏は東京新聞(9月7日付朝刊)の取材に対し、

「安倍氏が銃撃で死亡したことや多数の外国要人が参列することを考えると3万~4万人の警備体制も想定される。警備費8億円では収まらないのではないか」

と指摘。

根拠として、約3万人の警備体制だった1989年の昭和天皇の葬儀「大喪の礼」における警備費が約24億円であったことを挙げる(*1)。

安倍元首相の国葬は9月27日の午後、東京都千代田区の日本武道館で執り行われる。

目次

  • 国葬の法整備 1960年代に検討
  • 一方、若者の自民党離れが進む
  • 国葬 若者ほど支持高め 国葬強行で若者支持回復図る?

国葬の法整備 1960年代に検討

一方、政府が国葬の法整備について、1960年代前半に検討していたことが分かった。東京新聞が、国立公文書館の所蔵分析をして明らかに(*2)。それによれば、当時の公文書では国葬について、

「あらかじめ法律で根拠が定められることが望ましい」

と明記。しかし、それが具体化できないまま、1967年に吉田茂元首相が亡くなると、急遽、閣議決定により、政府は戦後初の国葬に。

その後、法的な裏付けがないからといって国葬を認めないのは、「相当でない」との見解に転じる。そして、閣議決定を根拠とする制度運用が、安倍元首相の国葬にも受け継がれる結果となる。

東京新聞が分析した公文書は、当時の総理府総務長官が主宰し、1961年に設置された「公式制度連絡調査会議」の資料録。

現行の憲法施政後も法制化されていなかった元号や国葬の扱いなどについて検討する目的で、内閣法制局や外務省、宮内庁の幹部が名を連ねていた。

会議では国葬について、戦前の勅令である「国葬令」が失効しており、根拠となる法律がないことを確認。しかし政府は1972年、国葬についての見解をまとめ、

  1. 国葬を支出して葬儀を営む単なる事実行為の執行
  2. 多くの国民が自発的に参加できるよう配慮する

を条件に、

「法律の根拠がなくとも、行政措置によっても行い得ると解される」
とした。

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